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収縮期血圧は高いけど拡張期血圧が低いから大丈夫…ではありません!

収縮期血圧は高いけど拡張期血圧が低いから大丈夫…ではありません!

 加齢とともに動脈硬化が進むと、高齢者では収縮期血圧(いわゆる「上の血圧」)が高くなり、拡張期血圧(「下の血圧」)が低くなる傾向が見られます。これは「(孤立性)収縮期高血圧」と呼ばれ、脳梗塞や心筋梗塞の強い危険因子とされています。

年をとるにしたがい「収縮期血圧」が高くなる

心臓が収縮して血液を心臓の出口にある大動脈に送り出すとき、血管壁にかかる圧力は最大になります。これが収縮期血圧です。この後、血液の逆流を防ぐために大動脈にある弁が閉じ、収縮していた心臓は拡張していきます。このときの血管壁への圧力は最小となり、これが拡張期血圧です。

心臓から送り出された血液を受け取った大動脈は、血液が末梢の血管へ一度に流れ出ないよう血液をためて膨らみます。しかし、老化により大動脈の弾力がなくなると血液をためることができず、一気に流れ出るので収縮期血圧は高くなり、一方で拡張期血圧は低くなるという現象が起こりがちになります。

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、診察室で測った場合は140/90mmHg以上は高血圧と診断されます(家庭血圧の場合は135/85mmHg以上)。収縮期140mmHg以上かつ拡張期90mmHg未満は「(孤立性)収縮期高血圧」と診断されます。

年齢によって異なる拡張期血圧の意義

米国のフラミンガム研究という有名な研究では、50歳未満の場合は拡張期血圧が高いと心血管イベント(心筋梗塞、狭心症、心不全など虚血性心疾患の発症等)は増えますが、高齢(60歳以上)になると、むしろ拡張期血圧が低いほうが心血管イベントが増える、と報告されています*1 *2。欧州で行われた同様の研究でも同じ傾向が報告されています。

また、家庭血圧においてもフィンランドのFinn-Home studyという研究で同様のことが認められ、135mmHg/85mmHgの高血圧群は正常群に比べて心血管イベントの発生リスクが2.13倍、孤立性収縮期高血圧は1.58倍でした。

*1 Franklin SS, et al. Does the relation of blood pressure to coronary heart disease risk change with aging?: the Framingham Heart Study. Circulation 2001; 103: 1245-9.

*2 Franklin SS, et al. Is pulse pressure useful in predicting risk for coronary heart disease?: the Framingham Heart Study. Circulation 1999; 100: 354-60.

動脈硬化はどうやったらわかるのか

拡張期血圧が下がるのは、大きな血管が硬くなった場合です。比較的簡単に調べる方法は頸動脈超音波検査で、食事制限も不要で痛みもありません。頸動脈の壁の厚さやプラークという血管内部にできた塊を見ることができます。

また、大動脈を含む「心臓(Cardio)から足首(Ankle)まで」の動脈(Vascular)の硬さを反映する指標(CAVI:Cardio Ankle Vascular Index)を血圧脈波検査で調べることもできます。

なお、大動脈弁閉鎖不全症という心臓の弁の障害でも拡張期血圧が下がることがあります。これは心音や心臓エコーによって診断をつけることができます。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。