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「手を何度も洗わないと不安です。潔癖症なのでしょうか?」

「手を何度も洗わないと不安です。潔癖症なのでしょうか?」

Q.30代女性です。子どもが以前、肺炎になりかけて以来、ウイルスや細菌への恐怖が尽きません。手を洗っても洗っても不安がぬぐえず、子どもにも頻繁にアルコール消毒をしたり水道代が高額になったりして、夫に怒られてしまいました。潔癖症なのでしょうか?

A.不安障害の一種の「強迫性障害」でしょう。ストレス解消法に取り組む、回数を決めるようにするなどでも改善せず、日常生活に支障が出ているのであれば、認知行動療法や薬物療法が行われることがあります。

自分でやめたいと思っていても繰り返してしまう病気

強迫性障害(OCD)は、相談者さんのように「頻繁に手を洗ってしまう」ほか、「ドアに鍵をかけたか何度も戻って確認してしまう」「仕事の書類にミスがあるのではないかと何度もチェックしてしまう」など、強いこだわりや不安があって何度も同じ行為を繰り返してしまう病気です。

多くの場合、強迫観念(自分の意志に反して繰り返し頭に浮かんでくる考え)と、強迫行為(強迫観念による恐れや不安を打ち消すために、無意味だとわかっていても、繰り返さずにいられない行為)がセットになって起こります。

日本での患者さんの数は人口の1~2%程度とされており、男女とも同じくらいの割合で起こります。男性では10歳代半ばくらいで始まりやすく、女性では20~30歳代で、特に結婚や出産といった大きなライフイベントをきっかけに起こることが多いといわれています。

気持ちに余裕をもつようにしたり、回数を決めてみる

これまでの研究によると、健常者の約8割が強迫観念と同じような考えを経験しており、同様に約5割の人が強迫行為を経験しています。不潔が心配で手を洗ったり、何度も戸締まりを確かめること自体は必ずしも悪いことではありませんし、安心して生活するためには必要なことでもあります。

しかし、強迫性障害の人では、強迫観念が繰り返し浮かぶことが非常に苦痛であったり、強迫行為を頻回に行わざるを得ず日常生活に支障が出てしまうという違いがあります。

そのようなサインがなく、自分をコントロールできるようであれば、ストレスをためないようにしたり、リラクセーション法に取り組んだりして気持ちに余裕をもつようにしてみましょう(サイト内関連記事参照)。また、強迫行為が起こったときに、「20回洗う」といったように回数を決めて儀式化すると、「20回洗ったから大丈夫」と自分に言い聞かせて安心できることもあります。

日常生活や周囲に影響が出ていたら、医療機関を受診して適切な治療を

自分をコントロールできず苦痛がある、日常生活に影響が出ている、家族や周囲の人が困っているといった場合には、早めに精神科や心療内科などを受診しましょう。

強迫性障害では、SSRIや三環系抗うつ薬による薬物療法や、曝露反応妨害法などの認知行動療法が行われます。曝露反応妨害法は、例えば、何かを触って手を洗いたくなっても洗わずにがまんするなど、行わずにはいられなかった強迫行為を行わずにがまんするというものです。最初は不安が大きいかもしれませんが、「やらなくても大丈夫だった」と自分に言い聞かせて安心感を与えながら続けていくことで、やがて強迫行為がおさまっていきます。

治療には時間がかかることもありますが、治る病気なので、根気よく取り組みましょう。この病気に対する家族の理解も重要です。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。