文字サイズ

第26回 梅村敏さん

第26回 梅村敏さん

住  吉
そして、重要なキーワードとして「慢性腎臓病(CKD)」という病気があるそうですが?
梅  村
はい。これは、前からあったんですけれども、あまり症状もないので注目されていなかったんですね。それが10年ぐらい前に世界中で注目されて、わかりやすい言葉にしようということで「CKD」と。CKDというのは「Chronic Kidney Disease(クロニック キドニー ディジーズ)」、「慢性腎臓病」という意味の英語の頭文字を取ったものです。
住  吉
急性の腎臓病とは大きく違うわけですね。
梅  村
急性の腎臓病というのはいわゆる「腎不全」で、熱中症などで脱水になったりすると、どっと腎臓が悪くなったりするんですね。あるいは「腎炎」という、タンパク尿がどっと出たり、ハチに刺された後などに免疫の異常で「IgA腎症」になったり、急に悪くなることもあるんですけれども、多くはじわじわと悪くなりますね。
住  吉
ではいわゆる「腎臓病」が「慢性腎臓病」という病気だということですね。
梅  村
数からいうと(慢性腎臓病が)圧倒的に多いですね。
住  吉
初期症状は?
梅  村
問題は、症状がないということなんですね。糖尿病と同じで、高血圧もサイレントキラーと呼ばれていますから、気づいた時にはかなり進行してしまって、寝たきりになったり、透析になったり、ということになります。
住  吉
一度慢性腎臓病になってしまうと大変なんですよね?
梅  村
そうですね。じわじわ進行します。腎臓は先ほど言いましたように、糸球体という血液をろ過して尿をつくる装置が、1つの腎臓で100万個あるんですね。その一部、100万個のうち5万個が悪くなると、残りの95万個が過剰に働くんです。そうするとそれもじわじわと悪くなって、悪循環で最終的に全部悪くなってしまいます。
住  吉
進行するとかなり深刻なことになってしまうという意味では、早く見つけることが大事だと思うのですが、この慢性腎臓病を早く見つけるにはどうしたら良いのでしょうか?
梅  村
健診ですね。今、健診が非常に重要で、メタボ健診も日本中で行われていますが、そこでも一部わかることもありますので、健診をしっかり受ける、と。日本人は意外とアメリカに比べてそれが不十分なんですね。だから、しっかり健診を受けて、異常値が出たら医者に相談するというのが重要だと思いますね。
住  吉
健診でどういう値を見れば良いですか?
梅  村
健診では尿を取りますよね。そうするとタンパク尿が「1+」「2+」と出てきますよね。「1+」なら要注意、「2+」なら医者へ行く、と。血尿も「1+」ですぐに医者に行った方が良いですね。あとは、クレアチニン(Cr)が指標になって、その数値がHighやLowと出ますので、Highマークが出たら早く医者に行っていただきたいです。
住  吉
ちなみにその慢性腎臓病がどんどん進行してしまうと、その先はどうなってしまうのでしょうか?
梅  村
どんどん進行してしまうと、最終的に一番怖いのは血液透析ですね。今33万人が受けています。(血液透析だけで)医療費が1.5兆円かかっています。
住  吉
20~30代の若い世代は、聴いていて「関係ないかな」と思っているかもしれませんが、関係ないとは言い切れないんですよね?
梅  村
そうですね。高血圧、糖尿病がある人ももちろんですし、メタボや肥満も非常にリスクになります。あとは、若い人の場合は「腎炎」というのが結構起きるんですね。それも腎臓病の1つです。
住  吉
梅村先生のご専門は「高血圧症」ということですが、先ほどおっしゃっていたように、高血圧と腎臓病は深い関係があるのでしょうか?
梅  村
