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食べるのが速い人ほどBMIが高い

食べるのが速い人ほどBMIが高い

 「早食いの人は太りやすい」というのは本当のようで、食べるのが速い人ほどBMIが高いという関係が報告されています。早食いの人は、満腹感を覚える前に食べ過ぎる、食物繊維の摂取量が少ない、などの理由から肥満度が高くなりやすいと考えられます。食べ方を「遅くする」工夫で、肥満の改善を目指しましょう。

食べるのが速い人と遅い人では体重差が8㎏にも

 「早食いの人は太りやすい」とよく言われます。「イメージ的にはわかるけど、でもホント?」と思っている人に、ここで断言。「ホントです!!」
中年男性、中年女性、若年女性を対象に、食べる速さと肥満度を調べた調査研究で、その2つに明らかな関係がみられたことが報告されています。

 調査では、各年代の対象者を、食べる速さ別に「かなり速い・やや速い・ふつう・やや遅い・かなり遅い」の5つのグループに分け、それぞれのグループの肥満度をBMI(体格指数)で判定しました。BMIは「体重kg÷身長m÷身長m」で算出され、25以上で肥満と判定されます。
 その結果、3つの年代のすべてで、「食べるのが速い人ほどBMIが高く、遅い人ほどBMIは低い」という関係が、はっきりと出たのです。食べるのが「かなり速い人」と「かなり遅い人」の平均の体重差をみてみると、中年男性で約8㎏、中年女性で約7㎏、若年女性で約5㎏でした。

 また、厚生労働省の調査でも、「やせ・普通・肥満」の体形別に食べる速さを比べたところ、「食べるのが速い」と回答した人の割合は、男女ともに肥満のグループが最も高くなっています(平成21年国民健康・栄養調査より)。

満腹感を感じる前に食べ過ぎてしまう

 早食いが肥満につながるのは、なぜなのでしょう?
 その因果関係は完全に解明されていませんが、指摘されているのは脳の満腹中枢との関係です。満腹感は、食べた物が胃の中にたまると、その情報が脳に信号として送られることで感じます。しかし、情報が脳に届くまでには一定の時間がかかるので、食べるのが早いと、満腹だと感じる前に食べ過ぎてしまいやすいというのです。

 さらに、肥満予防に役立つ食物繊維の摂取量との関係も指摘されており、食べるのが速い人ほど少なく、遅い人ほど多いことがわかっています。野菜や果物、穀物、海藻などのように食物繊維が多い食材は、よく噛まなくては飲み込めないので、自然とゆっくり食べることになる、ということも理由の一つでしょう。

1口20回以上噛み、20分以上かけて食べる

 早食いにならないようにするためには、何よりもよく噛んで食べることです。1口20回以上噛み、1食20分以上かけて食べることを目安に、以下のような工夫をしてみてください。

(1) 食べるのに時間がかかるメニューを選ぶ

 鶏肉の手羽、骨つきカルビ、お頭つき・骨つきの魚などは、食べるときに手間が必要なので時間がかかります。また、軟らかいものより硬いもの、弾力のある食材の方が噛む時間が増えますので、ひき肉より厚めの肉、ごぼう、れんこん、いか、たこ、あわびなどを使った料理を。どんぶり物やめん類、お茶漬けなどは早食いになりやすいので要注意です。

(2) あわてて食べない

 数口食べたら、面倒でもはしやフォークをいったん置きましょう。また、「はし休め」という言葉があるように、メーンのおかず以外にも小鉢料理があると、食べる速さを抑えられます。

(3) 食物繊維の多い食材を使う

食物繊維が多いのは、きのこ類、海藻類のほか、野菜のなかでもにんじん、れんこん、ごぼうなどの根菜類です。ご飯は玄米や5分づき米、7分づき米にしたり、五穀米や雑穀入りご飯にすると、食物繊維の量がアップします。

 なお、厚生労働省の検討会では、一口30回噛む習慣を勧める「噛ミング30(カミングサンマル)」を提唱しています。
 30回噛むのはなかなか実践できないと思いますが、意識的にしっかり噛んで、ゆっくり食べることは、体重のコントロールに有効な可能性があります。ぜひ、できることから始めてください。

【参考文献】

安藤雄一ら。「ゆっくりとよく噛んで食べること」は肥満予防につながるか? ヘルスサイエンス・ヘルスケア 2008;8(2):54-63

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荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。