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健康な人には、ゆるめの糖質制限ダイエットがおすすめ

健康な人には、ゆるめの糖質制限ダイエットがおすすめ

 糖尿病の食事療法のひとつである糖質制限食は、肥満改善に効果があることからダイエットとして一般にも広まり人気です。 ここではKさん(30代前半男性)の事例をもとに、糖質制限とはどんなものなのか、糖質制限をする人が気をつけたいポイントを紹介します。

糖質制限ダイエットはカロリー制限よりハードルが低いはずが……

 最近太り始めたのが気になる30代前半の男性Kさん。健康で食欲旺盛な自分にはカロリー制限によるダイエットは無理と考え、糖質以外ほとんど制限のない糖質制限ダイエットに挑戦することに。
 Kさんは3食とも主食を抜いておかずをたくさんとるようにし、甘いものも絶ちました。好きな肉や卵を制限しなくても着実に体重が減るのではじめは楽勝と思ったものの、1カ月もたつとご飯や甘いものが無性に食べたくなり、どんぶり飯と甘いものをドカ食いしてあえなく挫折してしまいました。

糖質を制限すると、糖を脂肪に変えて蓄えるインスリンの分泌が抑えられる

 これまでダイエットといえばカロリー(エネルギー量)制限が主流でしたが、エネルギー量の計算が面倒、食べられる量が少なくストレスがたまるなど、継続が難しい人も多くいます。一方、近年人気の糖質制限ダイエットは、糖質の摂取を控えるほかは特に制限しなくてもやせられるというもの。糖尿病治療のための糖質制限食が肥満解消に役立つことから一般に広まりました。
 高血糖の状態が続くのが糖尿病ですが、最近は持続的な高血糖だけでなく食後高血糖や血糖値の大幅な上下動もよくないことがわかってきました。糖質制限食は糖質の摂取を抑えることで食後高血糖を防ぎ、血糖値の変動を小さくしようとするものです。栄養素のなかで血糖値を上げるのは糖質だけで、たんぱく質や脂質は血糖値を上げず、むしろ血糖値の上昇を抑えるといわれます。

 糖質制限食が肥満解消に役立つのは、インスリンと関係しています。血糖値が上昇するとそれを下げるためにインスリンが分泌されますが、インスリンには余った糖を脂肪に変えて蓄える働きがあるため、糖質を制限するとインスリンの分泌が抑えられ、太りにくいというわけです。

1日130g、1食40g程度のゆるめの糖質制限でも効果は明らか

 Kさんのように、食べ慣れたものを我慢するのが辛くなり、糖質制限が続かなかったという人はいるでしょう。また、いきすぎた糖質制限には弊害があることも報告されています。過去の研究結果をみると、糖質制限といっても糖質の上限・下限がバラバラであり、またカロリー制限や脂質制限を同時に行っているかについてもさまざまで、簡単に比較することができません。
 2008年のNew England Journal of Medicineに報告されたDIRECT(*)試験は、低脂肪食、地中海食、糖質制限食を2年間行い、比較した試験です。低脂肪食、地中海食は男性1800kcal、女性1500 kcalのカロリー制限があり、地中海食は果物、野菜、ナッツ、魚の摂取が推奨されています。糖質制限食は1日の糖質量を当初は20g、半年後からは120gにするというかなり厳しいもので、カロリーは制限されておらず、脂質はトランス脂肪酸や飽和脂肪酸(動物性脂肪)は避けること、となっていました。
 減量効果が一番高かったのは糖質制限食で、次が地中海食でした。
 自身も1型糖尿病であった米国のバーンスタイン医師は、1日130gの糖質量を推奨しており、治療の有効性を示しています。糖質量を下げすぎると、ケトン体が増えすぎるなどの問題が起こる可能性があるため、1食の糖質量を20g以下に下げないことも大切とされています。

 そこで、健康な人の糖質制限ダイエットでは、1日130g、1食40g程度の糖質制限をおすすめします。糖質は、米や小麦粉など主食に多く含まれています。また、ジャガイモやサツマイモなどのイモ類、果物、トウモロコシ、栗、れんこん、玉ねぎ、トマトなどにも含まれます。砂糖の入った酢飯や煮物、カレーのルーなどにも当然含まれています。また、練り物も砂糖が加えられているものが多いですし、低脂肪食の多くは加糖されています。野菜ジュースも果物が含まれていると意外に糖質が多い場合があります。日本酒、ワイン、ビールも焼酎やウイスキーなどの蒸留酒に比べると糖質が多くなります。

 1食40gの糖質を守るためには、上記のような食材に注意することになります。脂質に関しては、飽和脂肪酸は避け、不飽和脂肪酸でもオメガ3(亜麻仁油、青背の魚に多いEPAやDHA、しそ油など)、オメガ6(コーン油、べにばな油、大豆油など)、オメガ9(オリーブ油、なたね油など)の脂質をバランスよく摂ることがすすめられています。たんぱく質に関しては特に制限はありませんが、大豆たんぱくは植物性の性ホルモンとしての働きもあり、おすすめです。
 ゆるい糖質制限食が成功する理由の一つは、糖質制限を行っていると自然にカロリー制限も行われる点です。それほど厳しい食事制限をしているつもりがなくても、ウエスト周りがすっきりして、何やら若々しくなってくる人が多くいます。 ぜひ皆さんも、ゆるめの糖質制限ダイエットを試してみてください。

*Shai, Iris, et al. "Weight loss with a low-carbohydrate, Mediterranean, or low-fat diet." New England Journal of Medicine 359.3 (2008): 229-241.

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。