文字サイズ

第29回 黒井克昌さん

第29回 黒井克昌さん

住  吉
今はどんな治療法があるんですか?
黒  井
乳がんの治療は、手術、放射線、薬物療法、これが3本柱になっています。例えば乳がんが最初に見つかって、色々な検査で転移がないと考えた場合に、まず手術を前提に考えます。その時に、手術の前に使う薬物療法と手術の後に使う薬物療法があります。放射線に関しては、乳房部分切除という乳房を残すような手術をした時に、手術の後で照射します。あるいは、乳房を切除した後もリンパ節転移がたくさんあったり、少し進行した場合には、手術した場所に放射線を照射するという方法があります。
住  吉
この治療法はかなり変わってきているんですか? それともずいぶん前から同じような対処の仕方なんですか?
黒  井
治療法はかなり昔からあるものですが、その選択の仕方や、薬物に関しては色々な薬物が最近出てきていますので、治療法は非常に複雑になってきています。
住  吉
ここからは、乳がん検診についても伺います。40歳になると市区町村から乳がん検診のお知らせが届きますが、40歳ぐらいからは必ず検診を受けるのが推奨されている、ということでしょうか?
黒  井
そうですね。学会が推奨している方法としましては、40歳以上の女性の方に対する、2年に1回の「問診」と「マンモグラフィー検査」になります。
住  吉
問診はどんなことを聞いていくんですか?
黒  井
問診は、授乳歴の有無や出産歴の有無、家族歴の有無、自覚症状の有無などを聞いていきます。
住  吉
出産や授乳歴は結構関係してくるのでしょうか?
黒  井
そうですね。出産の少ない方が乳がんのリスクは上がってきて、授乳が長いほどリスクは下がってきます。
住  吉
そうなんですね。では、マンモグラフィー検査はどういうものでしょうか?
黒  井
マンモグラフィー検査というのは、レントゲンを使った検査です。乳腺を少し圧迫して挟みこんで、レントゲンで撮影するので、痛いと言われる場合もあります。
住  吉
そうなんですよね。以前、番組で特集した時も「マンモグラフィー検査がものすごく痛いので辛い」「痛そうなので怖くて検査を受けようか迷ってしまう」という声が寄せられています。
黒  井
マンモグラフィー検査の時は約10kgぐらいの重りを乗せるような圧迫を加えます。圧迫を加える理由は、綺麗な写真を撮ることによって見逃しを少なくする、ということ。そしてもう1つ大事なのが、レントゲンによる被ばくを小さくする、ということです。
住  吉
あと、検診を受けるタイミングでも、その痛さは変わってきますよね?
黒  井
そうですね。特に閉経前の方は生理の直前に乳房が張っていると思うので、そういった時期は避けた方が良いかもしれません。
住  吉
「問診」と「マンモグラフィー検査」を受けることが推奨されているとのことでしたが、「超音波検査」というものもありますよね? これは今どう考えられているのでしょうか?
黒  井
超音波検査は、乳がんの発見数が上がるということがわかっていますけれども、乳がんでないのに精密検査するという割合も増えてきます。それと、死亡率の減少効果がまだ確認されていないということから、現時点では推奨されていない検査になります。
住  吉
そして、しこりをセルフチェックするのも重要とのことでしたが、これはどのくらいの頻度でどのようにチェックすれば良いでしょうか?
黒  井
頻度は月に1回で十分だと思いますが、閉経前の方は生理が始まって1週間ぐらいの間、閉経後の方は、例えば誕生日の日にちなど、忘れない日にちを決めてチェックするのが良いと思います。
住  吉
お風呂に入っている時など、石鹸をつけて滑りやすくした方がチェックしやすいとも聞きますが?
黒  井
そうですね。入浴した時に鏡に映してみたり、寝る前に触ってみたり、タイミングはいつでも良いと思いますが、乳房全体を触るということが大事です。
住  吉
「触ったことがないから本当に発見できるかな…」と不安な方もいるかもしれませんが、あった場合は、指先で触れて確実にわかるものなのでしょうか?
黒  井
わかりにくい乳がんもありますけれども、外来に来られる方はほとんどが自分で見つけて来られますので、触っていれば基本的にはわかると思います。
住  吉
あと、「遺伝子検査」で乳がんリスクをチェックすることもできるのでしょうか?
黒  井
はい。家族歴がたくさんあるというような場合には、遺伝カウンセリングをまず受けていただいて、自分のリスクをある程度評価して、採血をして検査をするということが可能になっています。
住  吉
昔よりわかってきていることがたくさんあるんですね。ちなみにアンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がんになるリスクが高めの家系だということで、予防として乳房を切除したということがニュースになりましたが、この選択はどう思われましたか?
黒  井
自分の家族歴を考えて、そして家族のことを考えて選択されたということで、非常に素晴らしいと思っています。
住  吉
やはり自分について知っておくということと、個別にどうリスクを低くできるかを考えるということが大事なんですね。セルフチェックを欠かさずに、気になる症状があれば、すぐ乳腺外科を受診してください。
ちなみに黒井先生も健康診断は欠かさず受けていますか?
黒  井
受けています。
住  吉
では最後に、黒井先生の「健康の秘密」を教えてください。
黒  井
健康の秘密は“内緒”です。
内緒というのは、教えないということではありません。「内緒」とは元々仏教語で「内証」という言葉です。すなわち、「自らの心の内で真理を悟る」ということを意味しています。健康について私が何を悟ったかということですが、規則正しい生活、偏らない食事、十分な睡眠と運動が基本になるということと、予防は治療に勝るということです。健康的な生活を心がけること、推奨されている方法で検診を受けること、いつもと違うと思ったら医療機関を受診すること、日頃から相談できるかかりつけ医を持つということが大事だと思います。それと、歯と口の健康も大事だと思っています。
住  吉
とても基本的なことですが、全て行うにはきちんと意識を持たないといけないですね。黒井克昌さん、ありがとうございました!
ここで、あなたの健康をサポートする協会けんぽ東京支部からのお知らせです。日本人女性がかかるがんの中で最も多いとされているのが、乳がん。20代や30代に見つかるケースも増えていますが、乳がんにかかりやすい年齢は、40歳台後半から50歳台にピークを迎えます。協会けんぽ加入者ご本人向けの生活習慣病予防健診には、がん検診が含まれています。まだ検診を受けていない皆さん、この機会にぜひ検診を受けてください。協会けんぽ東京支部からのお知らせでした。
10月27日(金)のゲストは、シンガーソングライターの阪本奨悟さんです。次回もどうぞお楽しみに!