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第82回 溝田友里さん

第82回 溝田友里さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、国立がん研究センター保健社会学研究部 室長の溝田友里さんです。
溝  田
よろしくお願いします。
住  吉
10月は乳がんの早期発見、早期治療を推進する「乳がん月間」です。そこで今日のキーワードは「乳がん」。
溝田さんはドクターではなく、保健医療社会学が専門の研究者でいらっしゃると伺いました。
溝  田
はい。専門は社会学の中でも行動科学と言って、人の行動を科学を使って解明して、それをがん予防やがん検診の推進に使っていこう、ということです。例えば、24種類のジャムが試食できる売り場と、6種類のジャムが試食できる売り場があります。どちらの方がジャムが売れるでしょうか?
住  吉
私個人的には、6種類の方かも。なぜなら24種類だと選ぶのが無理と思って諦めてしまうんじゃないかと…。
溝  田
正解です。そういう有名な実験があるのですが、24種類のジャムの試食に来た人はそのうちの3%の人が買ったのですが、6種類のジャムの方は、試食に来た人のうち30%、10倍の人が買ったんです。こういった「選択肢が多すぎると意思の決定を妨げてしまう」という原理があるので、選択肢の数は7個±2個ぐらいがちょうどいいと言われています。人の選択には色んなクセがあるんですが、そのクセに法則があるということがわかっていて、そういうクセを考えた上で、「がん予防はこういうことをしたら良いのではないか?」「こう伝えたらやってくれるのではないか?」ということを研究しています。
住  吉
今日のテーマ「乳がん」についてですが、乳がんに罹患する方、乳がんで亡くなる方の数は今どのくらいなのでしょうか?
溝  田
大体1年間に新しく乳がんと診断される女性は全国で7万6千人ぐらいで、そのうち1年間で亡くなる方は1万4千人ぐらいです。乳がんは、女性がかかるがんで一番多いがん種で、今11人に1人が乳がんになっています。1975年ぐらいからの40年間で、乳がんにかかる人は4倍ぐらいに増えています。また、乳がんにかかる人というのは、40代後半が一番多くなります。他のがんはもう少し年齢の高い方がなることが多いんですが、乳がんは比較的若い方がなる病気です。
住  吉
同時に、乳がんはなるべく早期に発見すると治るがんでもある、ということも少しずつ知られてきていますよね。
溝  田
はい。乳がんは比較的予後の良いがんなので、早期に発見すれば95%以上は治ると言えるがんなんです。なので、乳がんにかかる人は多いですが、亡くなる人は全体の中では少ない方で、早く見つかれば早く治るがんと言えます。
住  吉
ということは、乳がん検診をみんなに受けてほしい、ということになってくるのですが、今の受診率はどうなっていますか?
溝  田
今は45%なので、半分以上の方は受けていないんです。
住  吉
当然、もっと受けてほしいということになってきますよね。受けない理由として、どんなことが挙げられているんですか?
溝  田
受けていない人に調査をしてみると、「自分は絶対がんにならないから大丈夫」と思っている方が全体の約3割、「がんになってしまったら怖いから調べたくない、知りたくない」という不安な方が約3割、「受けようとは思っているけど何となく受けていない」という方が約4割ですね。
住  吉
では、それぞれにどうアプローチすれば良いかということを、行動科学を使って考えていらっしゃるということですね。
溝  田
はい。例えば、「自分は絶対に大丈夫」と思っている人には、「そんなことはないですよ。今11人に1人ががんになるので、他人事ではないんですよ」と伝える。「がんになっていたら怖いから受けられない」という人には、「早期発見すれば95%以上が治るんですよ。だから大丈夫なので受けてくださいね」と伝える。そして「受けようとは思っているけど何となく受けていない」という方にはきっかけを与える。「今ここでこの電話番号に電話したらすぐに申し込めるので、今すぐ申し込んでしまいましょう」と伝える、という感じで、それぞれの方に響くメッセージが違うので、そういうことを考えて形にしています。