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働き女子も気にしてほしい。見逃されがちな女性の病気

働き女子も気にしてほしい。見逃されがちな女性の病気

 日本では、企業で働く全従業員の約4割が女性です。働きながら妊娠・出産できるような制度が整ってきた一方で、半数以上の女性が女性特有の症状や病気に悩まされ、業務に支障などを感じています。女性の健康課題を理解しサポートする社会環境の整備が期待されますが、女性自身も正しい知識をもち、自分の健康を守りましょう。

月経随伴症状に半数以上の女性従業員が悩む

女性特有の健康課題や症状によって、勤務先で困った経験がある女性従業員は53%いるという、経済産業省のデータがあります。そのうち、73%が月経不順や月経痛、また44%が月経前症候群(PMS)などによるものでした。それらの月経随伴症状が原因となる、生活の質の低下や業務能率の低下に悩んでいても、休みをとったり業務の調整を相談したりしにくい女性は多いでしょう。

同資料では、月経随伴症状による1年間の社会経済的負担は、総計6,828億円にのぼると報告されており、個々人だけの問題にとどまらないことがわかります。また、内訳では約71.9%が労働損失、14.5%が市販薬(OTC医薬品)費用、13.6%が通院費用となっており、市販薬の鎮痛薬などで対処し、通院せず我慢している女性がほとんどのようです。

少産時代に特有の女性の健康問題

経済の発展とともに女性のライフスタイルが変化し、日本の女性は少産になりました。それにより、女性の生涯の月経回数は450~500回と、多産で妊娠と授乳を繰り返した時代の10倍近くにのぼると推測されています。

月経に伴う女性ホルモンの変動の影響で、女性の心身は大きな変化を頻繁に繰り返します。月経回数の多い現代女性には、月経随伴症状が増えているだけでなく、子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣のう腫、子宮がん、乳がんなど女性特有の病気も増えています。働きながら出産や育児、介護をこなす世代には特に負担が大きいといえます。

しかし、女性の健康課題の相談窓口やサポート体制、周囲の理解など、女性が働きやすい社会環境の整備は必ずしも良好とはいえないようです。従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む「健康経営」を推進する企業では、それらの女性の健康課題への対策に高い関心を寄せており、今後の取り組みが期待されます。

また、現在の定期健康診断の中心は「メタボ健診」ですが、働く女性にメタボ該当者は少なく、それどころか若い女性に危惧されているのは、低栄養や鉄欠乏性貧血の問題です。低栄養は本人の健康だけでなく、次世代への悪影響も懸念されていますし(「女性のやせ過ぎ・栄養不足は、生まれた子どもの生活習慣病を招く!?」 参照)、慢性的な貧血で気づかぬうちに心臓に負担がかかっていることもあります。さらに、膠原病(全身性エリテマトーデスや関節リウマチなど)や甲状腺の病気(橋本病やバセドウ病など)といった自己免疫疾患も、働き盛りの女性に多い病気です。環境整備とともに、性差や年齢に応じた検査内容の見直しが必要といえるでしょう。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。