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尿たんぱく陽性だと、腎臓に異常の可能性が

尿たんぱく陽性だと、腎臓に異常の可能性が

尿たんぱくの検査の目的は、「慢性腎臓病(CKD)」の早期発見です。結果が「陽性(+)」ならば、腎機能の異常が疑われます。CKDが進行すると、人工透析治療が必要になるだけでなく、心筋梗塞の発症リスクも高くなるといわれています。腎臓に負担をかけないように、食生活を改善し、肥満やメタボの解消に努めましょう。

健康なら、尿中にはたんぱく質は微量しか出ないはず

一般の健康診断や特定健康診査(メタボ健診)では、必ず行われる尿検査。その検査項目の1つが「尿たんぱく」です。尿の中にたんぱく質が含まれているかどうかを調べるもので、「慢性腎臓病(CKD)」の早期発見に役立ちます。

腎臓は腰より少し上の背中側に左右1つずつあり、1つの大きさは握りこぶしほどです。腎臓は、老廃物を体から出す、血圧を調整する、赤血球を作る、体の水分や電解質の調節をする、骨を作る、などのさまざまな役目を担っています。

健康な人の尿には、一般的にはたんぱく質はほとんど出てきません。高熱や激しい運動をした際に一時的にたんぱく尿が陽性になることもありますが、これはあまり問題になりません。何度か続けてたんぱく尿が認められる場合には、検査が必要になります。

たんぱく尿の原因には、病的なたんぱく質がたくさん作られ、腎臓の処理能力を超えてしまった場合や、腎臓に異常があってたんぱく質が漏れてしまう、あるいは再吸収されなくなる場合、そのほか尿路結石、膀胱炎、月経血の混入などの場合があります。尿たんぱく陽性と判定されたときには、尿の再検査と採血検査で、腎機能や原因となる病気の有無を調べることが大切です。

慢性腎臓病になると脳卒中や心筋梗塞の危険が高まる

腎臓の働きになんらかの異常があると、血液をろ過する能力が低下し、不要な老廃物を取り除ききれなくなります。

この状態が長く続いて起こるのが、慢性腎臓病(CKD)です。慢性腎臓病になると、脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気が引き起こされる危険が高まります。さらに、慢性腎臓病が進行すると腎臓が機能しなくなる腎不全に陥り、生命を維持するために人工透析や腎臓移植などが必要になります。

慢性腎臓病にはほとんど自覚症状がないため、異常に気づかなかったり、放置されたりしがちです。病気が進行すると疲れ、めまい、貧血、むくみなどの症状があらわれてきますが、そのころには腎不全の段階にまで進んでいた、ということにもなりかねません。そのため、病気の早期発見・早期治療が重要なのです。

尿検査では、尿中のたんぱく質の濃度によって「陰性(-)」「弱陽性(±)」「陽性(1+、2+、3+)」などと判定されます。弱陽性は再検査が必要、陽性は医療機関への受診が必要です。また、尿たんぱくが陰性であっても腎機能が低下している場合もあります。むくみ、貧血、だるさなどがある場合は念のために血液検査をしてください。

慢性腎臓病の診断には、血液を調べる血清クレアチニン検査が行われます。クレアチニンは老廃物の一種で、腎機能が低下していると血液中での量が増えます。腎機能はeGFR(推算糸球体濾過量)を指標にして判断されますが、性や年齢とクレアチニン値の組み合わせで決定されます。同じクレアチニン値であっても女性は男性よりもeGFRが低くなります。特に高齢女性の場合は注意が必要です。

不適切な生活習慣がリスクを高める

腎臓の機能低下は、いろいろな病気が原因で起こります。とくに高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、肥満などがある人や、喫煙者、家族に腎臓病患者がいる人などは注意が必要とされます。

検査の結果が尿たんぱく「陽性」、あるいは今まで複数回「弱陽性」の場合は、必ず再検査を受け、適切な治療を行うとともに、次のような生活習慣の改善も心がけてください。

  • 塩分の多い食事、味付けの濃い食事を控える
  • 肉類などたんぱく質をとり過ぎない
  • 肥満の予防・解消のため、食べ過ぎを控え、適度な運動習慣をつくる
  • 禁煙する

糖尿病の方は尿たんぱくよりも感度が高い「尿アルブミン」を調べたほうがよいでしょう。糖尿病の場合は、クレアチニン値がそれほど高くなくても、重度な腎機能障害となっている場合が多いです。腎障害がある程度進行してしまうと、後戻りができません。早く気づいて、早めに具体的なアクションをとりましょう。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。