収録スタジオ訪問

ラジオ収録後の単独インタビュー:井上八重子 先生

井上八重子 先生(管理栄養士 (株)えいよう塾 代表取締役)

 栄養指導では、無理なく続けられることをアドバイスし、励まし、ほめることを心がけているという井上八重子先生を、ラジオ収録後にインタビューしました。「これならできる」ということから始めるのが成功のコツだとか。今日から実践できることが、いっぱいありそうです。

インタビュー/Webサイト編集部(インタビュー日:2013年8月26日)

ゲストへのインタビュー
――― 井上先生は、どういう人を対象にした栄養指導をなさっているのですか。
井上 企業の健康管理室に所属して、病気全般にかかわっています。栄養指導が必要な患者さんごとに、具体的な指導メニューを考えて、重症化を予防することが主な目的になります。 糖尿病、高血圧、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)などいわゆる生活習慣病は、食生活を改善することで、状態を良好にコントロールできることが多いですね。
――― 食生活の改善が、うまくいくコツはありますか?
井上 改善すべきことがたくさんあっても、一度にいくつもやらないことです。「野菜を1日に350g以上食べよう」「甘いものは控えよう」「脂身は残そう」「体重を1ヵ月に2kg減らそう」とか、あれもこれもと目標をたくさん掲げても、実際にはできません。ハードルが高いと、やる前に挫折してしまいます。まずは、これならできると思うことを1つ選んで、確実に実行しましょう。
――― 太りすぎの人は、ダイエットが必要ですが、うまくいかないという人も多いですね。コツはありますか?
井上 肥満は万病の元ですから、適正体重に戻したいですよね。たとえば、適正体重をBMI22の指数で計算すると、身長170pの人の適正体重は63.58kg。実際の体重が90kgだったら、約26kg減量しなければなりません。こういう人に最初から「26kg減らしてください」と言っても、できないでしょ。そこで「体重を毎日量りましょう」とか「今の体重より、3kg減らしましょう」とアドバイスします。
――― 目標が低く設定されると、やれそうな気になりますね。
井上 1ヵ月に1kg、3ヵ月で3kgやせることは、そんなに無理なことではありません。3kgやせるだけで、血液中のコレステロールや中性脂肪の数値が確実に改善されます。それに、3kgの変化は外見的にも表れてきて、ズボンのウエストがゆるくなったり、ワイシャツのえり回りがゆるくなったりしたことを実感できます。お腹がへこんで、ピチピチの服にゆとりができると、立ち居振る舞いも軽やかになってきます。そこをほめるのです。外見を気にするのは女性のほうかと思ったら、男性もけっこう見栄えを気にしている人は多いです。栄養指導は、いかに励まし、いかにほめるかが、成功の秘訣です。
――― 実際に、どんな人が栄養相談にみえるのですか?
井上 男性が多いですね。特に肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧など生活習慣病の人やその予備群。女性の場合は、更年期前後の相談者が多いです。更年期になると、女性ホルモンの分泌が低下して、心身にさまざまな影響を与えます。つまり更年期障害と呼ばれる症状が出やすくなります。女性ホルモンの分泌低下は、血中コレステロール値の上昇を招くことも更年期の特徴です。
しかし、多くの女性は、更年期の影響だということをご存じないので、健診などで血中コレステロール値が急に上昇すると、心配して食事の相談にみえるのです。
――― 昨今の傾向として、男性も女性も、お一人さまが増えましたね。そういう人への栄養指導をなさることも増えましたか?
井上 はい、増えました。家族と一緒に暮らしている人に比べ、自分の健康管理は自分でしなければなりません。一方で、一人分の食事を作るのは面倒という気持ちもわかります。出来合いのお弁当やお惣菜を買ってきて、自宅で食べることもありだと思います。
そのときに少し気にかけておいてほしいのは、いつも同じお店で同じようなものばかり買って食べるのではなく、お店を変えて品を変えて、食材も味付けもバリエーションを豊富にしていただきたいということです。食事内容の偏りを防ぐことは、栄養の点からも食事をするという意識の点からも、大切なことです。
――― 井上先生の栄養アドバイスは、わかりやすくてハードルが低いので、それならできると思えます。
井上 栄養素のことも難しく考えなくてもいいのです。その季節に体が欲している栄養素は、基本的には「旬の食材」を食べればいいと覚えればいいのです。旬の食材についての知識がない場合は、スーパーマーケットなどで、山積みになっているものを見つけましょう。それが旬です。私は、季節違いのものは食べないようにしていますよ。
――― 自然の理にかなった生き方をすることが、健康管理の基本なのですね。
井上 食べる、動くといった基本的なことは、いわば「生きていく力」であり、大事なことです。世界をリードする超高齢社会となった日本では、健康で長生き、つまり「健康長寿」が目標になります。そのためには、若いときから食事と運動に意識が高いことが大切です。
――― どうも、ありがとうございました。