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第47回 中野智紀さん

第47回 中野智紀さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、東埼玉総合病院の医師、中野智紀さんです。
中  野
よろしくお願いします。
住  吉
中野先生は、地域糖尿病センター センター長でもいらっしゃるということで、今日は「糖尿病とその合併症」のお話を伺います。まず、「糖尿病」はどんな病気なのでしょうか?
中  野
「糖尿病」は、学問的には「高血糖を主体とした代謝異常」と難しい言葉で言われていますけれども…身体の代謝が狂ってきて、高血糖がどうしても注目されてしまいますが、コレステロールなどの脂質や血圧などの異常も合併してきて、最終的には色々な合併症を起こすという病気です。
住  吉
糖尿病そのものももちろん怖いですが、多くの合併症に繋がっていくところも特徴なんですか?
中  野
そうですね。ただ、実際はそれも全て含めて糖尿病治療となります。どうしても糖尿病と言うと、血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)ばかりに注目が集まってしまうのですが、それは一部の話なんです。実は、色々なところに目配りをしなければならない病気です。
住  吉
今日伺いたいのは、「糖尿病性腎症」。「糖尿病性腎臓病」とも呼ばれる病気ということですが、これはどんな病気なのでしょうか?
中  野
糖尿病のコントロール、血糖ももちろんそうなのですが、血圧やコレステロール、タバコ…他にもたくさんありますが、そういった糖尿病のコントロールが悪いと腎臓の方に障害を起こしてきて、最終的には透析が必要な状態まで至るという病態ですね。
住  吉
これも合併症の一つということですよね。
中  野
そうですね。
住  吉
これは糖尿病になった方全員が必ずなるというよりは、糖尿病になってからの過ごし方や対処の仕方によって変わってくるということですか?
中  野
はい、おっしゃる通りです。糖尿病の合併症全般に言えることですが、糖尿病になったら必ずなるというものではないと思います。ただ、例えば家系的に悪くなりやすい方がいたり、糖尿病のコントロールが悪いとなりやすくなったり、あるいは糖尿病を持ってからの時間、発症してからの時間が長いとなりやすくなったりします。
住  吉
最初はどういう症状があったり、本人はどうやって気づくのでしょうか?
中  野
ご本人が気づかれるのは、身体、特に足がむくんだり、もっとひどくなると気持ち悪くなったり、食事がとれなくなったりします。そういったところで初めて気づかれる方が多いですが、検査をしないと、自覚症状で気づいた時には、ほぼ透析直前の状態になっていることが多いですね。
住  吉
透析を受けている全国の患者のうち、かなりの割合がこの糖尿病性腎症が原因だというのは本当でしょうか?
中  野
そうですね。患者数が非常に多いということと、最近は健診から始まって、治療もそうですが、診断がかなりしっかりつくようになってきたというのが大きいと思います。また、腎臓病の学会の方からもそういった注意喚起がされていますので、意識が高まってきているのが診断に繋がっているのかなと思います。
住  吉
糖尿病の色々な合併症のうち、この腎症に注目されているのはどういう理由からなのでしょうか?
中  野
まず第一は、その方の生活を一変させてしまうということですね。透析をするという選択をした場合、週に何回も透析に通ったり、仕事の一部、あるいは全部を諦めなければならなかったり、生活を変えなければならなくなってしまうということがまず1つです。あと、これは社会的な問題として、医療費の高騰にかなり影響を与えているということが、最近特に言われています。
住  吉
人工透析をしなければならないとなった時は、肉体的、物理的、金銭的にも、患者にとってはすごく負担ですよね?
中  野
大きな負担になると思いますね。患者さん単位では保険が適用されますので、国からの補助が出るということもありますが、それを補助している側の国や保険は、大きな負担を背負うことになります。例えば、1人が透析を導入しますと、初年度は1000万円近い費用がかかり、次の年からは毎年500万円以上かかると言われています。今は医療の技術が発達していますので、10年、20年、30年…と長く元気でおられます。そのこと自体は喜ばしいことですが、一方でその費用をどのように負担していくのかという課題はどうしても残ってしまいます。
住  吉
もう1つの質問ですが、糖尿病になってしまったけれども、その後、糖尿病性腎症にならないように、患者本人が日々気をつけられることはあるのでしょうか?
中  野
実は、糖尿病の治療の段階で、至る所に落とし穴があります。まず、きっちりと診断を受けるということ。これは、糖尿病ですと「糖尿病の気がある」というような説明をされる方も昔はよくいらっしゃったので、(患者は)「それは糖尿病ではないだろう」と見なしてしまったりします。そうすると、そのまま病院に行かなくなってしまったり、必要な治療がスタートできないということにもなります。ですから、まずきっちりと診断を受けて、今の状態をしっかりと理解するということが大事だと思います。「糖尿病手帳」というものがどの医療機関にも置いてあると思いますので、そういったものを利用すると、明確に自分の状態がわかると思います。2つ目は、個人としてどのように腎臓を守っていくかということですが、絶対にこの方法をすれば糖尿病性腎症を防ぐことができるという方法は、まだ明確にはなっていないんです。ただ、多くの方にとって「塩分を減らす」ということは有効だろうと言われています。もちろん、ベースとなる糖尿病を良くするということですが、注意が必要なのは、よく「糖尿病を良くする」というと「血糖値を下げれば良いだろう」と思う方が多いのですが、血圧やコレステロール、タバコも非常に大きなウェイトを占めています。ですから、病気としては別々かもしれませんが、糖尿病治療をするということにおいては、1セットで考えた方が良いと思います。
住  吉
20代や30代など、若い世代にも関係がある病気でしょうか?
中  野
はい。最近は非常に若くして透析にまで至る糖尿病性腎症の方も増えていると思います。
住  吉
患者数も多いですし、誰もが無関係とは言えない病気だと思います。中野先生は「地域糖尿病センター センター長」というお仕事もされていますが、“地域”とついているのは、そこにかなり意味を持たせているということでしょうか?
中  野
はい。まず、埼玉県は医師が不足している県として有名な側面もあります。我々の勤務している地域というのは、埼玉県の中でも特に少なくて、全国的にも人口に対する医師の人数が非常に少ない地域と言われています。そういったことから、医師という面で見ても、病院単独で見るだけではなくて、地域の開業医の先生方と協力しながら進めていこう、ということが1点。あとは患者さんの生活に大きく関わる病気ですので、生活の場において治療をいかに取り入れていくのかということで、「地域糖尿病センター」という名前をつけています。
住  吉
糖尿病自体が、“地域”という意識で治療しなければ治療が難しい病気だということもあるそうですね。
中  野
そうですね。よく言われるのが、実際はそんなに短くないんですけれども、一般的に病院は3分診療だと言われます。例えば3分の診療だった場合、(患者は)その3分間の知識で残りの1~2ヶ月を過ごすことになりますので、その間のサポートが全くなく、本人に任せきりになってしまう、ということになります。その間は生活の場で、仕事なり日常生活を営まれていますので、そこもしっかりとサポートしていきましょうということです。