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禁煙大成功! ……でもメタボになっちゃった!?

禁煙大成功! ……でもメタボになっちゃった!?

 たばこは動脈硬化を進めてメタボを悪化させるだけでなく、肺の病気やがんの原因にもなることがわかっており、禁煙のメリットはとても大きいといえます。しかし、禁煙すると口さみしさやストレスなどから太ってしまう場合も。以前はメタボでなかった人も、体重の増加や血糖値、中性脂肪値の上昇などに注意が必要です。
 ここでは、Aさん(50代男性)の事例をもとに、禁煙後に気をつけたいポイントを紹介します。

たばこの代わりに、食べる量が増えてしまった!

 58歳のAさんは、喫煙歴38年のヘビースモーカー。たばこの値上げもなんのその、1日20本吸う毎日でしたが、メタボ判定を受けたことはありませんでした。
 そんなAさんがとうとう禁煙を始めたのは、息子夫婦が子どもを授かったことがきっかけでした。副流煙によって、妊娠中の嫁や生まれてくる初孫に悪影響があってはいけないと、一念発起して禁煙外来を受診したのです。
 禁煙の意志はゆるがず、3カ月後に無事「卒煙」しましたが、ストレスや口さみしさから、つい間食してしまうように。また、ごはんがおいしく感じられ、食事の量も増えてしまいました。
 その結果、最近受けた健診では体重が昨年度より3kg増えており、BMIが25以上になってしまったAさん。高血糖も指摘され、メタボリックシンドロームと判定されてしまいました。

喫煙はさまざまな病気の原因に。一日も早く禁煙を

 Aさんが禁煙したことは、健康のためにはとてもすばらしいことです。
 喫煙は、たばこに含まれる有害物質であるニコチンが血圧を上昇させたり、煙に含まれる一酸化炭素が血管の壁を傷つけるなどして、動脈硬化を進行させます。動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞などの最大の危険因子です。
 糖尿病や高血圧、脂質異常症があると動脈硬化がさらに進むため、特定健康診査(メタボ健診)では、血糖や血圧、中性脂肪などの値を調べるとともに、喫煙歴の有無を確認します。
 さらに、喫煙が肺がんをはじめとする各種がんや、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」などの呼吸器の病気の発症リスクを上昇させることもわかっていますが、禁煙すれば、その時点からそれらの病気のリスクは低下していきます。Aさんのように何十年もたばこを吸っていた人でも同様です。
 また、Aさんが危惧したとおり、たばこの煙は妊娠中の女性の流産や早産の原因となりますし、子どもは大人よりも身体機能の発達が未熟なため、受動喫煙によって呼吸器障害や中耳炎などの病気を引き起こすおそれもあります。周囲に妊娠中の女性や子どもがいる人は、1日でも早く禁煙すべきです。

 しかし、Aさんのように禁煙すると太ってしまう人は多いようで、禁煙後に体重が平均で2kgから3kg増えるという調査があります。
 その原因は、禁煙によるストレスの影響や、口さみしく感じることのほか、たばこに含まれるニコチンによって鈍っていた味覚や食欲が戻るためといわれています。
 禁煙によるメリットのほうが大きいことに変わりはありませんが、食べたいだけ食べてしまうと、メタボになってしまいます。禁煙後しばらくは食事の量に気を配ったり、運動をして消費エネルギー量を増やしたりして、太らないように注意しましょう。
 なお、禁煙後に体重が増えた人の多くは、1年で元の体形に戻っているという報告もあります。

喫煙歴のある人は肺機能も調べておこう

 肺の生活習慣病といわれるCOPDは、治療せずにいると呼吸困難を起こし、命にかかわることもある恐ろしい病気です。
 特定健康診査では肺機能までは調べないので、喫煙歴のある人は人間ドックなどで肺機能の検査を受けておきましょう。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。