文字サイズ

「また倒れるのではないかと不安で、遠くに出かけるのが怖いです」

「また倒れるのではないかと不安で、遠くに出かけるのが怖いです」

Q.20代女性です。半年ほど前の通勤中、急にめまいがして倒れてしまいました。病院での検査では異常がなかったのですが、以後もたまにふらついたり、ドキドキしたりすることがあります。また倒れたらと思うと遠出が怖くて、来月の出張を断ろうか悩んでいます。

A.パニック障害かもしれません。早めに一度受診することをおすすめします。同時に、ストレスをためない生活を心がけることも大切です。

パニック障害は若い女性に多い。ある日突然、動悸やふるえの発作が起こる

めまいで倒れたことをきっかけに、ふらつきや動悸を感じるようになってしまったのですね。いろいろな検査で異常が見られず、そのような症状が続いているということからは、パニック障害が疑われます。

パニック障害は、特に体の病気がないにもかかわらず、突然起こる激しい「パニック発作」が繰り返されるものです。発作の症状は、動悸やふるえ、呼吸困難、胸の圧迫感、吐き気やめまい、ふらつき、発汗、手足のしびれなどで、「このまま死んでしまうのではないか」という強烈な不安感、恐怖感を伴います。

パニック障害は一生涯に2~5%の人が発症するといわれていますが、単発性のパニック発作のみを経験したことのある人は、人口の10%以上いるとも推定されています。20~30歳代の若い人、特に女性に多く起こります。

遠くへ外出することへの不安感は、「予期不安」と考えられる

パニック発作を経験すると、相談者さんのような、また発作が起きるのではないかという「予期不安」にかられることが多くなります。そしてその不安は、家の外で一人でいることや、乗り物での移動、混雑の中にいることなど、逃げたり助けを求めたりできない場所・状況を恐れる「広場恐怖」に発展し、さらにはそれらを回避しようとする「回避行動」につながることがあります。

回避行動の対象がどんどん増えてしまうと、行動範囲が狭まり日常生活に支障をきたすことになってしまいます。また、慢性化して抑うつ症状が増えないようにするためにも、早期診断・早期治療が重要です。まずは、心療内科を受診することがすすめられます。

パニック障害と診断され、生活に支障が出ている場合は、抗うつ薬や抗不安薬などによる薬物療法と、不安対象に少しずつ挑戦して慣らしていく行動療法が検討されます。

ストレスや睡眠不足、過労は発作を起こしやすい

パニック発作は、ストレスや睡眠不足、過労などがあると起こりやすくなります。薬物療法を開始したとしても、発作を避けるライフスタイルを心がけるようにしましょう。運動、労働、休養、睡眠、食事という「生活の5要素」のバランスをとるようにし(「心の健康のためにも、ライフスタイルを見直そう」参照)、楽しんで運動をしたり趣味に時間を割いたりと、生活が仕事だけに偏らないように気をつけたいものです。

また、電車や飛行機を使う出張や、狭い場所での会議や人が多く集まる場所などは、発作を誘発しがちです。できるだけ、職場の上司や周りの人などにもこの病気への理解を仰ぎ、しばらくは配慮してもらうようにしましょう。無理をせず、主治医と相談しながら、少しずつ慣らしていくことが大切です。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。