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糖尿病の人は心臓病のリスクが高い

糖尿病の人は心臓病のリスクが高い

 糖尿病の人は、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患になるリスクが高いことがわかっています。血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つきやすくなって、動脈硬化が促進されるためです。動脈硬化は、「糖尿病予備群」の段階からすでに進行しています。「血糖値が高め」と指摘された人は、できるだけ早く生活習慣の改善を実践しましょう。

正常な人の約3倍の危険性、予備群でも要注意

 欧米の研究では以前より、糖尿病と心臓病(狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患)発症との間には、強い関連があることが認められていました。そして近年、日本でも大規模な疫学調査の結果から、糖尿病の人は血糖値が正常な人より、約3倍も心臓病を発症する危険性が高いことが明らかにされました。
 調査をしたのは、国立がん研究センターを中心とする研究班です。東北地方から沖縄県までの地域に住む、循環器病にもがんにもかかっていない中高年男女約3万人を対象に、13年近く追跡調査を行いました。そして、これらの人々を血糖値検査から「正常群」、「境界群(糖尿病予備群)」、「糖尿病群」に分け、それぞれのグループでの心臓病の発症率を比べたのです。
 分析の結果、「正常群」の心臓病発症率を1とすると、「境界群」は1.65倍、「糖尿病群」は3.05倍という数値になりました。「糖尿病群」はもちろんのこと「境界群」であっても、心臓病になる危険性が明らかに高いことがわかったのです。

高血糖が続くと動脈硬化になりやすい

 糖尿病が心臓病の危険性を高めるメカニズムは明らかです。
 全身に血液を送り出している心臓の筋肉(心筋)は、冠動脈という太い血管から酸素や栄養の補給を受けています。しかし、血液の流れが悪くなると狭心症が起こり、血管が詰まって血液が流れなくなると心筋梗塞が起こります。そして、血液から酸素や栄養を得られなくなった心筋の細胞が死んでしまうと、命にかかわる危険な状態に陥ってしまいます。
 狭心症や心筋梗塞を引き起こす冠動脈の異常は、動脈硬化が大きな原因です。血糖値が高い状態が続くと血管壁に炎症が起こり、傷つきやすくなります。その傷に悪玉コレステロールが入り込んで血管壁にプラークというこぶのようなものができてきます。血液の通り道が細くなり、運動したときなどに十分な酸素が来ないと狭心症になります。さらに、血管の炎症が進み、プラークが次第に大きくなると、血管の一番内側の膜が破れて、プラークの中身が血管内に飛び出してきます。そこを目がけて、一挙に血小板(血液を固まらせる成分)が活性化され、血管内に血液の塊(血栓)を作ります。血栓で血液の流れが止まるとその下流にある心筋は死んでしまいます。これが心筋梗塞です。
 一般に、狭心症や心筋梗塞の発作では胸に激しい痛みが起こるのですが、糖尿病の合併症の1つである神経障害があると、痛みを感じにくいことがあります。そのため、発作に気づかずに、心臓病が悪化してしまう危険性もはらんでいます。

血糖値が正常なら心臓病が防げる可能性が上がる

 先に紹介した日本の研究報告では、心臓病を発症した人のうち、もしも血糖値が正常だったなら防げていたはずと考えられる割合も計算しており、「糖尿病群」で6.3%、「境界群」で6.9%とはじき出しています。
 メタボ健診(特定健康診査)では、高血糖であるかどうかが診査項目の1つになっています。日本人で糖尿病の人は必ずしも太っていません。肥満がなくても高血糖を指摘されたら、特に糖質のとり方に気をつけましょう。成人の糖尿病は生活習慣と関係が深いのですが、遺伝が関係している場合も多いので、身内に糖尿病の人がいる方は、体重の如何によらず要注意です。糖尿病→動脈硬化→心臓病という、危険な流れがあることをよく理解しておきましょう。そして、運動不足や不適切な食生活を続けていないかどうか、自分の生活習慣を振り返って改善に努めることが大切です。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。