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食塩のとりすぎと胃がん

食塩のとりすぎと胃がん

 日本人に胃がんが多いのは、漬物や干物など、食塩の多い食品を好むからだとされています。食塩のとりすぎは、胃がんのリスクだけでなく、高血圧を介して脳卒中や心筋梗塞などのリスクも高めます。

食塩の多い食事は、ピロリ菌の持続感染を助長する?

 胃がんの主な原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染とされています。ピロリ菌は、衛生環境が整っていない状況で、水(井戸水など)や食べ物を介して経口感染すると考えられています。先進国の中では、日本はピロリ菌の感染率が高く、このことで日本特有の食習慣が、感染率の高さと関係しているのではないかとみられています。
 日本の伝統的な食事形式である「一汁三菜」は、栄養のバランスをとりやすいことで評価されており、また、野菜や魚介類、豆類、海藻類など旬の素材に恵まれ、それらを食べてきた日本の食文化は、世界に誇れるものです。
 しかしその一方で、みそ汁や漬物、魚の干物・たらこ・いくらなどの塩蔵品、佃煮など、食塩を多く含む食品や料理を好む国民性もあります。
 食塩を多く摂取しているグループほど、ピロリ菌の感染率が高いという報告がいくつもあります。食塩の多い食事は、胃の粘膜を荒らしたり、粘液の性状を変えたりして、ピロリ菌が棲みつく環境をつくり、持続感染を助長しやすいのではないかと考えられます。

食塩のとりすぎは、胃がんのリスクに

 食塩のとりすぎは、高血圧を引き起こし、脳卒中、心筋梗塞などのリスクを高めることから、近年、国をあげて減塩がすすめられ、食塩の摂取量はかつての日本に比べればずいぶん減ってきました。
 最新のデータである厚生労働省の「平成21年度 国民健康・栄養調査」(平成22年12月発表)によると、食塩摂取量は成人で平均10.7g(男性11.6g、女性9.9g)。前年に比べて男女とも減少しています。しかし、目標としている男性9g未満、女性7.5g未満より、まだまだ多いのが現状です。WHO(世界保健機関)の目標量である5g未満に比べれば、2倍近い摂取量です。
 食塩摂取料と胃がん発生の関係を調べた多目的コホート研究(10年の追跡調査)によると、男性では食塩摂取量が「最も少ないグループ」と「最も多いグループ」とでは、胃がんの発生は2倍近くも差があることがわかりました。
 また、食塩含有量の多いみそ汁、漬物、たらこ・いくらなどの塩蔵魚卵、塩鮭、めざし、塩辛、練りうになどの塩蔵魚介類ごとに、胃がん発生との関係を調べたところ、男女を問わず、摂取頻度が高いほど、胃がんになりやすく、特に食塩濃度が高い塩辛や練りうにで、さらにリスクが高いことがわかりました。

がん予防のほか、脳卒中などの予防にも、おいしい減塩を心がけて

 日本での胃がんの罹患率は、高齢化の影響を取り除くと、低下している傾向がありますが、いまだ最も頻度の高いがんです。発がんリスクを避けるためにも、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などの予防のためにも、減塩に励みましょう。

減塩のコツ

  • みそ汁は、1日に1杯までにする。
  • 漬物や佃煮、魚の干物、たらこ、いくら、塩辛、練りうになどは、控えめに。
  • 麺類の汁は、飲み残す。
  • しょうゆやみそ、梅干しなどは、減塩食品に替える。
  • だしやうま味のある素材を使い、しょうゆや砂糖を少なくして薄味に調理する。
  • 香辛料やハーブなどの香りや辛味、またはかんきつ類や酢などの酸味を利用して、味に変化をつける。
    など

津金 昌一郎先生

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。