収録スタジオ訪問

ラジオ収録後の単独インタビュー:小池澄子 先生

小池澄子 先生(管理栄養士・料理研究家)

1月のラジオ放送で、生活習慣病、かぜ、冷え性や貧血など、さまざまな悩みを解決する食事のコツについてお話しいただいた小池澄子先生を、ラジオ収録後にインタビューしました。離乳食やお年寄りの食事のポイントのほか、日本食を取り巻く文化全体まで、幅広いテーマについて語ってくださいました。
小池先生は、Webサイト「協会けんぽ健康サポート」のメタボ予防特集で、食事や栄養に関するテーマの監修者でもあります。

インタビュー/Webサイト編集部(インタビュー日:2013年12月23日)

ゲストへのインタビュー
――― 1年ぶりの収録で、感想はいかがでしたか?
小池 1年前よりは緊張せずに話せましたね。2回目なので、リラックスして楽しみながら話すことができました。
――― 小池先生は企業やクリニックで健康管理の指導に携わるほか、離乳食に対して造詣が深く、数多くの本を出版されています。最近は離乳食に対する考え方が変わってきているようですね。
小池 以前と比べ、母乳で育てる期間が長くなり、離乳食のスタートが遅くなっています。これは、2007年に厚生労働省が策定した「授乳・離乳の支援ガイド」で提唱されているからです。このガイドでは、離乳の完了の時期を赤ちゃんのペースに合わせるよう幅をもたせたり、母乳を与える量や時間の目安を削除して、赤ちゃんが欲しがるだけ与えるようにすすめていることなどが以前と異なっています。
母乳は、赤ちゃんの免疫力を高める、栄養バランスに優れている、消化によい、スキンシップがとれるなど、メリットがたくさんあるので、母乳で育てるお母さんが多いのはとてもいいことです。その反面、食物アレルギーへの心配があるからか、なかなか離乳食へ移行できないお母さんもいらっしゃいますね。
――― お母さんにとってみると、食物アレルギーは、とても心配ですよね。
小池 最近は、花粉症をはじめ、お母さん自身がアレルギーであることも多く、アレルギーのつらさをよくわかっていらっしゃいます。また、食物アレルギーによる事故に関するニュースや情報も多いため、心配がより強まっているのでしょうね。
――― 離乳食を遅らせたほうが、アレルギーになりにくいのですか?
小池 必ずしもそうは言えないと思います。離乳食はおかゆや野菜など、アレルギーの原因になりにくい食材でスタートしますので。
――― 離乳食のスタートが遅いことで、苦労することはありますか?
小池 食べる能力を身につけるのが遅くなる場合があります。離乳食の役割は栄養補給だけでなく、咀嚼(噛むこと)の訓練という意味合いが強いのです。母乳を吸う力は本能で備わっていますが、咀嚼は訓練で学びます。離乳食を始めるのが遅いと、それだけ練習が足りなくなり、もっと成長したあとで固い物を与えたときにうまく噛めなかったり、丸呑みしてしまうケースもあります。ただ、焦るのもよくありません。離乳食を始めるのに適したタイミングは1人ひとり違うので、お子さんの成長をよく見てあげることが大切ですね。
――― そのほかに気をつけることはありますか?
小池 アレルギーを起こしやすい食材は、卵、小麦粉、乳製品などが代表ですが、それらを避けるだけでは、栄養不足になる恐れがあります。そこで、それに代わるもので栄養を確保することが大切です。たとえば、卵の代わりにお肉やお魚で動物性たんぱく質を補うといった具合です。必要な栄養素はきちんと摂らないといけません。アレルギーを過剰に怖がるのではなく、正しい知識を持つことが必要です。
――― 次に、お年寄りの食事についてお聞きします。介護食と離乳食は、似たものなのでしょうか?
小池 お年寄りと赤ちゃんは、噛む力が弱いという点で似ているので、食べられる形状も似ています。ただし、お年寄りには、いままで生きてきた歴史と尊厳があるので、それを傷つけないような配慮が必要です。
――― 具体的にはどういうことですか?
小池 肉や魚、野菜料理をすべてペースト状にすればよいかというと、そうではありません。たとえば、豚ロースのかたまりを、塩やコンソメなどを入れずに紅茶だけで煮こむと、本当にやわらかくなります。でも見た目はお肉のままですから、お年寄りにお出しすると驚かれるのですが、食べてみるとやわらかいので噛めてしまいます。すると、お肉を自分で食べられたことに自信がつくんですね。こうした工夫は大切ですし、とても喜ばれます。
――― ところで最近、日本の食文化がユネスコの世界文化遺産に登録されました。これについて、小池先生はどのような感想をお持ちですか?
小池 残念ながら、私たち日本人の食生活は「和食ばなれ」をしているのが現実です。味噌汁は食卓では“絶滅危惧種”になりつつあります。子どもに人気なのは焼き肉やすし、カレーライスなどですし、大人も忙しくてファストフードで済ませることが多いです。
一方、日本食は栄養学的にも優れていますが、それだけではありません。私は、食の基本はその土地の風土とのつながりであると考えています。人間のからだは、その土地と切り離すことはできず、住んでいる土地の食材を食べるのが最もよいという「身土不二」の考え方です。旬のものベースに自然のリズムに逆らわない食べ方です。また、農家の方が、まるで家族に食べさせるためのように食材を生産し、消費者は食材や生産者に、感謝の気持ちを抱きながら食べ、「いただきます」と「ご馳走様」と手を合わせる。日本の食文化には、もともとそんなところがありました。
今回の文化遺産登録は、和食が単体で評価されたのではなく、「日本食を取り巻く文化全体」が認められたのですから、失われつつある現状を踏まえて、しっかりと生活の中に取り戻し、守ってゆくことの大切さを見直す機会にするといいと思います。
――― 最後に、小池先生のこれからの抱負をお聞かせください。
小池 「単に栄養だけではなく、お互いが命を生かす食べ方」を考えてゆきたいですね。食べ方が心身ともに豊かで健康に生きる力になる、そんな精神的なところとのつながりを再認識する必要があるのではないかな、と思っています。
――― ありがとうございました。