収録スタジオ訪問

ラジオ収録後の単独インタビュー:小池澄子 先生

小池澄子 先生(管理栄養士・料理研究家)

 WEBサイト「協会けんぽ 健康サポート」の健康サポート特集「メタボ予防」で、栄養や食事に関するテーマを取り上げる際に、記事をご監修していただいている小池澄子先生が、ラジオ番組のゲストとして出演されました。収録スタジオを訪ね、最近の栄養指導の傾向や食事についてのご自身のお考えを中心にお話を伺いました。

インタビュー/Webサイト編集部(インタビュー日:2012年8月27日)

小池澄子さんへのインタビュー
――― 協会けんぽのラジオ番組「協会けんぽ 健康サポート」にご出演いただき、感想はいかがですか。
小池 緊張しましたね。日常の栄養相談ではよく話していることでも、顔の見えないリスナーに音声だけで正しく伝えるのは難しいです。映像が浮かんでイメージできるような言葉を選んで、伝えることが大事だと思いました。うまく伝わったらうれしいです。
――― 小池先生は企業の健康管理室やクリニックなどで、栄養相談を担当なさっていますが、どんな相談が多いですか?
小池 メタボリックシンドロームをはじめ、糖尿病、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病(CKD)などの方たちの相談が多いですね。いずれにも共通した食生活の課題として、食べすぎ・飲みすぎ・脂肪のとりすぎによる「エネルギーのとりすぎ」、「塩分のとりすぎ」、「野菜不足」、「不規則な食事時間」などが挙げられます。
メタボリックシンドロームの危険因子である肥満、高血糖、高血圧、脂質異常は、慢性腎臓病の危険因子とも共通し、慢性腎臓病対策は最近注目されているテーマです。
――― 相談者の傾向はありますか?
小池 少子高齢社会を反映し、日本全体として一人暮らしの高齢者が増えているのは明確ですが、最近の社会現象として40歳代から60歳代の男性に、一人暮らしの人が増えていることも特徴です。単身赴任者や、未婚・離婚の独身者の増加ですね。栄養相談でも、そういう方々への対応が増えています。家族に頼れないので、エネルギー量や栄養知識をある程度身につけて、一人ひとりが自立した健康の自己管理能力が大切な時代になったと思います。
一人暮らしだと、外食や中食(スーパーマーケット、コンビニエンスストア、デパートなどのお弁当やお惣菜を買って、自宅で食べること)を利用する方が多いですね。これらの食事は、脂肪の多い高エネルギー食で、塩分も多い傾向にあります。利用するなら、うまく付き合うことが大切です。
――― 例えば、お弁当を利用する場合のコツを教えてください。
小池 なるべくおかずの品数が多いものを選びましょう。これに冷ややっこ、もずく、のり、ミニトマト、きゅうりなどをプラスし、お弁当の濃い味を調味料かわりに生かして食べることで、手間をかけずに栄養バランスもよくなり、減塩にもつながります。お弁当に添えてあるしょうゆやソースは、特にかける必要はありません。使いたいときには量を減らしましょう。
――― 栄養バランスや摂取エネルギー、塩分などをコントロールしやすいのは、手作り料理でしょうが、一人暮らしで手作りとなると、作りすぎたり、食材が無駄になったり、おっくうになったりで、長続きしないですよね。
小池 ですから、一人分でも作りやすい料理や食べ方を提案するのが私たちの役目です。例えば、なすを縦半分に切り、皮目に切り込みを入れ、丸ごとのピーマンやしいたけと一緒に、アルミホイルを敷いたオーブントースターで焼きます。食べるときに、少量の塩かしょうゆ、ポン酢などを振ってでき上がり。コクが必要ならオリーブオイルを数滴たらしてもよいでしょう。キャベツや長ねぎ、グリーンアスパラガスなどでもOKです。
魚は鮮魚が望ましいのですが、1切れだけでは調理しにくいこともあります。たまには缶詰の魚も活用しましょう。塩分が比較的少ない水煮缶がおすすめです。生野菜やゆで野菜と混ぜてサラダ風にすると、栄養バランスのよい1品が完成です。さけの中骨の缶詰は、カルシウムも簡単にとれます。
また、青菜を1把買ってきたら、新鮮なうちに1把まとめてゆで、食べやすい長さに切ってポン酢などで和えて冷蔵保存し、2〜3日に分けて食べればいいのです。
ご飯は一人暮らしの場合、1回に2合炊くという人が多いですね。炊飯器に入れっぱなしにせず、1食分ずつに小分けにして(2合を4〜5個に分ける。5個だと1個で約132g:ご飯茶碗山盛り1杯分:約195Kcal。4個だと1個で約165g:ご飯茶碗1杯分:約244Kcal)冷凍保存し、食べるときに電子レンジで温めれば、おいしくいただけます。
――― 肥満やメタボリックシンドロームをはじめ、生活習慣病を防ぐ食べ方では、どんな工夫が必要ですか?
小池 栄養バランスをとるコツは、主食、主菜、副菜を組み合わせること。とくに副菜(小鉢料理)が充実していることが大事で、2から3品、もしくは量を多めにします。副菜はシンプルで、かみごたえのある料理がおすすめです。キャベツ、もやし、トマト、きゅうり、ブロッコリー、カラーピーマン、にんじん、小松菜など見た目の彩りもいい素材を選び、生、焼く、蒸す、ゆでるなど調理法も変えてバリエーションを増やせば、素材自体の味を楽しめます。

