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危険な「仮面高血圧」に気を付けよう

危険な「仮面高血圧」に気を付けよう

 病院で測ると正常なのに、家や職場では血圧が高い人を「仮面高血圧」または「隠れ高血圧」と呼びます。高血圧であることがわかりにくいうえに、脳卒中や心筋梗塞発症のリスクが高い危険なタイプです。

診察室では正常値なのに、家庭や職場で測ると高い

 健診や医療機関などで血圧を測ると正常なのに、それ以外の場所や時刻では高い血圧を示す人がいます。このような人は、医療機関で測るときはまるで仮面をかぶって高血圧であることを隠しているように見えることから、「仮面高血圧」といいます。仮面高血圧の診断は、家庭血圧の測定や、ABPM(ambulatory blood pressure monitoring)という24時間自由行動下血圧測定によって行っています。ABPMという名前は皆さん、ご存知でしたか?血圧計を付けたままで、一日いつものように活動していただきます。決まった時間ごとに、通常の血圧計のように空気圧がかかり、血圧を測定し、データを取っていきます。もちろん、就寝中にも同じように測定しますので、敏感な方は気になって眠れない、ということもあります。でも、刻々変動する血圧をチェックするためには優れた方法です。
 仮面高血圧の方は、健診や医療機関では血圧は正常とされ、自分でもそう思い込んで高血圧が放置されがちです。そのまま気づかずにいると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気を引き起こすことになりかねません。
 仮面高血圧は時間帯によって3つに分けて考えることができます。

朝の仮面高血圧

 通常は、血圧は活動している昼間に高く、夕方から夜にかけて下がります。そして、就寝中の早朝から目を覚ます時間に向かって活動の準備のために血圧は高くなっていきます。しかし、なかには目覚める頃から急激に高くなるタイプがあります。原因としては、前日の深酒、運動のし過ぎ、不眠、睡眠時無呼吸症候群、自律神経のバランスの乱れ、朝の寒さなど環境要因、などが挙げられます。また、血圧の薬を使っている方でも、朝方に薬の効果が不十分になっているという可能性もあります。

昼の仮面高血圧

 日中の様々なストレス、家庭や職場のストレスが関与している可能性があります。また、喫煙、受動喫煙、塩分の取りすぎ、カリウムの不足なども考えられます。ストレスをどのように測定することはなかなか難しいのですが、シフト業務の方、仕事の負荷と報酬が見合っていないと感じている方、ワーカホリック気味の方に仮面高血圧が多いと言われています。ストレスが多い生活をしている人は、酒やたばこが多くなったり、運動不足、不眠など不健康な生活習慣になりがちです。タバコは本人にとってリスクであることは良く知られていますが、家庭や職場などで受動喫煙にさらされていた女性はそうでない人に比べると収縮期血圧が3~4mmHg高いことが報告されており、周りの環境も重要です。女性は男性よりもアルコールによって血圧が上がりやすいことにも気をつけましょう。

夜の仮面高血圧

 眠っているときの血圧は通常測ることができないのですが、夜間の高血圧はとても危険であることがわかってきています。
 不眠、睡眠時無呼吸症候群、夜間のトイレ、うつ病、慢性的な腎臓の病気、塩分のとりすぎ、自律神経のバランスが悪い、糖代謝異常などが原因として考えられます。

仮面高血圧は、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高い

 診察室で測った血圧が正常とされる人でも、そのうちの10~15%は仮面高血圧であるといわれています。若年から中年にかけて、仮面高血圧だった人は5~10年後に本物の高血圧症になるリスクは、そうでない人の2倍とも言われています。また、仮面高血圧だと、正常な人と比べて心筋梗塞や脳卒中が起こるリスクが2~3倍高くなります。

 まとめると、仮面高血圧になるリスクの高いのは、主に以下のような人です。

  • 睡眠時間が短い人
  • 睡眠時無呼吸がある人
  • 喫煙する人、受動喫煙を受けている人
  • 習慣的にあるアルコールをたくさん飲む人
  • 職場や家庭でストレスが大きい人
  • 塩分をたくさん摂る人
  • 日中身体活動が大きい人
  • 肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病の人
  • 高血圧の治療中の人
  • 腎臓が悪い人
    など

 以上のようなタイプに当てはまる人は、健診などでの血圧が正常でも家庭で血圧を測ってみる必要があります。家庭血圧は、朝3回、夜3回を2日以上測定し、125~135/75~85mmHgの場合(高齢者は135/85mmHg)、仮面高血圧の可能性が高いことになります。

血圧の正しい測り方

 血圧の測り方は意外に注意が必要です。
(1)まず、腕帯を上腕(肘より上)に巻きましょう。セーターなど厚手の洋服の上はNGです。指1本入る程度にきっちと巻きます。肘関節をまたいで巻くのもNGです。
(2)腕帯に目印があり、ここを上に……などの表示があれば守ってください。場所がずれると正確に測れません。
(3)腕の高さは心臓の高さです。腕の下に台を置くなどしましょう。腕が心臓の位置よりも低いと数値が低く出ます。
(4)やせていて腕がとても細い人は、腕帯が狭いものを使用しましょう。
(5)右腕と左腕の血圧差が大きい場合は、交互に測定し、常に差があるようなら医師に相談しましょう。
(6)血圧の値は測るたびに異なることがあります。3回測って、だんだん低くなる人、バラバラな人など。2~3回測って平均値を取ることもありますが、正確に測っている限り、どの血圧もあなたの血圧です。自分の傾向を把握したら、1回でもかまいません。
(7)早朝血圧は、起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前が原則です。
(8)日中や就寝前の測定時刻には、はっきりした決まりはありません。チャンスがあれば、定期的に測定してみましょう。
(9)頭痛、めまいなど、何か症状があるときにもチャンスがあれば測定してみましょう。
 家庭用血圧計には、いろいろなタイプが市販されています。できるだけ正確に測るという意味からは、上腕に腕帯を巻いて測るタイプが適しています。日々、習慣的に測ることが大事なので、医療機関での測定値と比較することで機器の特徴をつかんでいれば、自分の使いやすいもの・記録しやすいものでかまいません。

 ときどき訪れる医療機関の血圧よりも、日々の生活の中での血圧の方が、より重要です。血圧を見ながら、生活習慣やストレスのコントロールにも役立てていきましょう。

<参考>
Recognition and management of masked hypertension: A review and novel approach.
Yano Y, Bakris GL.
J Am Soc Hypertens. 2013 May-Jun;7(3):244-52. doi: 10.1016/j.jash.2013.02.002. Epub 2013 Mar 21.

http://www.jikei-kidneyht.jp/care/pdf/5_3.pdf

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。