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内臓脂肪は溜まりやすく減らしにくい、ってホント?

内臓脂肪は溜まりやすく減らしにくい、ってホント?

ウソです。
内臓脂肪は内臓の周りにある腸間膜にある脂肪細胞のことで、中味のほとんどは中性脂肪です。メタボの元凶とされる厄介者ですから、「いったん溜まってしまったら減らすのは難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、実はそうでもないのです。適度な運動を日常的に続けることで減らしやすいことがわかっています。メタボ対策で運動が強く提唱されるのはこのためです。

内臓脂肪は短期貯蔵庫、皮下脂肪は長期貯蔵庫

腸管から吸収された脂質はリポたんぱくに結合して、血管内を流れていき、血管内皮細胞で代謝され、血流から脂肪組織の中に脂肪酸として入り込みます。一方、糖質(グルコースや果糖)も脂肪細胞に取り込まれ、細胞の中でグリセロール3-リン酸が作られ、脂肪酸と結合することで中性脂肪が作られます。つまり、中性脂肪は、脂質と糖質両方を材料にして作られるのです。脂肪細胞は、中性脂肪の貯蔵庫ですが、皮下脂肪と内臓脂肪では働きが異なることがわかっています。内臓脂肪は短期貯蔵庫、皮下脂肪は長期貯蔵庫、と言われており、栄養過多の場合は肥満になりますし、栄養不足の場合は、ここからエネルギーを取り出して使うことができます。

また、肝臓は、自分自身で中性脂肪やコレステロールを作ることができると同時に、脂肪組織から放出された脂質を使って、リポたんぱくを再生産することもあり、脂質代謝には大きな役割を担っています。

肝臓細胞、骨格筋細胞、すい臓のβ細胞(インスリンを作る細胞)は、脂肪細胞ではありませんが、細胞の中に脂質を貯め込むことができ、ここに溜まった脂肪は「第三の脂肪」と言われています。細胞そのものがメタボになっているような状態なので、いろいろな病気の原因になることがわかってきています。

脂肪の貯蔵の順番は内臓脂肪、第三の脂肪、皮下脂肪、と言われていますが、まだ、わかっていないことがたくさんあります。

腸間膜に溜まった内臓脂肪は活性が高い

腸間膜というのは小腸を包んで支えている腹膜のことで、消化管に出入りする多くの血管が通っています。このため、ここに溜まった中性脂肪は活性が高く分解と合成が盛んで、溜まりやすいけれど減らしやすくもある、という特徴があるのです。ちなみに、お尻や太もも、おなかなどの皮下に溜まった中性脂肪のところは毛細血管が少し通っているだけなので、内臓脂肪ほど活性は高くありません。

腸間膜に溜まった活性の高い内臓脂肪からは遊離脂肪酸が多く作られ、それが腸間膜から肝臓に入る血管を通じて肝臓に流れ込み、脂質異常症や糖尿病が起こりやすくなります。また、内臓脂肪からは体に悪影響を与える生理活性物質が盛んに分泌。その一方で、よい影響を与える生理活性物質の産生が減って動脈硬化を加速させます。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。