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メタボで高まる「CKD(慢性腎臓病)」のリスク

メタボで高まる「CKD(慢性腎臓病)」のリスク

腎臓の機能低下や障害が徐々に進む「CKD(慢性腎臓病)」。放置すると腎臓移植や人工透析が必要になったり、心血管疾患のリスクも高まります。糖尿病や高血圧、肥満がある人のほか、家族に腎臓病患者がいる場合もCKDのハイリスク。早期には自覚症状はほとんどないため、定期的に尿検査や血液検査を受けることが大切です。

日本では成人の8人に1人が潜在患者

成人の8人中1人は慢性腎臓病(以下CKD)──。こんな推計があるほど日本ではCKDの潜在患者が多く、新たな国民病ともいわれるほどです。CKDの患者が多いのは、メタボリックシンドローム(以下メタボ)や糖尿病、高血圧などといった生活習慣病が、CKDの重要な危険因子であり、社会の高齢化とともに生活習慣病の患者が増えているためです。

CKDとは慢性腎臓病の英語名の頭文字で、腎臓に何らかの慢性的な異常がある場合をひとくくりにした比較的新しい概念です。

腎臓病の初期には自覚症状がないため、不調に気づいたときにはかなり症状が進んでいることが多いといわれます。腎臓の機能がいったん失われると元に戻ることは難しく、最終的にはほとんど機能しなくなる腎不全へと進行します。そうなると尿毒症や心不全で死亡する危険が高くなるため、腎臓に代わって血液を人工的にろ過する透析療法が欠かせなくなり、腎移植をしない限り(それを)一生続けなくてはなりません。

そればかりでなく、腎機能の低下が軽くても脳卒中や心筋梗塞などの発症率が高くなることが最近わかってきました。このため、原因は何であっても腎臓の機能低下が起こっている早い段階で発見し、治療を始めようという主旨でCKDの概念が導入されたのです。

内臓脂肪の蓄積が腎機能を低下させる

CKDの危険因子でまず注目しておかなくてはならないのは、メタボでしょう。メタボの成り立ちは内臓脂肪型肥満をベースにしています。内臓脂肪が蓄積するとインスリンの働きを低下させる物質が分泌されて、高血糖、高血圧、脂質異常などを招くほか、腎機能低下も起こりやすくなります。それがさらにインスリンの働きを低下させるという悪循環に陥ります。また最近では、メタボの診断基準を満たしていなくても内臓脂肪の蓄積があるだけで腎機能障害が起こることがわかってきました。

腎臓の毛細血管を傷つける糖尿病、高血圧

糖尿病や高血圧がCKDの危険因子になるのは、どちらも毛細血管を傷つけるからです。高血糖状態が続くと過剰なブドウ糖が全身の血管を傷めます。腎臓で血液中の老廃物をろ過するのは糸球体という毛細血管のからまり合った塊ですが、ここが傷んでもろくなると血液をろ過する機能が低下してしまいます。

糖尿病と診断されてから腎機能障害が疑われるタンパク尿が出るまでには、一般的には15-20年の間があるとされていますが、その後の進行は速く、5年後には約60%の人が腎不全に陥るといわれます。その結果、透析療法が必要になる原因で最も多いのは、糖尿病性腎症となっています。

高血圧も、高い圧力が血管にかかり続けるために糸球体を傷めます。腎臓には血圧を調節する働きがあり、腎機能が低下すると血圧を高めて機能を維持しようとするため、さらに腎機能が低下するという悪循環になるのです。

CKDは何よりも早期発見が重要です。尿と血液の検査で診断することができるので、毎年の定期健診を欠かさず受けておくことです。また、メタボそのものやメタボにつながる生活習慣病が重要な危険因子ですから、食事、運動、飲酒、喫煙、ストレスなどの面で偏った生活習慣は改善に努める必要があります。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。