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収縮期血圧と拡張期血圧、どちらが大事?

収縮期血圧と拡張期血圧、どちらが大事?

血圧の測定では、「収縮期血圧140mmHg以上」もしくは、「拡張期血圧90mmHg以上」で高血圧と診断されます。「収縮期が高いけれど、拡張期は低いので大丈夫」と思っているかもしれませんが、実はそうではありません。また、医療機関や健診などで測定すると正常なのに家庭で測定すると高値になることがあります。その逆もあります。血圧はなかなか奥深いのです。

遺伝+不適切な生活習慣の積み重ねで起こる高血圧

日本には患者が約4,000万人もいると推定されている高血圧。日本高血圧学会が定めているその診断基準は、「収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上」とされています。一般的には、最高血圧が高いことを気にする場合が多いようですが、最低血圧にも注意を払わなければいけません。

血圧とは、血液が血管の壁を押す圧力のこと。心臓が収縮して血液を送り出すとき血圧は最も高くなり(収縮期血圧)、心臓が拡張すると全身を巡ってきた血液は心臓に戻り、血圧は最も低くなります(拡張期血圧)。血圧を決める主な要因は大きく5つに分けることができます。(1)心拍出量、(2)末梢血管抵抗、(3)循環血液量、(4)血液の粘着度、(5)大動脈の弾力です。心拍出量は心臓が体に血液を送り出す量、末梢血管抵抗は、細い血管の広がりにくさ、循環血液量は全身に流れている血液量、血液の粘度は、ベタベタして流れにくいこと、大動脈の弾力とは太い血管の柔らかさです。

こうした要因は、動脈硬化による血管の硬さ、血管を収縮あるいは拡張させる物質の増減、自律神経の働きによって、変動していきます。簡単に見えて、血圧は、総合的に循環系の健康度を測定する、とても重要な指標なのです。

収縮期血圧と拡張期血圧のどちらが、心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)に関係するのか、今まで多くの研究がなされてきました。血圧は、民族による差がある疾患なので、海外のデータをそのまま用いるときには注意しなくてはいけませんが、米国のフラミンガム研究といわれる有名な研究では、両方とも大事、とされています。

「収縮期血圧と拡張期血圧」や「脈圧と平均血圧」の組み合わせで評価

収縮期血圧と拡張期血圧の差を脈圧といいます。また、収縮期血圧x1/3+拡張期血圧x2/3を平均血圧といいます。1990年代には、「脈圧が、心血管疾患のリスクに強く関係する」と言われたこともありました。

けれども、収縮期血圧は、年齢とともに上昇する傾向があるのに対し、拡張期血圧は、大動脈が硬くなり進展性が少なくなるので、末梢血管抵抗を相殺してしまい、かえって低くなる傾向があることがわかってきました。

したがって、現在のところ、収縮期血圧あるいは拡張期血圧単独よりも、収縮期血圧と拡張期血圧、あるいは脈圧と平均血圧という合わせた指標が心血管疾患のリスク評価に優れていると考えられており、それは性差、年齢によらないと言われています。

血圧と肥満の関係は?

高血圧や肥満は、心血管疾患の重要な危険因子です。また肥満は高血圧になりやすいとも言われています。けれども、肥満にもリンゴ型肥満と洋ナシ型肥満があり、同じ病態ではないこともわかっています。

欧米人よりも皮下脂肪が付きにくい日本人は、栄養を摂りすぎると内臓脂肪が増えやすい状態にあります。内臓脂肪が多くなりすぎると、血圧を上げる物質や炎症を引き起こす物質が増え、またその逆の作用をもつ物質は減ることが知られています。

一方、BMIは高すぎても低すぎても死亡率が上昇することが明らかになっており、適正な体重を維持することが健康には大事なことがわかっています。

やせていれば血圧が高くても大丈夫?

アジア太平洋諸国のデータ(the Asia Pacific Cohort Studies Collaboration :APCSC アジア人78%、女性41%)約42万人のメタ解析報告をご紹介します。これは、さまざまなBMIで収縮期血圧と心血管疾患、脳卒中、脳出血の関係を調べたものです。

このデータによれば、いずれのBMIでも収縮期血圧が高いほど、こうした病気になりやすいことが明らかになりました。つまり、やせていても血圧が高ければ病気になりやすいのです。むしろ高度な肥満の場合は、心血管疾患の場合は、血圧の影響よりも脂質や血糖の影響が大きい可能性があります。脳卒中のうち特に脳出血は、血圧の関与が大きいので、やせていても要注意です。日本人の場合、総摂取エネルギー(カロリー)が少なくてやせていても、塩分を多く摂る場合は、高血圧になっている人も多いので、十分に注意しましょう。

家庭で測る血圧が重要視されている

血圧は、収縮期も拡張期も両方大事であることがわかっていただけたでしょうか。でも、血圧が簡単に変動することは、みなさんもよくご存知ですね。血圧値は、医療機関や健診などで測ったときは正常でも、家庭や職場などで測ると高い数値が出ることがあります。これを「仮面高血圧」と言い、診察時に見逃されがちな危険性が指摘されています。このため日本高血圧学会では、今年新たに発行する治療ガイドラインの中で、家庭で測る血圧を重視することを打ち出す予定です。

家庭での血圧測定法は、できれば測定用のベルト(カフ)を腕に巻くタイプの家庭血圧計を使い、朝(起床後1時間以内・排尿後・朝食前)と晩(飲酒や入浴の直後は避け、寝る直前)にそれぞれ2回ずつ測ってその平均値をノートなどに記録しておくとよいでしょう。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。