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病院での測定で正常血圧でも安心できないことがある、ってホント?

病院での測定で正常血圧でも安心できないことがある、ってホント?

本当です。
病院や健診などで血圧を測ったら正常範囲だったのに、家庭や職場などで測ると高い数値になる人がいます。診察室ではまるで仮面をかぶって正常を装っているように見えることから、「仮面高血圧」と呼ばれます。診断からもれて放置されると脳卒中や心筋梗塞などを招きかねず、その危険性が指摘されています。

診察室では正常値だった人の10~15%が「仮面高血圧」

私たちの血圧値は、自律神経の働きにより1日のうちで常に変動しています。活動をしていない睡眠中は全身に多くの血液を循環させる必要がありませんから、副交感神経の働きで血圧は1日のうちで最も低くなります。そして朝、目が覚めると活動のために血流を盛んにしなければなりませんから、交感神経の働きが優位になって血圧が上がり、日中は血圧が最も高くなります。

このように、病院などで日中に血圧を測るだけでは血圧の実態がわかりにくいことと、家庭用血圧計が普及してきたこともあって、家庭で測る血圧が重要視されるようになりました。そこで危険性が指摘されるようになったのが、仮面高血圧です。

診察室での測定では正常とされる人の、10~15%は仮面高血圧であるといわれています。また、高血圧の治療を受けていて血圧が正常範囲にコントロールされているような人でも、その約30%が早朝などに血圧が上昇しているという指摘があります。そして、このような人たちでは、脳卒中や心筋梗塞を起こすリスクが正常な人より2~3倍高いこともわかっているのです。*1 *2

*1 Hara A, et al. Detection of silent cerebrovascular lesions in individuals with 'masked' and 'white-coat' hypertension by home blood pressure measurement: the Ohasama study. J Hypertens. 2009; 27: 1049-55.

*2 Franklin SS, et al. Masked hypertension: understanding its complexity. Eur Heart J. 2016 Nov 10. pii: ehw502

仮面高血圧には3つのタイプ

仮面高血圧には以下の3つのタイプがあります。

(1)早朝高血圧……睡眠中は正常血圧だったのに、目が覚める頃から急激に血圧が上がるタイプ。血管が障害されたり血栓(血の塊)ができやすくなったりして脳卒中や心筋梗塞を起こす危険性が高い。

(2)夜間高血圧……睡眠中も血圧が十分に下がらないか逆に高くなってしまうタイプ。高血圧が長い時間続くために血管や心臓への負担が大きくなり、脳卒中や心筋梗塞を起こしやすい。

(3)職場高血圧……早朝や夜間でも血圧は正常なのに、職場や家庭で仕事や家事・育児などをしているときだけ高血圧になる。ストレスが大きな原因とされている。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。