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脱たばこ! 脱メタボ!!

脱たばこ! 脱メタボ!!

 喫煙がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患や、肺がんをはじめとするさまざまながんの重大な危険因子であることはよく知られています。同様に、喫煙がメタボリックシンドロームの危険因子であることや、喫煙者がメタボリックシンドロームになると、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞の危険度がより高まることもご存じでしょうか。5月31日は、WHO(世界保健機関)が制定した「世界禁煙デー」です。喫煙者は、この機会にぜひ禁煙を。

喫煙者がメタボになれば、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞の危険度アップ

「特定健診(通称:メタボ健診)」では、おなか回り(へその位置の腹囲)の基準値(男性85cm、女性90cm)を超えた人で、さらに血圧、血糖、脂質のどれか一つでも基準値を超えた場合は、「喫煙」も危険因子に数えられ、特定保健指導の対象になります。
 特定健診の目的は、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病の予備群を早期に発見し、保健指導を行うことで生活習慣病を予防することです。
 高血糖(糖尿病)、高血圧(症)、脂質異常動(症)は、動脈硬化と深い関係があり、動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳梗塞といった生命にかかわる重大な病気を引き起こすリスクが高まります。
 喫煙は、この動脈硬化の重要な危険因子であることから、特定健診のチェック項目に加えられているのです。喫煙者がメタボリックシンドロームに該当すれば、負の相乗効果で動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険度が非常に高まります。

喫煙は、メタボそのものの危険因子でもある

 さらに最近の研究では、喫煙はメタボリックシンドロームそのものの危険因子でもあることがわかってきました。非喫煙者がメタボリックシンドロームになる危険度を1.00とした場合、1日「10本から19本」吸う人の危険度は1.98、「40本以上」だと3.40にもなります。
 一方、禁煙するとその危険度が少しずつ下がってくることもデータに表れています。たとえば禁煙「1年未満」だと2.17あったものが、「5年以上」だと1.61にまで低下しています。
 このように、「喫煙=メタボ」、「禁煙=脱メタボ」という図式は明らかなのですから、喫煙者は、今すぐにでも禁煙に踏み切っていただきたいのです。

ニコチンの依存度別に対応法を考える

 そうはいってもたばこをやめることは、簡単ではありません。というのも喫煙は単なる習慣ではなく、「ニコチン依存症」という病気であることがはっきりしているからです。病気であるという認識から、意志の問題ではなく薬物依存症として治療が必要な場合があります。
 治療も含めた禁煙の方法は、ニコチン依存度の強さによって以下のように分けて考えることができます。

依存度が弱い

それまで習慣的に吸っていた場面を作らない。たばこを吸いたくなったときの気の紛らせ方を試す。

依存度が中程度

ニコチンガムやニコチンパッチなど市販の禁煙補助薬を利用する。

依存度が強い

禁煙指導の専門家のサポートを受ける。条件が合えば健康保険で禁煙治療を受けることもできる。治療が受けられる全国の医療機関を、製薬会社やNPO法人、日本禁煙学会などがネット上で公開しています。キーワード「禁煙外来」でアクセスできるでしょう。

 たばこを吸っている本人のみならず、その煙をまわりの人が吸わされる受動喫煙でも、心血管疾患、呼吸器疾患、がんなどになる危険を高めてしまうことがわかっています。それは、メタボリックシンドロームも同様です。
 特に、子どもや女性の健康寿命を大きく損ねてしまうのです。家族や次世代の健康を考えても禁煙が非常に重要なことがわかりますね。
 メタボリックシンドロームの最悪形は、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる病気です。自分のためにも、家族や次世代のためにも、すぐにでも禁煙に取り組んで、「脱たばこ! 脱メタボ!!」を実践してください。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。