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怒りの感情はため込まず、相手への伝え方を工夫しよう

怒りの感情はため込まず、相手への伝え方を工夫しよう

周囲の人との良好なコミュニケーションは、あなたの心の健康を支えます。ところが、怒りの感情があるときは、その良好なコミュニケーションに水を差すことが多いため、「怒りは抑え込んだほうがよい」と思いがちです。でも、怒りは人間のもつ自然な感情の一つなので、否定したり、ためたりしていると、心の健康を損うことも。また、風通しのよい人間関係をつくるうえで、かえってマイナスになることもあります。

怒りは弱い段階で小出しに表す

怒りを表してはいけない、さらに怒りはよくない感情であると考える人もいます。しかし、怒りの感情をため込んでしまうと、突然、攻撃的な態度となって爆発しかねません。もともと自分の感情であった怒りを「相手のせい」と思うようになり、コントロールができなくなってしまうのです。本来、怒りを感じることがあるのは人間としてあたりまえの感情です。怒りを感じない人はいませんし、怒ること自体は悪いことではありません。ただし、怒りと攻撃とは別ものです。職場などでは怒りを上手に表す工夫が必要といえるでしょう。

攻撃的にならないためには、怒りがなるべく弱い段階で小出しに表現することです(「怒りの程度を把握する目安」参照)。弱い段階のほうが、自分の怒りを客観的に観察しやすいからです。怒りを感じたら、「何を怒っているのか/何が不愉快なのか」「相手に何を伝えたいのか」「どうしてほしいのか/何をどう変えてほしいのか」を自分に問いかけて整理してみましょう。そのうえで、相手に「どうしてほしいのか」を伝えるとよいでしょう。

自分を主語にして気持ちを伝える

攻撃的にならない表現方法として、自分を主語にして伝える方法があります。「私は、○○と感じている」「私は、○○という気持ちだ」などと、表現するのです。「私はイライラしている」「私は怒っている」と感情が自分のものであることが明確になります。

これに対し、「あなた」を主語にした表現だと相手に対して攻撃的になりがちです。「あなたのせいだ」「お前が悪い」と一方的にいわれたら、人はなかなか素直になれないものです。たとえば、「何度いったら(あなたは)わかるんだ!」というよりも、「(私は)何度か伝えているので、大切なこととして認識してほしいし、認識してくれないことに怒りも感じている」と伝えれば、相手も冷静に受け止めやすく自分を改めようという気持ちになりやすいでしょう。また、相手の行動になにか理由や原因があれば伝える余地が残され、よりよい関係を築くことにもつながります。

ただし、怒りを感じても「伝えない」ことも選択肢の一つであり、「伝えないほうがよい」こともあるでしょう。そんなときには、怒りの感情にとらわれず(「怒りを感じたとき、感情にとらわれないためのアドバイス」参照)、ほかのストレス解消法を試みることも対処法の一つです。

怒りの程度を把握する目安

  • 弱い
    嫌だ/怖い/好きではない/よくない/同意できない/残念だ/困った
  • 中程度
    腹立たしい/不愉快だ/反対だ/しゃくに障る/イライラする
  • 強い
    頭にくる/復讐してやる/ぶん殴ってやりたい/追い出してやりたい/はらわたが煮えくり返る

怒りを感じたとき、感情にとらわれないためのアドバイス

  • その場を離れる
  • 洗面所で手を洗うなど、体を動かしてみる
  • 深呼吸する
  • 紙に書き出してみる
  • 自分の気持ちをユーモアを交えて「川柳」などで表現してみる

など

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。