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見た目やBMIではわからない「隠れ肥満」

見た目やBMIではわからない「隠れ肥満」

 BMI(体格指数)で「25以上」は肥満とされますが、BMI値は標準でやせて見えるのに、体脂肪が多い「隠れ肥満」の人が増えています。やせていても血糖値や血圧、中性脂肪が高めの人は要注意。糖尿病や高血圧などの生活習慣病を招く、内臓脂肪がたまっている疑いがあります。食事と運動の改善でスリム化を目指しましょう。

一見スリムだけど内臓脂肪がたまっている人が

 肥満かどうかを判定するモノサシとしてよく使われるBMI(体格指数)は、「体重(kg)÷身長(m) の2乗」で計算できます。この数値で25以上が肥満とされるのですが、この枠内に収まっていれば安心か、というと、そうともいい切れないのです。
 というのは、BMIが25未満なのに、詳しく調べてみると体脂肪率の高い人が結構見つかるからです。体脂肪率で「普通」とされるのは男性で15-20%、女性で20-25%まで。男性25%以上、女性30%以上となると「肥満」とされます。一見太っているようには見えないのに、実は見えないところに脂肪がたっぷりたまっていることから「隠れ肥満」と呼ばれています。

体脂肪のたまり方には、以下の2つのタイプがあります。

  • 皮下脂肪型
    文字どおり皮膚の下、体の表面に近いところに脂肪がたまるタイプ。主にお尻、太もも、下腹部などにたまって下半身が太くなるタイプで、女性に多くみられます。体型がくだものの洋なしの形に似ているので、「洋なし型肥満」ともいわれます。
  • 内臓脂肪型
    肝臓などの内臓周辺、体の深いところに脂肪がたまるタイプ。おなかを中心に上半身が太ってくる体型から「りんご型肥満」ともいわれ、男性に多い体型です。

 問題なのは、体型的にはこのどちらでもないけれど、脂肪がたまっている人。一見スリムなのに、おなかの部分がポッコリ出ているタイプがその典型で、若い女性によくみられます。この場合の脂肪のたまり方は、内臓脂肪型。そして、体への悪影響という点では、皮下脂肪型より内臓脂肪型のほうが危険とされているのです。

内臓脂肪が分泌する生理活性物質が血管に悪影響

 体脂肪とは、食事でとり込んだエネルギーのうち、使われずに余った分が脂肪としてたくわえられたもの。脂肪をたくわえる脂肪細胞がだんだん肥大してくると、体に悪影響を及ぼす生理活性物質を盛んに分泌するようになります。それだけでなく、体によい影響を与える「アディポネクチン」の産生は減ってしまうので、動脈硬化が加速されていきます。
 内臓脂肪から分泌される生理活性物質のバランスが崩れて、血圧が上昇する、インスリンの働きが妨げられる、血栓ができやすくなる、血液中に中性脂肪が増える──などの影響が出てきます。これらはどれも動脈硬化を進める要因であり、動脈硬化が進めば心筋梗塞や脳梗塞などの命を脅かす病気の引き金となります。

運動習慣と食事の改善で減らしやすい内臓脂肪

 危険な内臓脂肪ですが、分解・合成のスピードは皮下脂肪より速いため、比較的減らしやすいことがわかっています。「食べない・動かない」では、筋肉が衰え、代謝が悪くなってしまいます。むしろ「適正に食べる・良く動く」ことで、筋肉を維持し、代謝を高めることが大事です。せっかくジムに申し込んでも、ジムの前に階段があるのに、脇のエレベーターやエスカレーターを使うのでは何の意味もありません。
 むしろ、毎日できる運動を習慣化する方が効果的です。エレベーターやエスカレーターを使わないで階段を上る、少し遠回りをして歩く、など有酸素運動でたまっている脂肪を燃やすとともに、筋肉の衰えを防ぐ運動も取り入れて基礎代謝を高めましょう。
 食事は、摂取エネルギー(カロリー)、糖質、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミン、食物線維のいずれもが大事です。極端な制限食ではなく、量を全体的に抑え、バランスのとれた食事にしましょう。夜10時以降の食事は極力抑え、間食はしないように。ゆっくり噛むことも重要です。
 外見からは太っているとは見えないけれど、おなか回りがポッコリ出てきた人は、隠れ肥満の危険があります。運動に食事の改善を組み合わせて、上手に内臓脂肪を減らしましょう。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。