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肉好き男性は、糖尿病になりやすい!?

肉好き男性は、糖尿病になりやすい!?

 1日に多くの肉類を食べる男性は、糖尿病の発症率が高いことがわかりました。とくに豚肉・牛肉を1日平均80g以上食べる男性の発症リスクは、食べない人の1.42倍。糖尿病の予防のために、肉類のとり方を見直しましょう。

牛肉・豚肉の摂取量が多い人は1.4倍のリスク

 予備群も含めると、日本には患者が約2,050万人もいると推計されている「糖尿病」(厚生労働省「平成24年国民健康・栄養調査」)。その約90%は、生活習慣が原因で発症する2型糖尿病です。原因となる生活習慣とは、食べ過ぎや運動不足、ストレスの多い生活など。以前から欧米の研究では、牛肉や豚肉(red meatと呼ばれる肉類)の摂取が多いと、糖尿病の発症リスクが高いことが報告されていました。昨年のJAMA(米国医師会雑誌では、26,357人の男性医療者、48,709人(1986~2006年)と74,077人(1991~2007年)の女性ナースのコホート研究で、赤肉をもともと多く食べていた人、そして経年で赤肉の摂取が増えてきた人が、糖尿病発症リスクが高いことが報告されています。(JAMA Intern Med. 2013 Jul 22;173(14):1328-35. doi: 10.1001/jamainternmed.2013.6633.Changes in red meat consumption and subsequent risk of type 2 diabetes mellitus: three cohorts of US men and women. Pan A1, Sun Q, Bernstein AM, Manson JE, Willett WC, Hu FB.)
 わが国の肉好き男性が糖尿病になりやすいことを明らかにしたのは、国立がん研究センターの研究班です。東北地方から沖縄にかけての全国11カ所の保健所管内に住む健康な中高年男女約6万4,000人を、平均約5年間追跡調査して、肉類の摂取量と糖尿病発症との関連を分析しました。

肉の成分がインスリンの分泌や働きに影響か?

 分析の結果、男性では、肉類全体の摂取量が最も多いグループ(1日平均108g)の糖尿病発症のリスクは、最も少ないグループ(同23g)より1.36倍高くなっていました。さらに種類別にみると牛肉と豚肉でこの傾向が強く、最も摂取量が多いグループ(同83g)の糖尿病発症リスクは、最も少ないグループ(同15g)より1.42倍高いという結果が出ました。
 ハム・ソーセージなどの加工肉や鶏肉では、摂取量と糖尿病発症との関連はみられませんでした。また、女性においても、肉類の摂取量と糖尿病発症には関連がみられなかったということです。
 牛肉や豚肉の摂取量が多いことが糖尿病発症のリスクを高める理由として、肉に含まれる鉄分や飽和脂肪酸、調理の過程で焼けこげた部分に含まれる物質などが、血糖値を調整するインスリンの分泌や働きに、悪影響を与えているのではないかと考えられています。
 インスリンとは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きをもっています。しかし、何らかの原因でインスリンの分泌や働きが低下すると、血糖値が高くなってしまいます(高血糖)。糖尿病とは、高血糖の状態が常に続く病気です。

日本人に欧米型の糖尿病が増加―肉の食べ方を見直しましょう

 食事などで摂取した糖質は体内で分解されてブドウ糖になり、生命維持や活動を行うためのエネルギー源となります。血糖値とは、血液中に含まれているブドウ糖の量のことです。人間の体には血糖値を一定の範囲に保つシステムが備わっており、インスリンをはじめとする、いろいろなホルモンによってコントロールされているのです。
 日本人を含むアジア人は、欧米人に比べてインスリンの分泌能力が低いとされており、それが糖尿病発症の大きな要因の一つとなっています。一方、欧米人には、極度な肥満からインスリンの働きが悪くなって、発症するタイプの糖尿病が多くみられます。前述した米国の研究報告でも、赤肉の摂取量が増えている人は、食事全体のカロリーが増加しており、体重も増えている傾向がありました。糖質の取り方に注目が集まっていますが、やはり総エネルギーや肉類の食べ方にも注意を向ける必要があります。
 牛肉や豚肉料理をよく食べる男性は、糖尿病の発症リスクを抑えるために、肉を食べる回数や量を減らしたり、肉の代わりに魚を食べるなど、肉のとり方を見直してみましょう。また、今回の調査では、日本女性の肉類の取り方と糖尿病発症の関係は明らかではありませんでしたが、男女とも食生活は欧米化していますから、女性も十分注意してください。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。