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ラジオ収録後の単独インタビュー:矢内邦夫 支部長

糖尿病(1)

Talk Guest
  • 矢内邦夫 支部長 (全国健康保険協会(協会けんぽ)東京支部 支部長)
5月5日に放送された「協会けんぽ インフォメーション」でお話くださった、協会けんぽ東京支部の矢内邦夫支部長にインタビューしました。今回は、ラジオ収録スタジオを離れ、東京支部のオフィスを訪れ、協会けんぽ東京支部の、今後とくに力を注いでいかれる取り組みについて、お話を伺いました。

インタビュー/Webサイト編集部(インタビュー日:2014年5月1日)

ゲストへのインタビュー

協会けんぽ東京支部からの健康情報の配信方法として、ラジオ番組「協会けんぽ 健康サポート」を企画されたのは、どんな理由からでしょうか。
矢内

健康の維持・増進や疾病予防をめざし、健診および保健指導の勧奨と共に健康づくりに役立つ情報を幅広く提供することが大切であると考えています。それはまた、協会けんぽ東京支部の保健事業を効果的に推進し、医療費適正化に向けた広報を適切に実施するためにも重要なことです。加入者の方々やそのご家族の方に、一度にたくさんの情報を配信したいが、そのためにはどうしたらよいかと考えました。

協会けんぽの加入者の方々のほとんどは、中小企業で働いていらっしゃる方です。たとえばタクシーやトラックの運転手さん、工場で働いている方、建築業の方、店舗で働いている方、事務職の方など、多種多様です。その方々の中には、就業時間中もラジオを聴いている方も多いのです。ラジオ番組が協会けんぽ東京支部の健康情報の発信拠点となり、さらに詳しく健康情報を配信しているWEBサイト「協会けんぽ 健康サポート」と連動すれば、さらに幅広い層に多様な情報を配信することが可能になります。そういった思いで、ラジオ番組による健康情報の配信を企画しました。
保険財源の厳しい情況で、協会けんぽ東京支部の設立以来、さまざまな取り組みをなさってきたと思いますが、今後さらにどのような取り組みに力を注いでいかれる予定ですか。
矢内

まずは、健診の受診率向上に取り組みます。また、労働安全衛生法上の定期健診を受診された方の事業者健診データを取得することや、家族の集団健診(「家族の健診」「500円ワンコイン健診」)の推進に努め、加入者の方やそのご家族の健康づくりに役立つ各種イベントを開催するなど、啓発活動にも一層力を注いでいく予定です。

すでに実施している取り組みでは、健診受診者のデータから、CKDD(慢性腎臓病)の疑いがある方に、個別に通知を行い、早期治療を呼びかけています。腎臓の機能が著しく低下してしまうと、体外に排出されなければいけない老廃物がいつまでも体内に残り、心臓病や脳梗塞など重篤な状態をひき起こしたり、人工透析治療を受けなくてはならなくなったりします。
国は、保険者(健康保険組合など)が保有するレセプト(診療報酬明細書)や、事業主から提供された健診データなどの情報を活用して、加入者の健康づくりや、疾病予防・重症化予防を推進するための「データへルス計画」を平成25年6月に閣議決定し、2014年度内に実施計画を策定し、2015年度から実施することとしましたね。協会けんぽでも、これを受けて実施計画を策定されていると思いますが。
矢内
もちろんです。健診データやレセプトデータの電子化・標準化が進み、健診データの蓄積や、医療費の内訳・傾向の分析が比較的簡単になり、また、健診データとレセプトデータを突き合せすることで、加入者一人ひとりの健康状態の変化を把握できるようになったことを受けての動きです。 私ども東京支部では、この国の動きに先行する形で、すでに3年前から健診データを分析し、業態別の健康度の傾向などを把握することができました。しかも、データ分析は外注化するのではなく支部内で行うことにし、職員の分析スキルアップを図るための人材育成にも努めています。 今後は、医療機関から来るレセプトデータと健診データの突合による分析を行いたいと考えていますが、レセプトデータの活用の難しさが、分析を行っていくうちに明らかになってきました。
職業が多種多様である加入者の健康状況や、健康への意識や取り組みなども多種多様であろうと察しますね。
矢内
データの収集・分析に当たり、協会けんぽ東京支部の強みは、対象者が多いことと業態が多様なことです。業態別に、「喫煙者の割合」、「朝食抜きの割合」、「1人当たりの医療費の比較」、「メタボ該当者の割合が高いあるいは低い業態」などグラフに表し「見える化」すると、業態別の特徴や傾向が一目瞭然です。健康度の評価は別の話として、分析の対象者が多いことで数字的な裏付けも確認され、よって業態別の特徴も把握できたと考えています。次なる課題は、この分析データを都や区市町村と連携して発信していくべきなのか、協会けんぽ独自で発信していくべきなのか、検討が必要です。
ところで、加入者から「健康保険委員」を募っていらっしゃいますね。この委員は何をするのですか。
矢内
協会けんぽ東京支部の事業の推進を図るため、広報・相談・健康保険事業の推進やモニターなどにご協力いただく、「健康保険サポーター」です。事業主・加入者の皆様のご協力のもと、各都道府県支部長が委託しています。 健康保険委員は、事業主・加入者の皆さまと協会けんぽの距離を縮める橋渡し的役目(協会けんぽの架け橋)を担っていただいております。具体的には、
  • 協会けんぽの事業運営やサービスについて、モニターなどをしていただく後方サポート活動
  • 社員の皆様から、各種申請に関する相談や指南役
  • 社員の皆様へ、協会けんぽからのお知らせやニュースをお伝えいただく周知活動
  • 職場の皆様の健康づくり、各健診事業の推進 などです。
協会けんぽ東京支部は、世田谷区や葛飾区と「覚書」を締結して、連携を図ろうとなさっていますね。具体的に、どんな連携をなさるのでしょうか。
矢内
連携の可能性としては、
  • 区民の健康状況を把握するための特定健診結果などの情報共有や分析
  • 区内の中小企業に対する健康づくりの支援
  • 区民の特定健康診査、がん検診んどの受診促進および特定保健指導の利用拡大
  • 区民の健康づくり意識の向上に向けた広報や事業の共同開催
などが、考えられます。特に世田谷区は、業態別のデータ分析に関心を示していらっしゃいますね。
協会けんぽ全体の加入者は約3,600万人。そのうちの約10%に当たる370万人の加入者を擁する東京支部さんの取り組みは、各支部へはもちろん、ほかの健保組合さんにもモデルを示されることで、わが国全体に対しての影響力は大きいと思います。その役目を担う豊富をお聞かせください。
矢内
やはりなんといっても、データ量が多いということです。対象者数としても業態の豊富さとしても。このデータを活用していくことに意義があると考えています。保健(ヘルスケア)分野などの学会では、すでに研究発表を行っております。先ほども述べましたように、分析力を備えた職員の育成にも力を注いでおりますので、職員が育っていけば、東京支部は、いわゆるシンクタンクにもなりえます。そうなれれば、協会けんぽの各支部の分析サポートに回ることもできます。さらには、ほか健保組合さんや市区町村へのアドバイスもできます。
実現可能性の高いビジョンですね。本日は、どうも、ありがとうございました。