ありますね。(腎臓は)血圧を調節するホルモンが出ているところですし、血圧というのは身体の水とナトリウムの量でコントロールされるので、腎臓が悪くなるとそのコントロールもできなくなります。腎臓には血管がすごくたくさんあって、高血圧になると血管にも影響が出ますから、高血圧になると腎臓が悪くなります。心臓というのは大体1分間に5リットルの血を出すんですけれども、そのうちの5分の1~4分の1ぐらいは腎臓に流れ込むんです。腎臓は、たった0.3%の重さのものなんですけども、血液はすごく大量にいっている、それぐらい重要な臓器なんです。
住  吉
一方、「腎性貧血」というのもあるそうですが、これは?
梅  村
腎臓のいくつかある機能の重要な1つに、エリスロポエチンという赤血球をつくるホルモンを出す、という機能があるんですね。それが出にくくなると貧血が進行してしまいます。
住  吉
腎臓は、一旦機能が悪化したら元に戻らないというのは本当ですか?
梅  村
先ほども言いましたように、100万個ある糸球体の一部が悪くなると、残りの糸球体が頑張ってしまい、その残りの糸球体にまた負担がかかってじわじわと進行してしまいます。ただ、早期に血圧や血糖をコントロールすれば、進行がすごく遅くなりますし、透析に至らないで一生過ごせる人もたくさんいます。
住  吉
「治る」「戻る」ということはないんですね。
梅  村
完全にはないですが、腎臓も100%全部必要というよりも、ある程度正常な糸球体の維持ができていれば、透析まで至らないで過ごせることが多いので、コントロール次第だと思いますね。
住  吉
糖尿病や高血圧を持っていない方で、日常的に腎臓を大切にするためにした方が良いこと、できることはありますか?
梅  村
「塩分の摂り過ぎ」は高血圧も関係ありますが、塩分を一生懸命(身体の外に)出すのが腎臓ですから、それで負担をかけるのはまずいですよね。あと、タバコは絶対ダメですし、タバコが良いという病気は1つもないですからね。アルコールも量が多くなるともちろん血圧も上がりますし、腎臓にも負担がかかります。あと、尿酸の数値が高くなると腎臓に負担がかかるので、それもコントロールした方が良いですね。
住  吉
では、基本的にはバランスの良い食生活をする、規則正しく暮らす、ということが当然ながら大事で、ただ、悪化した時に気づけないので、健康診断の数値など、普段から意識を持っておくことが大事ということですね。
梅  村
そうですね。腎臓が悪くなると、他の色々な病気も起こりやすくなってしまいます。日本人で多い、死亡原因の1番は「がん」で、2番目は「心筋梗塞」や「心臓病」ですけれども、それも腎臓が悪くなると起こりやすくなります。3番目は「肺炎」、4番目は「脳卒中」なんですが、脳卒中も起こりやすくなりますね。あとは「心不全」や「心房細動」、そういう怖い病気になりやすくなってしまいます。だから、より早期にコントロールするのが重要です。
住  吉
もちろん、梅村先生も健康診断は欠かさず受けていますか?
梅  村
そうですね。受けています。
住  吉
では最後に、梅村先生の「健康の秘密」を教えてください。
梅  村
健康の秘密は“三種の神器”です。皆さんが簡単に手に入る、「血圧計」「体重計」「歩数計」です。どれも数千円で買えますよね。それをちゃんと使ってコントロールする。毎日血圧を測る。体重を測って、肥満になって糖尿病になることがないようにする。歩数計をつけて運動する。これが非常に重要なので“三種の神器”。あとは塩分を控えるとか、野菜をよく摂るとか、そういうことが重要です。
住  吉
血圧計、体重計、歩数計が“三種の神器”と。梅村敏さん、ありがとうございました!
ここで、あなたの健康をサポートする協会けんぽ東京支部からのお知らせです。成人の8人に1人がかかっていると言われる慢性腎臓病、CKD。初期には自覚症状がありませんが、放っておくと人工透析が必要になる怖い病気です。協会けんぽ東京支部では、健診の結果からCKDの可能性がある方に、早めの治療をおすすめする文書をご自宅宛にお送りしています。届いた方は早めに専門医にご相談を。協会けんぽ東京支部のホームページでも詳しくお知らせしていますので、合わせてチェックしてください。
10月5日(木)のゲストは、女優の生稲晃子さんです。次回もどうぞお楽しみに!