食べすぎを防ぐ基本となるのは、ご飯・パン・麺類など主食となる糖質を食べすぎないことです。運動量(活動量)が減った現代では、昔のようにご飯をおかわりして食べるほど、エネルギーを必要としていないのです。
主食(糖質)を食べすぎないためには、食べる順序が大事で、ビタミンやミネラル、食物繊維源である野菜料理を先に食べる習慣をつけるといいですね。とくに野菜には食物繊維が豊富なので血糖値の上昇が緩やかになり、噛む時間も長くなり、トータルでの食事時間がゆっくりになるので満腹感も感じやすくなります。たんぱく質源の主菜とご飯などの主食も、よく噛んで、一口量を少なめに食べるように心がけます。
野菜の中でも、ボリューム感のある野菜を先に食べると満足感がありますが、いも類やかぼちゃ、とうもろこしなどは、主成分は糖質ですから、食べすぎないようにご注意ください。
――― そのほかに、気をつけたいことは?
小池 女性は果物をとりすぎて、男性は不足する傾向があります。果物はビタミンCやカリウムが豊富です。間食にお菓子ではなく、果物を食べてほしいですね。1回では食べきれない場合は、小分けにして冷凍保存がおすすめ。凍ったまま食べればシャーべットになります。バナナ、みかん、いちご、マンゴー、ぶどう……なんでもおいしいですよ。
――― 小池先生は、素材のもつ栄養や力を全部取り入れる「一物全体食」を推奨されていますが、そのメリットを教えてください。
小池 素材は丸ごと全部食べてこそ、その素材のもつ栄養を全部摂取できるということです。例えば、なすの皮にはナスニンというアントシアニン系の色素成分が含まれています。これらはファイトケミカル(栄養素に分類されていないが、植物がもつ体に有効な化学成分)と呼ばれ、抗酸化作用の強い成分なので、皮も食べていただきたいです。お米も玄米のように未精白のほうが、食物繊維や胚芽が残ります。
――― また「身土不二」という考えも推奨されています。このメリットも教えてください。
小池 「身土不二」とは本来は仏教用語で、体と土地とは深くつながっているという意味です。食生活に当てはめれば、現在住んでいる土地で採れた食材を食べることが、その気候風土に慣れた体のためには最も適しているという考えになります。食品流通の面からは「地産地消」という言葉で提唱されています。
食事は栄養学だけでは語れません。文化もメンタルな面も含めて、複合的な要素が統合されて、豊かな食事になり、幸せな時間を得ることになると思います。
――― 食事を中心とした健康づくりで、最も重要視され、提唱なさりたいことは何でしょうか。
小池 心と体のバランス感覚を大切にしながら、無理しすぎないことです。長寿社会を享受するには、健康で自立して長生きすることが大切です。そのためには自然のリズムに逆らわない生活リズムで生きることが大事だと思います。栄養学も大事ですが、旬のものを食べ、感謝して、精神的に豊かになれるシンプルな食事を思い出すこと。そして大前提として睡眠や呼吸など、生命の基盤を整えることがもっとも大事だと思います。
――― 本日は、ありがとうございました。