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「長時間労働の夫。体に不調が出ていますが、受診する時間すらないようです」

「長時間労働の夫。体に不調が出ていますが、受診する時間すらないようです」

Q.30代女性です。夫が深夜までの残業と休日出勤が続いてまともに休めていません。めまいや頭痛、ひどい肩こりなどを訴えているのですが、病院へ行く時間さえ取れない状況です。「ほかの人に仕事を代わってもらえないの?」などと言ってみても口論になり、夫は「辞めるしかない」の一点張りです。どうしたらいいでしょうか。

A.ストレス過多により、うつ状態にあるか、一歩手前の状況かもしれません。きちんと専門医の診断と診療を受けるようにしましょう。職場環境の改善も必要ですが、個人での解決は困難なので、専門機関の力を借りるのもひとつの手です。

異常なほど働き詰めで最悪の事態を招かないよう、早めに受診を

ワーク・ライフ・バランス、長時間労働是正、働き方改革…といった言葉は何年も前から叫ばれていますが、残念ながら、相談者さんの夫の職場のような環境もまだたくさん存在します。妻である相談者さんからの話を聞くかぎりでは、夫はストレス過多が原因で心身に支障をきたしている状態にあると考えられます。

「受診する時間さえとれないほど忙しい」ということですが、無理をして働き続けたために体を壊し、仕事を休まざるを得なくなれば、かえって職場に迷惑をかけることになるでしょう。そればかりか、長期休職、退職、最悪の場合には過労で命を奪われたり、自殺という事態に陥ることもあります。

そうならないために、職場の産業医に相談するか、心療内科や精神科への早めの受診をお勧めしますが、本人には「うつ病かもしれないから」などとは言わず、「疲れがたまっていて心配だから」などのように伝えるようにするとよいでしょう。

劣悪な労働環境は職場の体制の問題。変わらなければ、専門機関に相談を

うつ状態にあるときは、本人の判断能力が鈍っていたり、自責感などが強くなっているので、「退職するしかない」と考えてしまうのは仕方のないことです。しかし、退職すると決めた結果、治ったときに後悔するケースもあるので、本人に今の段階で大きな決断をさせないほうがよいでしょう。

相談者さんの夫の職場は、労働時間の管理体制に問題があるようですので、まずは職場側の改善が必要です。同僚や上司、産業医などに相談することが難しいようであれば、「騒動条件相談ほっとライン」や労働局の「総合労働相談コーナー」、労働基準監督署などの専門機関に相談しましょう(厚生労働省「こころの耳」の「専門相談機関・相談窓口」で調べることができます)。

しかし、職場が対応を改めなければ、主治医に診断書を書いてもらって休職するか、辞めるという検討も必要になります。

4月から働き方改革関連法が順次施行される

昨年(2018年)、働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が成立し、今年4月から順次施行となります。主なポイントには、時間外労働の上限規制の導入、年次有給休暇の確実な取得、正社員と非正規社員の待遇差の禁止などがあります。それらによって多くの職場環境が改善されることと、職場におけるメンタルヘルス対策が進むことが望まれます。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。