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母子ともに危険な「妊娠高血圧症候群」。妊娠前から血圧のチェックを

母子ともに危険な「妊娠高血圧症候群」。妊娠前から血圧のチェックを

 妊娠高血圧症候群は、妊娠中に起こる病気のなかでも最も注意が必要とされています。胎児に血液を十分供給できず、早産や死産の原因になるほか、妊婦自身の命の危険にもつながりかねないためです。妊娠中はもちろん、妊娠前の女性も生活習慣を見直して高血圧を防ぐことが重要です。

妊娠中・分娩後の高血圧やたんぱく尿で診断

妊娠中期を過ぎて妊婦に高血圧やたんぱく尿、浮腫(ふしゅ=むくみ)などが起こるものはかつて、「妊娠中毒症」と呼ばれていました。その後、母体や胎児に直接影響を与えるのは高血圧であることがわかってきて、「妊娠高血圧症候群」という病名に変わりました。

妊娠高血圧症候群の診断は、血圧測定と尿検査が基本になります。妊娠20週以降から分娩後12週までに高血圧(140/90mmHg以上)がみられるか、または高血圧にたんぱく尿を伴っている場合に妊娠高血圧症候群と診断されます(なお、日本妊娠高血圧学会を中心として定義の見直しがされており、2017年度中の改訂が予定されています)。

胎児に十分な酸素や栄養が供給されず、さまざまな異常が起こる

妊娠高血圧症候群を発症しやすいのは、もともと糖尿病や高血圧、腎臓病などを持っている人です。ほかに、高年齢(40歳以上)や肥満、初産、以前に妊娠高血圧症候群になったことがある、多胎妊娠(双子、三つ子など)の人もリスクが高くなることがわかっています。

しかし、妊娠高血圧症候群の原因は明確にはなっていません。最近の研究では、妊娠初期に母体から胎児に酸素や栄養を供給する胎盤の血管の作られ方に異常が起こるため、という説があります。

妊娠高血圧症候群は妊娠32週を過ぎて起こることが多いのですが、それより前に起こる早発型の場合は重症化しやすいといわれています。子宮や胎盤での血流が悪くなり、胎児は栄養や酸素の不足から発育不全や機能不全、さらには胎児死亡も起こりえます。

妊婦にも、血圧上昇やたんぱく尿以外に、子癇(しかん)と呼ばれるけいれん発作や、HELLP症候群(赤血球が壊れる溶血、肝機能の悪化、血小板減少などが起こる)、常位胎盤早期剥離(胎盤が赤ちゃんが生まれる前に子宮の壁からはがれてしまう)なども起こるため、母子ともに危険な状態になることがあります。こうした異常でも自覚症状が少なく、妊婦健診で初めて、重症として見つかることも少なくありません。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。