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「PTAの集まりが苦手で、出席すると手が震えます」

「PTAの集まりが苦手で、出席すると手が震えます」

Q.30代女性です。社交的なタイプではないのに、子どもの学校のPTA役員になってしまいました。一度先輩ママにきつい言い方をされて以来、発言するとまた批判されそうで怖く、PTAの集まりに出ると手が震えます。あまり出席しないほうがよいのでしょうか?

A.状況を危険なものと感じて不安関連症状が出る「社交不安障害」かもしれません。集まりを避けるよりも、緊張や不安から気をそらす認知行動療法に取り組んでみましょう。

他人からどう見られているかが非常に気になり、対人場面を避けがちに

人と話したり人前で行動したりするときに、「自分の行動が不適切で恥ずかしい思いをするのではないか」「間の悪い思いをするのではないか」と非常に心配したり、さらに、そのような不安が周りに知れるのではと恐れたりして、日常生活や仕事に支障が出る――。相談者さんは、そのような「社交不安障害」かもしれません。人間関係に敏感で、周囲の人に過剰に気を遣いがちな人や、自分に自信がなく自己評価の低いタイプの人によく見られる病気です。

社交不安障害のある人は、苦手な対人場面で「自分がきちんと行動できているか」が気になるあまり、自分のことだけを考えるようになってしまいます。そして、緊張によって自分の顔がこわばっていると感じると「周りの人に自分の顔がこわばっていると思われている」と思い込むなど、他人から見た自分のイメージを、憶測で決めつけてしまいます。

さらに、不安や緊張が強くなると、落ち着かなくなり、頭の中が真っ白になったり、汗をかいたり、脈が速まったり、手が震えたりといった身体反応に現れてくるようにもなります。やがては、相談者さんのように「PTAの集まりに出ないようにしよう」などと、苦手な状況や場面を回避する行動をとりがちですが、よい対策とはいえません。

集まりを避けると、ますます出なくなって自信がなくなり、悪循環に

回避すると、一時的な安心を得られることは確かですが、「PTAの集まりに出なければ安心する」というような行動が学習されて、ますます出ないようになってしまいます。社交経験が減り、さらに自信が低下するという悪循環に陥り、社会的に十分な評価を得られなかったり、孤立するという弊害が起こる可能性があります。

そのため、回避するよりも、リラクセーション法(「自律訓練法」や「筋弛緩法」、「腹式呼吸」など。サイト内関連記事参照)、「アサーション」のほか、次に紹介する「呼吸コントロール技法」や「注意分散法」といった認知行動療法に取り組むのがおすすめです。これらの技法を日ごろから練習しておき、不安や緊張を引き起こす状況になったら、自然に使えるようにしておきましょう。

呼吸コントロール技法や注意分散法を練習し、不安を感じたら実践できるように

呼吸コントロール技法は、緊張が高まったときに意識的に安静時の呼吸回数に近づけるもので、気持ちを落ち着かせたり不安から気をそらす効果があります。腹式呼吸を、ゆっくりとスムーズに行うことに集中しましょう。

【呼吸コントロール技法の手順】

*練習は時間を測りながら行い、時間間隔をつかむ。1回5分を1日4回、3週間以上続ける。

①中等量の息を鼻から吸い、息を6秒間止める。

②心の中で「リラックス」と言って、息を吐く。このとき、緊張も吐き出すようにする。

③ゆっくりと軽く息を3秒間吸って、3秒間吐く。吐き終えるまでを1回と数えて、10回くり返す(1分間で10回の呼吸速度となる)。

一方、注意分散法は、自分が相手からどう見られているかや、目の前の心配事などに注意が集中してしまいがちなときに、複数の対象に注意を分散させて気をそらす方法です。以下に例を挙げるので、いくつか試して、自分に合う方法を探してみましょう。

【注意分散法の例】

・他人や自分の内面ではなく、外見や身に着けているものなどに注意を向ける。

・天井や壁、時計、床、空、雲の形や色など、周りの環境に目を向ける。

・空調の音や、流れているBGM、話している人の声の調子など、聴覚的なことに注意を向ける。

・赤いものや丸いもの、数字など特定のものを探したり、数えたりする。

・自分の足の裏(土踏まず)に注意を向ける。

なお、上記に取り組んでも改善されないときや、心身に症状が強く現れているときは、早めにかかりつけ医や精神科医、心療内科医などを受診したり、メール相談・電話相談を利用するようにしましょう。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。