文字サイズ

ストレスを「人生のスパイス」に

ストレスを「人生のスパイス」に

 現代社会では、ストレスをなくすことは不可能です。ストレスには「よいストレス」と「悪いストレス」があり、適度なストレスであれば、それをバネに頑張るエネルギーを生み出すことができます。ストレスを悪者と捉えず、「人生のスパイス」としたいものです。

「ストレス=悪者」とは限らない

 春は入学、就職、異動、引っ越しなどで環境が大きく変わり、ストレスを感じやすい季節です。ストレスがたまった状態が長く続くと、心身に影響が及んで病気になったり、最悪の場合は生命を脅かすこともあります。
 では、ストレスが全くなくなれば、私たちは健康で快適な生活を送ることができるのでしょうか? 実は、必ずしもそうではないのです。
 例えば、仕事が忙しいときには不思議と風邪をひかなかったり、重要な仕事を任されてやる気が湧いたり、目標や夢が自分を奮い立たせてくれたりします。「ストレス=悪者」と捉えられがちですが、これらの刺激は適度なストレスとなり、体の抵抗力を高めたり、心の成長を促してくれるのです。

「ストレス」という概念を提唱したハンス・セリエ博士は、ストレスは「人生のスパイス」と呼ぶことができるといっています。

「悪いストレス」を「よいストレス」に

 私たちの身の回りには、望む・望まないにかかわらず、ストレスの原因となるものがたくさん存在しています。ストレスをゼロにすることは困難ですし、ゼロにしようと気負うと、そのことがかえってストレスを招いてしまいます。
 ストレスに強い人とは、適度な「よいストレス」と、過度な「悪いストレス」を見極めて、悪いストレスをよいストレスに変換できる人です。

 よいストレスに変換する方法の一つが、物事の捉え方を見直すこと。仕事でミスをしたときに、「上司の評価が下がってしまう。自分はダメな人間だ…」と考えるのと、「誰でも失敗することはある。この失敗を次に生かそう」と考えるのとでは、受けるストレスの度合いが異なります。
 物事の捉え方には一人ひとり違いがありますが、ストレスを受けやすい人は物事を悪いほうへ考えやすいクセがあります。これを「認知のゆがみ」といい、次のようなパターンに分けられます。

「認知のゆがみ」の10パターン

全か無か 物事を「白か黒か」という両極端に分けて考える
一般化のしすぎ 一つよくないことが起こっただけでも、すべてだめだと考える
心のフィルター ちょっとしたことにこだわって、全体を悪く見る
マイナス思考 何でもないことやよいことも、悪いことにすり替える
結論の飛躍 確かな理由もないのに、物事を悪く捉えて結論を出す
拡大解釈と過小評価 自分の短所や失敗は大げさに考え、長所や成功を過小評価する
感情的決めつけ 自分の感情が、事実を証明する証拠であると考える
すべき思考 どんなことでも「~すべき」または「~すべきではない」と考える
レッテル貼り 「一般化のしすぎ」の極端なもの。小さなミスをしただけでも「自分はだめな人間」と思う
自己関連づけ よくないことが起こると、全て自分に責任があるように思う

 認知のゆがみを直すのは、簡単ではないかもしれません。しかし、自分にこのような物事の捉え方のクセがあることに気づくことが、ストレスを軽減し、気持ちを楽にする一歩となります。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。