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「うつ病が疑われる部下。酒の席に誘って話を聴いてもよいでしょうか?」

「うつ病が疑われる部下。酒の席に誘って話を聴いてもよいでしょうか?」

Q.50代男性です。これまで真面目で特に問題のなかった男性の部下が、最近目に見えて元気がなく、仕事の効率や完成度が下がり、朝も遅刻が多くなりました。話を聴こうと思っていますが、酒の席に誘って問題ないでしょうか。

A.うつ病の疑いがあるときは、アルコールは症状を悪化させるので厳禁です! 個室の会議室などで、じっくり話を聴きましょう。自分の意見の押しつけや激励をしないことも重要です。

心の不調を抱える人の話を、酒の席で聴くのはNG

部下の様子を普段から見守り、心の不調のサインに気づいた相談者さんは、日ごろから部下ときちんとコミュニケーションを取っていて、職場のメンタルヘルス対策への意識も高いことが伺えます。

心の病を抱えている人は、自分から相談できなくなっている場合も多く、相談に来るのを待っていては対応が遅れてしまいます。周囲、特に管理監督者たる上司が気づいて声をかけ、話を聴くのが大切です。

このとき、相談者さんのように「お酒の席のほうが腹を割って気軽に話せるだろう」と思う人は多いでしょう。しかし、うつ病の疑いがあるときは、アルコールは症状を悪化させる恐れがあるため、厳禁です。時には自殺の後押しにつながってしまうこともありますし、そうでなくても、部下が興奮しすぎてしまったり、喋りすぎて後で「言わなければよかった」と後悔し、翌日から出勤できなくなったりすることも考えられます。

安心して話せる応接室や会議室などで、個人的に話を聴くようにする

また、心の病を抱えている部下は、出勤してその日をこなすだけで精一杯だと思われます。そのあとも拘束すると、さらにストレスを与えることになってしまうので、勤務時間内に職場で話を聴くようにしましょう。部下が安心して話せるような応接室や会議室などを使うのがよいでしょう。

重要なのは、ひたすら聴き役に徹し、落ち着いて話に耳を傾けること。途中で遮って自分の意見を言ったり、非難するような聴き方や激励をしたり、「自分もこんなに大変だ」「自分も若いときはこうだった」と自分の話をしたりしないように注意しましょう。そのような対応をすると、相手は相談する意欲を失ったり、「受け入れてもらえなかった」と感じたりしてしまいます。つらいときは、ただ誰かに話を聴いて、苦しみをわかってもらえるだけで気持ちが軽くなることも多いものです。

ひととおり聴いたのち、上司としてアドバイスするなら、業務内容の変更や他部署への配置転換など、負担軽減につながる解決策を提案しましょう。また、職場の産業医や社内の相談窓口、カウンセラーや精神科・心療内科などの専門医への受診を勧めることも大切です。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。