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第61回 中川恵一さん

第61回 中川恵一さん

中  川
例えば、がん検診の受診率を上げようと。そこが一番重要ですね。また、今日のテーマでもある、仕事とがん治療の両立ということも大きな課題となっています。この国家プロジェクトに賛同していただいている企業数は、2,600を超えていて、総従業員数では700万人。ですから、日本で働く人の1割ぐらいはこの運動に参加していただいているのですが、住吉さんは初めて聞かれましたか?
住  吉
はい。
中  川
もう少し認知度を上げていきたいと思っていて、会社の中でのがん対策、特に会社の中でがんのことを知っていただきたい。がんという病気は、わずかな知識の有無で本当に運命が変わってしまいます。例えば、大腸がん検診って、ただの検便なんです。痛くもかゆくもないんですね。これをやると、大腸がんの死亡率は3割以下に下がるんです。これは非常に有効なんです。ただ、そういうことがなかなか知られていないですね。私は、そもそも日本の男性の3人に2人はがんになるわけだから、学校でがんのことを教えるべきだとずっと申し上げてきたのですが、実は学習指導要領の中で、中学校と高校でがん教育が盛り込まれたので、これから子供たちはがんのことを習って大人になっていくんです。ただ、もう学校に行けない大人たちがどこでがんのことを知るか。私はよく市民公開講座などに呼ばれるんですが、来られている方は常連さんなんです。
住  吉
もう詳しい方々なんですね。
中  川
そうなんです。ですから、「俺はがんにならない。タバコは吸う。がんが見つかると怖いから検査も受けたくない」などと言っている方たちに、半ば強制力を持って聴いていただける場って、企業しかないんです。ですから、このがん対策推進企業アクションの中でもがんの出張講座のようなことを始めていて、企業の中でがんのことを知っていただく、これが世界一のがん大国、日本に求められると思いますね。
住  吉
働きながら治療をしたり、検診を受けるというところまでの意識の話を伺いましたが、「がん予防」も職場における意識を高めたり、実際に行動を起こされることが大事だとか?
中  川
もちろんそうです。実は、がんにならない生活習慣と運悪くがんになった場合に備えておく早期発見、早期発見とはがん検診ですから、「生活習慣+がん検診」、この2段構えが非常に重要で、そのことを欧米では学校で教えているんです。日本はそこが非常に欠けています。
住  吉
ちなみに、がん予防として企業で指導できるような内容で、効果がある内容というのはどういうものですか?
中  川
まず、がんの原因のトップは「タバコ」ですから、喫煙率を下げる。それから受動喫煙でも肺がんが3割増えることがわかっていますので、この受動喫煙対策も非常に重要ですが、日本はそこが非常に遅れているんですね。敷地内禁煙を企業が進める、これがとても大事だと思います。それからもう1つは、日本人は45%がお酒で顔が赤くなるんです。赤くなって深酒をすると、がんのリスクが高まるんですね。例えば、赤くなって3合以上飲む人は、決して珍しくないですよね。ですが、それで食道がんが100倍近くに増えるというデータがあるんですよ。こういうことがあまり知られていないのは、白人にも黒人にも、赤くなる遺伝子変異がないからなんです。東洋人の一部だけ。ですから、西洋社会では、お酒とがんはあまり関係がないんですよ。だから言わないんです。一方、日本人の多くは、紫外線で皮膚がんが増えると思っているんですが、それは日本人には当てはまらない。白人の話なんです。むしろ少し日の光を浴びた方が、紫外線によってビタミンDが皮膚で作られて、骨を強くするだけでなく、がんを予防する効果があるんです。ですから、特に北国は紫外線が少ないので、特に冬場は意図的に浴びた方が良いくらいなんです。日本はがんの情報提供がすごく遅れていて、白人がやっていることをそのままマネするんです。だから、お酒はOKで、紫外線を心配するとか。だけど、そういう知識を持っていれば、自分で判断できるじゃないですか。自分で行動を選ぶための情報が提供されていないというところに問題があると思いますね。
住  吉
中川先生は、そうするともちろん健康診断は受けていらっしゃいますか?
中  川
もちろん受けています。
住  吉
では最後に、中川先生の「健康の秘密」を教えてください。
中  川
健康の秘密は、“知ること”です。
住  吉
今日のお話にもあったように、がんについて正しいことを知るだけでずいぶん変わるということですね。今日のお話は、中川先生の著書『がんは働きながら治す!』でも詳しく知ることができます。中川恵一さん、ありがとうございました!
ここで、あなたの健康をサポートする協会けんぽ東京支部からのお知らせです。毎年5月31日は、WHO(世界保健機関)が定める「世界禁煙デー」です。がんを予防するためには、タバコを吸わないことが最も効果的です。日本の研究では、がんによる死亡のうち、男性で34%、女性で6%はタバコが原因と考えられています。今タバコを吸っている人も、禁煙することによって様々ながんのリスクを下げることができるんです。この機会に、禁煙を考えてみてはいかがでしょうか。
6月7日(木)のゲストは、今井美樹さんです。次回もどうぞお楽しみに!