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空腹時血糖は低いのにHbA1cだけが高い 食後高血糖かも

空腹時血糖は低いのにHbA1cだけが高い 食後高血糖かも

 食後に血糖値が上がってなかなか下がらない「食後高血糖」は、糖尿病一歩手前の状態。空腹時血糖は低くても、HbA1cが高めの場合は食後高血糖が疑われます。 ここではLさん(40代男性)の事例をもとに、食後高血糖とはなにか、食後高血糖予防のポイントなどを紹介します。

HbA1cは長期間の平均的な血糖値が推測でき、直前の食事に影響されない

 40代の男性Lさんは残業が多く、夕食が遅くなりがちです。そのため睡眠時間が不足気味で、朝食を抜くこともしばしば。メタボ健診の糖尿病検査では空腹時血糖は91mg/dlで「異常なし」でしたが、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が5.7%で、「食後高血糖の可能性」を指摘されました。

 空腹時血糖は食後10時間以上経った空腹時の血糖値のことで、この値が高い場合は糖尿病が進んでいる可能性があります。食後血糖は、その名の通り、食事をとった後の血糖のことです。ご飯、果物、イモ類などの糖質を摂ると、血液中のブドウ糖の量(血糖値)が上昇します。血糖の上昇を察知して、通常はすい臓からインスリンが分泌され、血糖値は低下します。しかし、インスリンの分泌が不十分だったり、インスリンが正常に働かない状況(インスリン抵抗性といいます)があると、血糖値が下がらず高い状態(高血糖)のままになります。
 HbA1cは赤血球中のヘモグロビンと血液中のブドウ糖が結合したもので、一度結合すると離れません。ヘモグロビンの寿命が1~2カ月なので、HbA1cは過去1~2カ月の血糖値の平均値の目安となります。つまり、血糖は食事や運動、ストレス、不眠などの影響で短時間に変動しますが、HbA1cは長期間の血糖を反映し、直前の食事などには影響を受けにくい指標となります。

 なお、日本のメタボリックシンドローム(以下、メタボ)の定義は海外基準とは若干異なり、内臓肥満があることが必要条件になっています。それに加えて血圧、脂質、血糖の異常が重なっている人をメタボと判定します。糖に関しては、空腹時血糖110mg/dl以上、あるいは空腹時血糖が適切に得られない場合は、HbA1c6.0%以上を判定基準としています。
 メタボ健診の保健指導判定値はさらに厳しく、空腹時血糖100mg/dl以上またはHbA1c5.6%以上と、より早期に介入することになっています。そして受診勧奨判定値は、空腹時血糖126mg/dlまたはHbA1c6.5%以上となっており、これは本物の糖尿病に近い判定値になっています。

HbA1cだけが高いのは「食後高血糖」の可能性が

 Lさんのように空腹時血糖は低くても、HbA1cが判定値を若干上回っている場合は「食後高血糖」の可能性があるので油断できません。
食後高血糖とは、食後血糖値が上がってなかなか下がらない状態で、放っておくと糖尿病になる危険性が高い、糖尿病の一歩手前の状態といえます。高血糖は血管や神経をサビさせ、コゲつかせますので、将来動脈硬化が進行して脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めることがわかっています。

 メタボで糖代謝異常がある人は、メタボでなく糖代謝異常がある人よりもさらに動脈硬化のリスクが高いと言われています。けれども日本人で糖尿病の人は、必ずしも太っていません。ですから、ともかくHbA1cが高めの人は、今のうちから生活習慣の見直しを行って食後高血糖、ひいては糖尿病を予防しましょう。

血糖値の上昇を抑える食べ方を身につけよう

 Lさんは夕食の時間が遅く、睡眠不足、朝食抜きにつながっていますが、いずれも血糖値を上げる原因です。次のような生活改善を行いましょう。

  • 糖質量に気をつけ、食べたらすぐに動く
    一回に食べる糖質量が多いと急激に血糖が高くなります。糖質量を分散したほうが血糖の変動が小さくなります。また、食後に動くことで血糖が筋肉に取り込まれ、血糖上昇を抑えることができます。
  • 夜9時以降の糖質摂取は控える
    夜9時以降に糖質を摂ると中性脂肪として蓄積されやすいので、食べる時刻も工夫しましょう。
  • 食物繊維、たんぱく質など糖質以外の食品を先に食べる
    野菜やきのこ、海藻など食物繊維の多い副菜、肉や魚などたんぱく源となる主菜、主食の順に食べると、糖質の吸収が緩やかになり、急激な血糖値の上昇が抑えられます。また、ビタミンB群は糖質の代謝に重要なので、それらを含むいろいろな食材を取り入れましょう。
  • 適度な睡眠をとる
    睡眠は、日中の心身の疲労を取り、傷んだ細胞を修復したり、免疫力を高めるなど、重要な役割をはたしていることがわかってきています。血糖のコントロールにも適切な睡眠が必要です。
    また、肥満の人は睡眠時無呼吸症候群(SAS)を伴っていることも多く、SASのある人は糖代謝異常を起こしやすいこともわかっています。睡眠時間とともに、質の良い睡眠をとっているかどうかにも注意してください。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。