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喫煙者は、生活習慣病のリスクが高い

喫煙者は、生活習慣病のリスクが高い

 喫煙は、動脈硬化を進行させる大きな原因です。1日の喫煙本数が多い人ほどメタボリックシンドロームを発症するリスクが高く、また糖尿病やがん、心筋梗塞などのリスクが高まることもわかっています。また、喫煙者の死亡率は、非喫煙者よりも高くなっています。とくには健診結果に異常がないという人も、今のうちにぜひ禁煙をしましょう。

中性脂肪や血糖を増やし善玉コレステロールを減らす

 平成25年の成人日本人の喫煙率は男性32.2%、女性10.5%で、この数年は男性、女性ともに、ほぼ横ばい状態です。男性の喫煙率は平成5年当時の59.8%から約半減したとはいえ、3人に1人は喫煙者という現状は、諸外国と比べてまだ高い割合だといわれています(日本たばこ産業株式会社調べ「2013年全国たばこ喫煙率調査」より)。
 なかなかたばこと縁を切れない多くの人たちも、喫煙が健康に良いはずがないことはよくご存じのはずです。例えば、メタボリックシンドローム(以下メタボ)についていえば、喫煙本数が多いほどメタボ発症のリスクが高く、「1日に31本以上」吸っている人は、たばこを吸わない人と比べると発症リスクが約1.6倍になるとの研究報告もあります。
  喫煙は動脈硬化を進行させる大きな要因であるとともに、脂質や糖の代謝に影響して中性脂肪や血糖を増やす一方、善玉コレステロールであるHDLコレステロールを減らす作用をもたらすためとみられています。
 さらに、喫煙による健康被害といえば、誰もが思いつくのは肺がんでしょう。しかし、肺だけでなく、喫煙は鼻、口、のど、食道、胃、肝臓、膵臓(すいぞう)、腎臓、尿路、子宮などのがん発症と、深い結びつきがあることがわかっています。さらに狭心症や心筋梗塞などを起こすリスクは3倍に、また、糖尿病は1.4倍、早産や自然流産の危険は1.2-1.8倍になると推計されています。そして喫煙者の総死亡率は男性1.55倍、女性1.89倍といわれています。どれも喫煙者が抱え込んでいるリスクの高さを表しています。

禁煙1週間ほどで体の依存は軽くなるが、心の依存は長引く

 そんな危険な喫煙はすぐにでもやめてほしいものですが、長年たばこを吸い続けてきた人が一朝一夕に禁煙できるかといえば、そんなにうまくはいかないのも周知のことです。これは単に意志の強弱の問題ではなく、たばこがもたらす依存性が禁煙を難しくしているのです。
 たばこの依存性には、体の依存と心の依存があるとされています。体の依存とは、たばこに含まれるニコチンによるものです。ニコチンが脳に作用して快感をもたらす経路をつくるため、禁煙して血液中のニコチンの量が少なくなると、イライラする、集中できない、不安になるなどの離脱症状が起こります。禁煙開始から3日目ごろに離脱症状が一番強くなり、これをうまく乗り切れば1週間くらいで離脱症状は軽くなってきます。
 離脱症状を乗り切るための工夫として、たばこを吸いたくなったら、冷たい水や熱いお茶を飲む、歯ブラシをくわえる、体を動かす、などで気持ちを紛らせるとよいようです。これらではうまくいかないようなら、市販の禁煙補助薬を利用する、禁煙外来の受診をおすすめします。
 一方、心の依存とは、一服するとイライラが解消される、気持ちが集中できるなどといった記憶から、同じような状況になったときに、たばこを吸いたくなってしまう状態です。体の依存より長期間残るといわれ、脱するのも簡単にはいかないようです。 心の持ちようの一つとして、禁煙するとどんな良いことがあるか、考えてみるということがあります。禁煙してすぐに実感できることは、「食事がおいしくなる」、「息切れしにくくなる」、「歩くのが楽になる」などがあげられます。さらに、喫煙のもたらすデメリットを思い起こすことも、禁煙を続けることに役立つとされます。
 「喫煙しているけれど、健診結果に異常はない」という人でも、喫煙を続けていれば遠からずその影響はあらわれるでしょう。ぜひ、今日から禁煙を目指して、行動を起こしてください。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。