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「心のかぜ」は他人ごとではない

「心のかぜ」は他人ごとではない

疲れがたまると、体の免疫力が低下し、かぜを引きやすくなります。うつ病は「心のかぜ」とも称され、心に疲れがたまりすぎたら、だれもが発症する可能性がある病気です。自分だけは大丈夫などと過信せず、正しく理解することが予防につながります。

増加傾向にある心の不調

近年、職場におけるストレスが拡大する傾向にあり、勤労者の6割を超える人が仕事に関する不安や強いストレスを感じている――と、前回でも紹介しました。つまり、心の健康問題は、多くの人にとって他人ごとではなくなっていると考えてよいでしょう。
さらに職場で起こる心の不調でもっとも多いのが「うつ病」です。うつ病が増加傾向にあることが医療機関への受診者数からもわかっています。厚生労働省の「患者調査」によると、1996年には20.7万人だったうつ病の患者数は、2011年には70.8万人と3倍以上に増えています。

うつ病が増えている第一の理由として、経済が不安定になり、生活そのものがおびやかされていることが挙げられます。競争社会のなかで、助け合いの気持ちが減少しているとも考えられるでしょう。こうした環境は、うつ病を引き起こす大きな要因になりかねません。
第二の理由として、うつ病に対する知識が世間に広く認知されるようになったため、自分がうつ病ではないかと疑って医療機関を受診する人が増えたことが挙げられるでしょう。

心の不調に早く気づいてこじらせない

一方、うつ病になってもためらいなく医療機関へ受診する人は、まだまた少ないと考えられ、統計上の患者数より実際の患者数がかなり多いのではと推測されています。厚生労働省でも、うつ病を極めて重要な健康問題としてとらえ、心の健康づくり、早期発見早期治療や、社会的支援が大切であるとして対策を進めています。

私たち一人ひとりも、ストレスをためすぎないこと、心の不調に早く気づいて、病気になる前に上手にコントロールすることが大切です。実際にうつ病といえるレベル至った人で、病気の知識があっても「自分がうつ病になるはずがない」と考えて、初期には放置してしまうことが少なくありません。
とくに、うつ病は、症状の特徴として「自分に価値がない」と感じて、「死にたい」という気持ちが起こってくることがあります。心のかぜとして、だれしもがかかることのある病気としてとらえると同時に、放置すると「自殺」に至ってしまうリスクをはらんだ病気であることも肝に銘じておく必要があるでしょう。心の不調は、他人ごとではなくだれにでも起こること、早めに対処しないとこじれて命にもかかわる病気に至る可能性もあることを忘れないでください。

うつ病チェック

ほとんど毎日、2週間以上、継続している項目をチェックしてください。
気持ちが沈む
毎日の活動に興味を失う。何も楽しめない

→上記のいずれかにチェックが入れば、下の質問に進んでください。
食欲の減退、または増加(著しい体重変化)
不眠、または睡眠過多
イライラする、または言動が鈍くなる
疲れやすいし、気力がわかない
無価値感、不適切な罪悪感
思考力や集中力の減退、決断できない
死にたいと、繰り返し思う

上記の項目に5つ以上チェックが入った場合は、うつ病の可能性があると考えられます。
(参考:アメリカ精神医学会のうつ病診断マニュアル『DSM-IV』)

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。