文字サイズ

30歳代からのメタボ対策

30歳代からのメタボ対策

 メタボリックシンドロームは40歳代から始まるのではありません。30歳代ですでにおなかが出ている人は要注意。先輩と同じ道を歩かないよう、代謝のいい若いうちこそ、メタボ対策を始めましょう。日ごろの食べ方、歩き方、動き方、そして考え方を、少し変えてみるだけで効果が表われます。

脂肪がたまりすぎた内臓周辺の脂肪細胞から悪玉物質が

 若い人は、「メタボ健診」のことを知ってはいても、健診対象が40-74歳となっていることから「自分はまだ、メタボの心配はない」と思っている人が少なくないかもしれません。でも、その考えはちょっと危険です。メタボは、40歳になってからいきなり起こるわけではないからです。
 わが国のメタボの考え方は、内臓脂肪型肥満が基本となって、高血圧、脂質異常症、糖代謝異常が起こり、その複合状態が脳卒中や心筋梗塞などの病気につながる、というものです。肥満とは脂肪細胞が過剰に蓄積している状態のことをいいますが、メタボでは、特に上半身の肥満つまり内臓脂肪や腹壁皮下脂肪の蓄積が問題であると考えられています。注意すべきことは、肥満と過体重とは違う、ということです。筋肉が多いための過体重は肥満ではありません。そこで、日本での基準には、腹囲が重視され、身長と体重から計算されるBMIは参考値として使われています。
 なぜ、肥満になるか……は、実はなかなか難しい問題です。女性と男性では、脂肪のつき方が異なるので、性ホルモンの影響もあるでしょう。肥満には遺伝因子と環境因子があることがわかっています。エネルギー摂取とエネルギー消費のバランスで肥満が起こってきますが、摂取と消費の両方に遺伝と環境因子が複雑に絡んでいます。太っている人のほうが多く食べることも報告されており、肥満は二次的に食欲異常を引き起こる可能性もあるようです。
 脂肪細胞は、今までは単に脂肪を蓄える細胞と考えられてきましたが、実は代謝や免疫などをコントロールしているさまざまな種類のホルモン様物質を分泌していることがわかってきました。分泌される物質を総称して「アディポサイトカイン」といいます。よいアディポサイトカインとしては、血糖コントロールに役立つ「アディポネクチン」や、食欲の暴走に歯止めをかける働きのある「レプチン」などがあります。一方、血の塊を作りやすくする物質(プラスミノーゲン活性化因子インヒビター:PAI-I)、血管を収縮させる物質(アンギオテンシノーゲン)、炎症を起こす物質(腫瘍壊死因子:TNF-αやインターロイキン-6など)の悪い作用を持つものもあります。肥満になるとよいアディポサイトカインが減り、悪いアディポサイトカインが増えてきます。

40歳になっていきなりメタボになるわけではない

 内臓脂肪をため込むような生活を長く続けていると、年齢が何歳であろうとメタボになります。ただしそれには、10年以上という長い時間がかかるといわれます。つまり、40歳からがメタボ健診の対象になるのは、筋肉が衰え始め、運動する機会も減る20歳代、30歳代から内臓脂肪の蓄積が始まり、40歳をすぎる頃にはメタボになっている可能性が高いということなのです。
 ところで、平成22年12月に発表された厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(平成21年度調査)では、20歳以上の男性で肥満者の割合は40歳代が最も多い(36.2パーセント)のですが、2番目は30歳代(34.8パーセント)です。男性の場合は内臓脂肪型肥満が多いといわれるので、この数字は30歳代からのメタボ対策がいかに重要であるかを示しているといえるでしょう。女性の場合は女性ホルモンの関係で男性よりは内臓脂肪がつきにくいのですが、閉経が近づく40歳代あたりからメタボの危険が大きくなるといわれます。ちなみに肥満割合は70歳以上、60歳代、40歳代の順に多くなっています。

まず「運動」に取り組もう

 メタボ予防において、厚生労働省は第一に「運動」を提唱しています。もう一つの柱は「食事」です。カロリー、脂質、塩分のとりすぎに気を付け、ビタミンや食物線維をしっかりとることが大事です。極端な節食や偏った食事は、健康を損なう可能性もあります。脂肪を効果的に燃やす食品の研究も進んできていますので、そうした食材をとるのもいいですね。
 運動はジムに行かねばできない、ということではありません。まずは、歩くこと、エレベーターやエスカレーターは極力使わないこと、大腿部や背筋など大きな筋肉を使う運動をするのが有効です。また、体重や歩数を記録するなど「測ること」「記録すること」も有効だといわれています。早い時期から「健康習慣」を身につけ、高齢化社会を元気で過ごしていきましょう。通勤や家事など普段の生活活動のなかで、できるだけ活発に体を動かすことも内臓脂肪の抑制には役に立ちます。このような生活改善に30歳代から取り組めば、40歳からのメタボ健診は無事に通過することができるでしょう。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。