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第78回 尾﨑治夫さん

第78回 尾﨑治夫さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、東京都医師会会長で、東京都東久留米市にある「おざき内科循環器科クリニック」院長の尾﨑治夫先生です。
尾  崎
よろしくお願いします。
住  吉
クリニックは内科、循環器科が専門で、生活習慣病の予防や治療に力を入れていらっしゃいます。また、「禁煙外来」を設けて、禁煙の相談にものっていらっしゃるそうですね。
尾  崎
はい、のっていますよ。
住  吉
受動喫煙のリスクについても、早くから警鐘を鳴らしてこられたということで、今日は「禁煙」や「受動喫煙」についてお話を伺います。喫煙が健康に深刻なダメージを及ぼすことは広く知られています。禁煙の場所も増えてきましたが、タバコを吸う人は減ってきているのでしょうか?
尾  崎
タバコを吸う人は、着実に減ってきています。私が学生の頃は、男性は80%がタバコを吸っていたんですが、今、国民全体としては20%、男性が30%、女性が10%ぐらいに下がってきています。
住  吉
だいぶ下がったんですね。ただ、年代によっては、吸う習慣のついている方が多い世代もあるということですよね?
尾  崎
そうなんです。特に40代の方が、男性も女性も多いんです。男性だと40%近く、女性でも20%後半ぐらいになっていて、いずれも高い数値を示しています。
住  吉
若くてまだ喫煙が多かった時代に吸い始めて、その習慣が身についたままということなんでしょうね。でも喫煙の影響は、長く吸っていると、今は大丈夫でも後で出る危険があるわけですよね。
尾  崎
そうです。肺がんなどは、やめてから13年ぐらいのブランクがあって、そこから出てくるという話もありますが、ほとんどの、例えばがんや心臓病、脳卒中は、10年間禁煙するとほぼ吸わない人と同じリスクに下がっていくと言われているんです。ですから、40代ぐらいでやめますと、その後だいたいタバコを吸わない人と同じような人生が歩めると言われています。なるべく40代でタバコをやめるということが大事になってきます。
住  吉
あと、受動喫煙について、例えば、家族の中で吸う人がいたとして、「換気扇の下やベランダで吸うと家族には影響がない」と思って分煙している家族もいると思いますが、それはどうなのでしょうか?
尾  崎
まず換気扇の場合は、換気扇がタバコの煙を全部吸い込むということはありえないですよね。料理をしていても、全くにおいがしないということはないので、かなり漏れてしまいます。では、ベランダで窓を閉めて吸ってから部屋に帰ってきたらどうかと言いますと、吸った後、煙が見えなくなってもしばらくの間は吐く息の中から煙が出続けるんです。ですから、例えばお父さんやお母さんがベランダでしか吸わないという人のお子様の尿に、コチニンというニコチンの代謝産物が出てくるんですが、それを調べると必ずコチニンが出てきます。ということは、ベランダから部屋に入ってきた後も、ご両親の吐く息の中に有害な煙が出続けていて、それをお子様が吸ってしまうということになりますから、はっきり言って「タバコをやめて禁煙する」、それしかお子様への害は防げないです。
住  吉
目の前で吸うよりも量は少なくなるとは思いますが、その微量でも健康被害の恐れはあるのでしょうか?
尾  崎
それはあります。受動喫煙していますと、お子様の場合は風邪や風邪をこじらせて気管支炎、喘息など、そういうものを起こしやすくなりますし、今注目されているのは、お子様の場合は「乳幼児突然死症候群」というのがあるんです。6ヶ月~1歳ぐらいの間に、元気そうなお子様が朝起きたら突然亡くなっていた、と。その大きな原因に、タバコの受動喫煙の害があると言われているんです。ですから、特に小さいお子様がいるご両親は、タバコは本当に吸ってはいけないと思います。
住  吉
今日はリスナーの皆さんからも色々なメールをいただいています。

「IQOSに替えたらどこでもスパスパ。夫がタバコから電子タバコに替えた時に、タールなどが少ないからと、家の中でも外でも吸い出しました。タバコを吸っていた時は気を遣って外で吸ったりしていたのに、IQOSになってから吸う量も増えた気がします。子供たちがまだ小さいので、影響がないのかどうか気になります」
住  吉
今、電子タバコに替えている方が確かに多いんですが、電子タバコはどうなのでしょうか?
尾  崎
正式には「加熱式タバコ」と言うんですが、タバコの葉っぱを蒸気で蒸すような形なので、燃やさない分、発がん性物質は確かに減っています。しかし、脳の血管や心臓の血管を痛める原因になるような、あるいは血圧を上げたりする、ニコチンは同じように入っていますので、そういった血管系に及ぼす害はありますし、ニコチンが出ますので、当然お子様はニコチンを吸ってしまいます。ですからそういう害はありますし、ニコチンが変化して発がん性物質に変わるのではないかという話も出ていますので、必ずしも安全ではありません。ですから、加熱式タバコは無害なのでどんどん吸って良いという話はありませんし、受動喫煙の害も当然あると言われています。
住  吉
受動喫煙の害も同じくあるんですね。
尾  崎
はい。ただ、害が少なくなっている、特にがんに対しては、ということはある程度事実だと思います。
住  吉
でもそれで吸う量が増えてしまったら…。
尾  崎
元も子もないですね。
住  吉
あと、東京都では東京2020のホストシティとして、飲食店などの喫煙について国の基準より厳しい条例を定めましたが、これはどう評価していますか?
尾  崎
最も受動喫煙を受けやすい場所というのが飲食店と言われています。その飲食店での規制対象が、国は45%なんですが、東京都内の飲食店は84%(従業員を雇っている飲食店)が禁煙になります。ですから、100%にはなっていませんが、かなり良いところまで来た条例だと思っています。これによって色んな脳血管障害や心臓病、肺の病気の入院がおそらく15~20%ぐらい、どの国でも減っていますので、そういう効果がそのうち出てくると思います。
住  吉
今日は「吸う人は肩身が狭い」というメッセージも来ていて、先生も日々そういう患者さんと向き合っていらっしゃると思いますが、どうしてもやめられなかったり、吸う身にもなってほしいと思っている喫煙者に対しては、どんな言葉をかけてあげたいですか?
尾  崎
結局、周りを思いやる心なんですね。だから、タバコを吸わない人がタバコの煙を吸うということは、健康を害する、ひいては受動喫煙で1万5千人が日本で亡くなっているわけですから、命をとってしまう場合もあるんです。色んな人が集まる空間でタバコを吸うのは、そういう意味で人を傷つけているんだということを考えていただければ、やめる原因になってくるのではないかと思います。