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「取引先の担当者が苦手で、心身ともに疲れてしまいました」

「取引先の担当者が苦手で、心身ともに疲れてしまいました」

Q. 20代女性です。一方的に話を進めてくる取引先の担当者に振り回され、仕事にやる気が起こらなくなりました。威圧的な話し方をされることもあって、不眠や体調不良にも悩まされています。

A. 嫌な部分を気にしすぎないこと。また、自他共に肯定するコミュニケーションを心掛けて、上手に自分の意見を伝えましょう。

「こういう人なのだ」と認識し、見方を変えてみよう

不眠や体調不良まで起こり、苦痛を抱えているのですね。まじめできちんと仕事をこなす人ほど、自分のペースを乱すような人間関係に巻き込まれてしまい、悩むケースが多く見られます。

苦手でも付き合いを続けざるを得ない場合、相手の嫌な部分を深刻に捉えず、「こういう人なのだ」と受け止めるようにしましょう。嫌な部分を気にしすぎると、嫌悪感ばかりがふくらみ、ますます苦手に感じるという悪循環におちいってしまいます。嫌な部分も相手の個性として認められれば、少し違って見えてくるかもしれません。「嫌だな」と思うマイナスの感情を、少しでもプラスに転換していきましょう。

自分の意見を言えない、嫌なのに断れない人におすすめな「アサーション」

とはいえ、相手の理不尽な振る舞いに対して「ノーと言ってはいけない」「自分の気持ちを押し殺さなければいけない」わけではありません。自分も相手も尊重しながら、自分の意見や気持ちを適切に表現するよう心がければ、お互いにストレスの少ない、よい人間関係につながります。このような「自分も相手も大切にした自己表現」のことを、「アサーション」(assertion)といいます。

例えば、取引先の担当者の指示どおりに作った書類や成果物について、担当者に「全然ダメ、明日までにやり直して」と言われてしまったとします。あなたなら、どのような対応をとりますか?

A
「言われたとおりに作ると、こうなりますよ。明日までなんて無理です。そちらで修正してください」
B
「は、はい……。わかりました」
C
「いただいた指示に従って作りましたが、ご希望に沿えていないようで残念です。明日までに間に合うかわかりませんが、できるだけ努力しますので、どのあたりが問題かお教えください」

アサーションでは、典型的な対応を「攻撃的な“アグレッシブ”」「自己否定的な“ノン・アサーティブ”」「自他共肯定的な“アサーティブ”」の3つに分類します。

Aアグレッシブなタイプは、自分の主張をはっきりと表現しますが、相手の気持ちを無視して一方的に自分の主張を押しつけます。大声で怒鳴るなど威圧的な態度をとったり、相手を従わせようとするため、周囲とよい関係が築けずに孤立する傾向にあります。

日本人にはBのような、ノーといえないノン・アサーティブなタイプが多いと言われています。相手の様子をうかがい、相手に合わせようとする素直なタイプですが、自らの感情を抑えているためストレスが溜まる一方です。相談者さんも、取引先に対してノン・アサーティブな対応をしてしまっているのではないでしょうか。

Cアサーティブでは、事実を述べ、修正することを前提として、改善策について尋ねています。「私はOK、あなたもOK」というWin-Winの関係がめざせる対応です。

「アサーティブな会話」を心がけて、上手な自己表現をしよう

アサーティブな会話は、両者が「OK」の立場を取るため、自分の感情を相手に伝える際に、相手に対する配慮も必要です。すぐにはそのような会話ができないかもしれませんが、次のポイントを踏まえてチャレンジしてみましょう。これは、DESC(デスク)法という手法です。

① 事実を述べる
「いただいた指示に従って作りました」
② 事実に対する自分の気持ちを述べる
「が、ご希望に沿えていないようで残念です」
③ 相手に具体的な提案をする
「明日までに間に合うかわかりませんが、できるだけ努力しますので、どこをどう直せばよいかお教えください」
④ 相手の答えに反応して対応をとる
(相手がイエスの場合)「わかりました」
(相手がノーの場合)「最低限明日までにすべき箇所をお教えください」または「一度上司に相談してみますのでお時間をください」など

アサーティブな会話を一度身につけると、スムーズなコミュニケーションにつながります。ただし、どうしても苦手な相手と付き合いを続けられない場合は、担当をはずしてもらったり、配属を変えてもらうのも一つの方法です。環境が変わり、ストレスの原因から離れられれば、体調や仕事へのやる気も戻ってくるでしょう。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。