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食事はいつも麺類やカレー、ファストフード。やせててもNG!?

食事はいつも麺類やカレー、ファストフード。やせててもNG!?

 体形や年齢によらず、高塩分の食生活や遺伝的な要因で高血圧になることがあります。高血圧は心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めるので、肥満でなくても、食生活の改善や節酒・禁煙などの血圧対策が必要です。
 ここでは、Fさん(40代男性)の事例をもとに、やせている人の高血圧予防と対策のポイントを紹介します。

太らなければ何を食べても大丈夫、と思っていたら…

 忙しい業務の合間に、朝はコーヒーだけ、昼はファストフードなどをササッと食べている40代男性のFさん。あまり食にこだわりがなく、夜もカレーや丼物など、単品だけで済ませることがほとんどです。
 しかし、BMI(体格指数:体重kg÷身長m÷身長m)では20前後をキープしており、太ったことがないために、これまで食生活を気にしたことがありません。
 たばこもお酒も大好きで、友人から「将来メタボになるよ」と言われても聞き流していましたが、特定健康診査(メタボ健診)を受けたところ血圧が高く、「要再検査」となってしまいました。収縮期血圧が140mmHgを超えており、生活習慣を改善するように言われてしまいました。

肥満でないからといって安心できない

 メタボリックシンドロームに焦点を絞った特定健康診断・特定健康指導は、「肥満」があることを前提にしています。肥満の指標としては、BMIとへそ周囲径が用いられており、内臓脂肪に着目した診断基準を用いています。内臓脂肪からさまざまな物質が分泌され、高血圧、高脂血症、糖代謝異常を起こしやすく、そうした病気が重なると心筋梗塞や脳卒中などの危険が増すことは何度も紹介してきました。
 では、肥満でない人は、健康のリスクが低いのでしょうか。
 Sasazukiらは、日本で行われている7つのコホート研究※をまとめ、BMIと死因に関する報告をしています。男性約16万人、女性19万人を平均12.5年追いかけた調査です(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 予防研究グループ「肥満指数(BMI)と死亡リスク」参照)。
 それによれば、喫煙、飲酒、糖尿病や高血圧の既往、運動を調整した場合、BMIと死亡率の関係は、Uカーブを描き、低くても高くても死亡率が高くなることがわかりました。一番死亡率が低いのはBMI値が21~27でした。海外では、25くらいからリスクが上がると報告されているので、日本人の場合、“ちょい太り”くらいまではあまりリスクが高くならないことがわかります。

 やせている男性はがん、心臓疾患、心血管疾患の全てのリスクが高くなっています。やせている男性は喫煙率が高いことが報告されており、たばこと関係する食道がん、COPDなどの病気が多いのです。一方、やせている女性は、心臓疾患、心血管疾患のリスクが高くなりますが、がんはBMIにはあまり関係していませんでした。女性の喫煙率が低いこともその理由のひとつでしょう。
 なぜ、BMIが低い人の死亡率が高いのかについては、いろいろな説があります。ひとつは病気のためにやせてしまっている、というものです。ただ、海外の研究では、病気による体重減少という原因を除いても、やせている人の死亡率が高い、という報告もあります。
 栄養状態が悪い、免疫力が弱い、などもよく言われる原因ですが、血管壁が弱いので、脳出血を起こしやすいのではないか、との説もあります

 重要なことは、肥満を原因としない高血圧、糖尿病、脂質異常症があるので、「太っていないから、私は安心」と思い込まないことです。日本人はわずかな肥満に対しても膵臓から出るインスリンが枯渇しやすいと言われており、日本人の糖尿病の方の多くは太っていません。
 また、高血圧も肥満とは関係ない家族性高血圧、内分泌の病気や血管の病気による二次性高血圧などにも注意しなくてはいけません。

※コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

やせていても、血圧が高いと心筋梗塞や脳卒中を発症しやすい

 実はFさんの両親とも高血圧、父方の祖父も高血圧で、祖父は脳卒中で亡くなっています。思い返すと入社時にも境界型高血圧と言われており、家族性の高血圧の可能性があると言われていました。
 Kadotaらの報告では、やせていても高血圧、糖代謝異常、脂質異常などが重なれば、メタボの人のように心血管疾患のリスクが上がることがわかっています。特に長い期間、こうした病気にさらされている場合は、蓄積効果として更にリスクが高まってしまいます。
 Fさんのように、偏った食生活を続けている人や喫煙習慣のある人は、高血圧だけでなく高血糖や脂質異常になるおそれがあります。それらのリスクが重なると、さらに循環器疾患の発症率が上がることがわかっているので、早めに対策をとりましょう。

食事は塩分を控えて野菜の多いメニューに。禁煙・節酒にも努めよう

 高血圧対策としては、太っている人ではまず減量を行いますが、やせている人の場合、塩分の摂取を控えることを重点的に行います。
 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2015年版」では、1日の塩分摂取量の目標値を「男性8.0g未満、女性7.0g未満」としており、これまでの「男性9.0g未満、女性7.5g未満」よりも厳しくなりました。1日の塩分摂取量を1g減らすと、血圧を1mmHg下げることができるといわれているので、できるだけ減塩に努めましょう。

 外食は一般的に味付けが濃く、1食で1日分の塩分摂取目標量を上回ってしまうことがあります。できるだけ手作りを心がけるか、コンビニなどで塩分量が少ないもの、野菜の多いメニューを選びましょう。野菜やくだものは、血圧を下げる働きのあるカリウムやマグネシウム、カルシウムなどを多く含んでいます。
 外食をする場合は、単品のみのメニューを控え、野菜のおかずのついた定食で、塩分の多いもの(汁物や漬物など)を残すとよいでしょう。麺類も野菜の多いものを選んでスープを半分残すようにしましょう。
 また、喫煙や多量の飲酒は血圧上昇につながります。食生活の改善と同時に、禁煙と節酒に努めましょう。

【参考文献】
Kadota A, et al.; NIPPON DATA Research Group. Relationship between metabolic risk factor clustering and cardiovascular mortality stratified by high blood glucose and obesity: NIPPON DATA90, 1990-2000. Diabetes Care. 2007; 30: 1533-8.

Sasazuki S,et al.; Body mass index and mortality from all causes and major causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort studies.J Epidemiol. 2011;21(6):417-30.

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。