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「上司と後輩との間の板ばさみ状態で、つらいです」

「上司と後輩との間の板ばさみ状態で、つらいです」

Q.30代男性です。上司からは後輩に対する愚痴をこぼされ「君からも言ってくれないか」と頼まれる一方、その後輩からは上司のやり方に不満があるとして相談されています。この板ばさみ状態は、どうすれば改善されるでしょうか。

A.大切なのは、双方の話をじっくりと「聴く」こと。それだけで相手の気持ちが落ち着いたり、解決につながることもあります。自分がきつくなってきたら、無理せず、弱みも見せましょう。

どちらかをとるのではなく、双方の話をちゃんと「聴く」

職場内で中堅の立場になってくると、相談者さんのように、上司と部下あるいは後輩の間で板ばさみになってしまうケースが多く見られます。仕事の中核を担っていて、上司から信頼され、後輩からも慕われているからこその問題と言えるでしょう。上司と後輩との間でがんばる相談者さんのような方々がいることで職場が成り立っているといえますが、切実で難しい問題ですよね。

後輩の意見を優先させれば、上司との折り合いが悪くなり、ストレスが増すおそれがあります。仕事が進めにくくなり、職場での地位もあまりよくなくなるかもしれません。逆に、上司の意見を優先させると、「上にはいい顔をする人」と思われて後輩はついてきてくれなくなります。後輩や部下とは将来的に長い間共に仕事をしていくことになりますから、うまくやっていきたいものです。

――と考えてくると、どちらをとればよいかという問題ではないようです。中間に立つ者として重要なのは、「双方の話をちゃんと聴く」役目をきちんと果たすことではないでしょうか。

事実関係の確認よりも、両者の思いや気持ちを汲み取ってじっくり「聴く」

「きく」は、いろいろな漢字で表されます。ただの音や情報として耳に入ってくるものを捉える「聞く」、相手に何かを質問したり、答えを要求したりする「訊く」もありますが、「聴く」は、身を入れて相手の話を理解しようとするきき方です。

事実関係を確認して対応や処置を指示する「聞く」だけでなく、上司や後輩が悩んでいる思いや気持ちを汲み取って「聴く」ことも大切です。「相手が話しやすくなる聴き方アドバイス」を参考に、両者の話をじっくりと聴いてみましょう。

上司も後輩も、話をじっくり聴いてもらうだけで「受け入れてもらえた」という感覚になり、気持ちが落ち着くことでしょう。事態を客観的に捉えて、問題点を整理することができ、それだけでも解決につながる場合があります。

自分の弱みをさらすことも必要。板ばさみで燃え尽きてしまわないよう注意を

しかし、常に上司と後輩の間でがんばる必要はありません。「上司の期待を裏切ることになるのではないか」「先輩として頼りなく思われてしまわないか」と考えすぎ、両者に応えるために必死になるあまり、燃え尽きてしまわないように気をつけましょう。

自分がきつくなってきたなと感じたら、上司にも後輩にもある程度頼る姿勢を見せることも必要です。自分の弱みをさらすことは、決して悪いことではありません。弱みが魅力になる場合もありますし、周りの人たちがあなたを理解するよい機会につながります。あなたからも信頼されていると感じられるでしょう。

万が一、頭痛や腹痛、不眠といった身体症状が出てきたら、早めに心療内科や精神科などの専門家に相談しましょう。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。