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心の免疫力を高める考え方について知っておこう

心の免疫力を高める考え方について知っておこう

ストレスが生じやすい考え方の背景には、物事を悪いほうへ捉えてしまうような「認知のゆがみ」があることが少なくありません。ストレスに押しつぶされそうに感じる前に、認知のゆがみがないかどうか、少し立ち止まって考えることで、ストレスに対応しやすいより柔軟な考え方ができるようになります。

ストレスが高じる前に認知のゆがみに気づこう

現実を客観的に見ているようでも、だれしも自分なりのフィルターを通して見ています。そうした自分なりのものの見方や捉え方「認知」を通して、なんとか現実に対処していこうとしているもの。しかし、ストレスが高まったり、心の元気度が落ちているときなどに、この自分なりの「認知」が凝り固まってしまうと、困難な状況に対応しきれなくなり「不適応」を起こすことにもなりかねません。つまり、ストレスが高まっているときは「認知のゆがみ」によって、さらにストレスを高じさせて悩みやつらい気持ちが増大してしまうのです。
緊張やイライラ、不安、憂うつな気持ちが生じたときは、自分の認知にゆがみがないかどうか少し立ち止まって考えてみましょう。

バランスのよい考え方でストレスに強くなろう

例えば、もともと「自分には能力がない」という「認知のゆがみ」をもっていた人でも、努力を払って仕事に適応しようとするものです。ところが、ミスやクレームなどのトラブルが重なってしまうと、「やっぱり自分はなにをやってもダメなんだ」という考え方に陥り、ぐるぐると悪い考えが浮かぶのが断ち切れなくなってしまいかねません。さらに、過労や不眠が重なったとすると、抑うつ状態など心のトラブルにもなりかねないのです。

そうした認知のゆがみを修正する基本的なステップを紹介します(下記 認知のゆがみを修正する基本ステップ)。毎日の生活のなかで、気持ちにゆとりがなくなってネガティブな考えばかりが浮かんだり、怒りがこみあげたりしたときにも活用してみてください。少し立ち止まって、認知のゆがみに気づき、バランスのよい考え方に修正することで、ストレスに対する免疫力を高めるためにも役立ちます。

認知のゆがみを修正する基本ステップ

(1)不快な感情が起こった出来事について検証する

  • いつ、どこで、どんなことが起こったかを明確にする
  • そのとき、どう感じたのか、自分に問いかける
  • そう感じたときに、どんな考えが浮かんだのかを明確にする など

例「自分は何をやってもダメなんだ」

(2)事実にもとづいて考える

  • そう考えてしまう根拠はなにか
  • その根拠があてはまらない場合はないか、ほかの捉え方はないか
  • その考えは、自分にどんなメリット・デメリットがあるか など

例「ミスやクレームが続いてしまった。しかし、ミスをしない人はいないし、たまたまトラブルが重なったとも考えられる」

(3)認知のゆがみに気づく

  • 起きてきた考え・感情についてさらに考察する
    感情的な決めつけがないか/心のフィルターによって偏って捉えていないか/わずかなことから、過度のことを結論づけていないか/都合の悪いことは大きく、プラス面は小さく考えていないか/自分と関係のないことまで自分のせいにしていないか/完璧主義すぎないか/否定的に考えて消極的になり、ますます状況が悪くなっているのではないか など(「『認知のゆがみ』の10パターン」参照)

例「トラブルが続いたからといって、ダメな人間だと決めつけなくてもよいのでは……」

(4)視点を変えてみる

  • ほかにどんな考えがあるだろうか
  • ほかの人なら、どう考えるか
  • 家族など大切な人が同じ悩みをもっていたらどうアドバイスするだろうか
  • 自分ではどうしようもないことで、自分を責めてはいないだろうか など

例「次からは、同じミスをしないように気をつけることが大事だ!」

もとの気分より、気持ちが楽になったら、よい傾向です。
気持ちは変わらなくても、不快な感情が起こる原因となった出来事への対応策などが思いつくと、ストレスの軽減につながるでしょう。

【参考】
「うつ病の認知療法・認知行動療法 (患者さんのための資料)」 厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業 「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。