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空腹時血糖値が正常でも油断は禁物! 「食後高血糖」が増加中

空腹時血糖値が正常でも油断は禁物! 「食後高血糖」が増加中

 空腹時の血糖値は正常なのに、食後に急激に血糖値が上昇する「食後高血糖」の人が増えています。一般的な健診では見つかりにくいため「隠れ糖尿病」とも呼ばれ、すでに糖尿病の一歩手前の状態です。過去1~2か月の血糖の状態を反映するヘモグロビンA1cの値から隠れ糖尿病を見つけることができるので、値が高い人は食生活の見直しや運動を行って血糖値の改善を目指しましょう。

健診では正常値でも食後に血糖値が上がる人が多い

 「平成23年国民健康・栄養調査報告(厚労省)」によると、糖尿病が「強く疑われる人」は男性の15.7%、女性の7.6%。「予備群」は男性の17.3%、女性の15.4%。合わせて男性の33.0%、女性の23.0%が糖尿病かその予備群であることが示されました(いずれも20歳以上の男女を対象)。
 成人男性の3人に1人、成人女性の4~5人に1人が「糖尿病とその予備群」であり、糖尿病は国民病ともいえます。それを見つけ出すために職場などの健康診断で一般的に行われるのは、8時間以上絶食して採血する「空腹時血糖検査」です。しかしこの検査では正常値であっても、食後に血糖値の上がる「食後高血糖」の人が日本人には多くいて、健診などでは見逃されがちです。これを放っておくと糖尿病になる危険が高いことから「隠れ糖尿病」といわれ、年々増えているとみられています。

【参照】 平成23年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)

●血糖値の判定基準(厚生労働省)

  • 特定保健指導レベル判定値
    空腹時血糖 100mg/dl以上 または HbA1c(NGSP値)5.6%以上
  • 受診勧奨判定値
    空腹時血糖 126mg/dl以上 または HbA1c(NGSP値)6.5%以上
  • メタボリックシンドローム判定値 空腹時血糖 110mg/dl以上
    空腹時血糖 126mg/dl以上 または HbA1c(NGSP値)6.5%以上
    ただし、空腹時血糖の値が適切に得られない場合は、HbA1c(NGSP値)6.0%以上
    HbA1c(NGSP値)6.0%は、空腹時血糖110mg/dlに相当する値と考えられている>

 食事で摂取したごはんやパン、めん類、イモ類、果物などの炭水化物(糖質)は小腸でブドウ糖に分解されます。そのブドウ糖が血液に入って全身を巡っているのが血糖です。血糖値は食後に高くなりますが、それを一定範囲に保つために膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンが重要な働きをし、食後約2時間以内には正常な血糖値に戻ります。ところが、何らかの原因でインスリンが足りないあるいは働きが悪いと食後高血糖の状態になり、これが続いてしまうと糖尿病と診断されます。

糖尿病の前段階だが、血管壁への障害は始まっている

 糖尿病で恐ろしいのは合併症です。糖尿病の3大合併症といわれる「糖尿病腎症」「糖尿病網膜症」「糖尿病神経障害」は主に細い血管の障害から起こります。しかし最近は、大きな血管がダメージを受けて心筋梗塞や狭心症、脳卒中などが起こる「大血管症」にも糖尿病が深くかかわっていることがわかってきました。
 食後2~3時間たっても血糖が下がらない食後高血糖状態は、糖尿病の前段階ともいえる状態ですが、血管壁への障害はすでに始まっています。空腹時血糖だけでなく、HbA1cを測ることで、食後血糖の予測をつけて、糖尿病の早期発見をしようとしているところなのです。

自宅でもできる隠れ糖尿病のチェック

 隠れ糖尿病や糖尿病予備群は、薬局で販売されている「尿糖検査紙」を使ってチェックすることができます。夕食にごはんなど炭水化物を多めにとり、2時間後に検査紙に尿をかけて検査紙の色の変化をみるのです。このチェックで糖尿病かどうかを判断することはできませんが、その可能性をふるい分けるには有効とされています。検査紙の色の変化が大きくて気になるようなら、専門的な検査をぜひ受けてください。
 メタボ健診(特定健康診査)では、糖尿病予備群の発見を重要視されています。高血糖の検査は空腹時血糖値をみますが、食後高血糖をみつけ出せるヘモグロビンA1cの検査も判定に使われています。メタボ健診で「特定保健指導」の対象になった場合は、積極的に指導を受けて、運動不足や食生活の改善に取り組むようにしましょう。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。