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「カーボカウント」による血糖管理とは

「カーボカウント」による血糖管理とは

 糖尿病の治療では食事療法が大切ですが、食品交換表に基づく一般的な方法は、複雑で面倒なこともありました。最近、1日のうちに摂取する炭水化物の量を計算して、コントロールを行う「カーボカウント」の考え方が注目されています。計算がしやすく、ある程度の自由がもてるのが特長です。糖尿病の人は、医師や栄養士の指導を受けて行いましょう。糖尿病でない人にも自分に適した炭水化物量を知り、毎食バランスよくとることは健康維持にも重要で、参考になります。

食後の血糖値に大きく影響する炭水化物に着目

 糖尿病の治療で欠かせない食事療法において、「カーボカウント」という考え方に基づいた方法が注目されています。これは、食物に含まれる3大栄養素である「炭水化物(糖質)」「タンパク質」「脂質」のうち、炭水化物に着目したもの。「タンパク質」や「脂質」は何割かしかブドウ糖にならず、食後の変化もゆっくりなのに比べて、炭水化物は食事をとった直後から短時間でほぼ100%がブドウ糖に変化します。つまり炭水化物は、食後の血糖値上昇に一番影響を与える栄養素なのです。

 日本での糖尿病の食事療法は、日本糖尿病学会が推奨する『糖尿病食事療法のための食品交換表』に基づいて1日の摂取エネルギーをコントロールする方法が一般的です。主な食品を6つの群に分け、80kcalを1単位として指示されているエネルギー量内に摂取量を抑えるものです。しかしこの方法は、複雑な食品交換表を覚え、食事のたびにエネルギー量を計算しなければならず、患者が長期間続けていくのには強い意志と根気が必要です。

 一方、カーボカウントでは、食品中の炭水化物(カーボハイドレード)の量を数える(カウント)ことが基本で、炭水化物の多い食品(表1)の摂取量に注意を払いますが、肉や魚、野菜などは含まれる炭水化物が少ないためにあまり問題にしていません。

炭水化物の多い主な食品群類例

(1) 穀類…ご飯、パン、めん類、シリアルなど
(2) でんぷん類の多い野菜…かぼちゃ、とうもろこし、いも類、れんこんなど
(3) 豆類…あずき、えんどう豆、いんげん豆、そら豆など
(4) 果物・フルーツジュース
(5) 牛乳・乳製品

食品交換表による食事療法より自由度が大きい

 カーボカウントの考えに基づいた食事療法では、できるだけ炭水化物の摂取量が抑えられる食品を選びます。ただし、炭水化物の量が同じなら、自分の好きな食品を選ぶことができます。炭水化物の摂取量をコントロールするといっても、やみくもに減らせばよいというものではありません。食事全体に占める炭水化物の割合は、50-60%が目安とされています。

 炭水化物の量は「15gで1カーボ」という単位で表されます(計算しやすさから10gを1カーボとしている医療施設もある)。例えば1日の摂取エネルギー量が1600kcalと指示されている人で、炭水化物の割合を60%とした場合の計算は以下のようになります。

1600×0.6=960kcal……1日の炭水化物のエネルギー量
炭水化物は1g=4 kcalですから、960÷4=240g……1日の炭水化物の量
これをカーボで表すと、240÷15=16カーボ

 1日の摂取エネルギー量が1600 kcalと指示されている人の、1日の炭水化物摂取量は16カーボとなります。これを朝食4カーボ、昼食5カーボ、間食1カーボ、夕食6カーボというように、1日の食事に割り振るのです。

 メニュー選びでは、まず主食を何にするか決めます。主食の炭水化物量が、食事のなかで最も大きな比率を占めるからです(表2)。次に、栄養バランスを考えて野菜料理などの副菜を選びます。メイン(主菜)のおかずになる肉や魚はタンパク質が主な栄養素ですから、あまり考慮しなくてよいとされています。

表2 主食のカーボ数の例

1カーボ ロールパン1個
2カーボ 食パン6枚切り1枚
3カーボ うどん・そば(ゆで)1玉
4カーボ ご飯1ぜん(150g)
5カーボ パスタ(ゆで)250g

 カーボカウントでは、「標準体重」か「やせ」の人なら炭水化物の量だけ意識していればよく、肥満ぎみであればエネルギー量も考えながら食品を選びます。どちらにしても、カーボカウントに基づいた食事療法は、食品交換表による方法よりは自由度が大きいので、今後の糖尿病の治療現場でさらに広がっていきそうです。

小池 澄子 先生

監修者 小池 澄子 先生 (管理栄養士、料理研究家)
女子栄養大学生涯学習講師ほか、複数の大学で非常勤講師を勤める。食と自然と人を結ぶネットワーク有限会社カナ代表。企業やクリニックで健康管理に関わり、保育園や地域で子育て支援、栄養相談、離乳食教室、講演など行っている。栄養、料理、農場を通じて心と体と社会の健康を高める情報やレシピを提供し、“命を繋げてゆく食”を柱に食育活動展開中。著書に『簡単でおいしいおやつ』(かもがわ出版)、『おいしい山歩き』(大月書店)、『ステップアップ離乳食』(学習研究社)、『初めての離乳食』(ベネッセコーポレーション)、『黒豆健康生活』(青春出版)など多数。