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「家に閉じこもりがちで食欲のない母。うつ病か認知症でしょうか?」

「家に閉じこもりがちで食欲のない母。うつ病か認知症でしょうか?」

Q.40代女性です。半年前に父が死去してから、70代の母が一人暮らしをしているのですが、最近は家に閉じこもりがちで食欲も落ちているようです。うつ病か、認知症なのでしょうか? 本人にどう言って受診させればよいでしょうか。

A.うつ病と認知症は間違われやすい病気です。うつ病は治療によって改善する一方、急激に悪化することがあります。早めに身近なかかりつけ医に相談してみましょう。

高齢者のうつ病と認知症は症状が似ており、間違われやすい

お母様のことが心配なご様子、よくわかりました。お母様のような配偶者や知人との死別、退職といった大きな環境の変化や、身体機能の低下、経済的な不安などのストレスから、うつ病を引き起こす高齢者は増えています。そして、高齢者のうつ病は、物忘れが増えたり、理解力や活動力が低下したり、話が通じなくなったりといった認知症と似たような症状が現れるため、間違われやすくなります。

以下に、うつ病と認知症の主な相違点を挙げてみましょう。

●症状
うつ病: うつ気分(憂うつ、面白くない、不安、死にたいなど)、意欲の低下、疲れやすい、身体症状(不眠、食欲低下、頭痛、便秘、体重減少など)。高齢者の場合、うつ気分よりも不安や焦燥、身体症状が目立つことが多い
認知症: 記憶障害(体験したことを忘れるなど)、見当識障害(よく知っている場所で迷う、よく知っている人物がわからないなど)、判断力の低下、失語(言葉が出ない、言い間違えなど)、失認(物を認識できないなど)、失行(物の使い方がわからないなど)
●発症
うつ病: 比較的急に発症して進行する
認知症: 代表的なアルツハイマー型認知症では、ゆるやかに発症し、少しずつ進行する
●日内変動
うつ病: 朝方に一番症状が重く、午後~夕方にかけて少し改善
認知症: 夕方に症状が悪化する

かかりつけ医か地域包括支援センターに相談し、早めに診断を

うつ病であれば、薬物療法で症状を改善することができます。アルツハイマー型認知症の場合は、進行を抑える薬物療法が検討されます。特に、一人暮らしの高齢者は、孤独感からうつ病が重症化しやすいため、きちんとした診断を受けて早めに治療を開始することが大切です。

うつ病が疑われるなら心療内科や精神科、認知症が疑われるなら神経内科、物忘れ外来などが専門科になりますが、それらへの受診が難しいようであれば、いつも持病などをみてもらっている身近なかかりつけ医に相談しましょう。また、地域包括支援センターでは、高齢者の病気や介護についての相談を受け付けているので、自治体のホームページなどで調べてみるとよいでしょう。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。