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野菜や果物で、がんを防ぐ

野菜や果物で、がんを防ぐ

 野菜や果物に含まれる成分には、抗酸化作用や体内での発がん物質の解毒を促進する作用などがあります。特に胃がん・食道がんを防ぐ効果が高いことがわかりました。なかでもその効果が大きい喫煙者や飲酒者は、野菜や果物を積極的に食べることがすすめられます。

若い世代ほど、野菜摂取量が少ない

 日本では、「1日に野菜350g!」が定着しつつある今日。これは、生活習慣病を防ぐことを主な目的として、平成13年に発表された「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)の推進について」の中で1日の野菜摂取量の目標を「350g」と掲げ、全国的な取り組みが始まったからです。
 そして現在の日本人の野菜摂取量はというと、平成22年12月に発表された厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(平成21年度調査)では、成人の1日当たりの野菜の摂取量は、平均295.3gでした。最も多い60歳代で339.6g、最も少ない20歳代で241.9gです。300gを超えていたのは50歳代以降の世代でしたが、どの世代も350gを超えてはいません。

野菜や果物の摂取が、発がんリスクを下げるか?

 がんの予防効果ということでは、WCRF((世界がん研究基金)の提言では、野菜や果物は、合わせて1日400gから800gをとることを目標としています。
 では、野菜や果物の摂取量が多いと、本当にがんの発生リスクを下げるのでしょうか。
 ヒトを対象としたコホート研究(特定集団を長期間追跡調査する研究)などでは、野菜や果物の摂取量が多いと、発がんリスクを下げるという多くの研究結果がありますが、そうでないという結果もあり、明確な結論は得られていません。
 WHO(世界保健機関)やWCRF、AICR(米国がん研究財団)では、野菜や果物は「がんを予防する可能性が大きい」という評価にとどめています。

日本での多目的コホート研究から

 野菜や果物の摂取とがんの発生リスクの関連を、我が国の多目的コホート研究の結果からみてみましょう。

胃がん

 野菜や果物をほとんど食べない人に比べて、週に1日以上食べる人は、胃がんの発生率が低いというデータが出ています。特に白菜やキャベツ、トマト、さまざまな根菜類は、緑黄色野菜や果物よりも胃がんの発生リスクを下げる効果が高いことがわかりました。

食道がん

 食道がんの発生リスクとの関連については、比較的はっきりした予防効果がみられました。1日当たり、野菜や果物を100g多くとるごとに、食道がんの発生リスクを10%下げるという結果が出ました。喫煙者や飲酒者は食道がんの発生リスクが高いのですが、特にアブラナ科(キャベツ、ブロッコリーなど)の野菜は、喫煙者や飲酒者の食道がんリスクを下げる効果があることがわかりました。
 ただし、野菜・果物摂取による予防的効果は禁煙・減酒による予防的効果に及びません。食道がんの予防には、まず禁煙・禁酒、次に野菜・果物摂取が大切であると言えます。

肝臓がん

 カロテンを含む緑黄色野菜の摂取が、肝臓がんの発生リスクを下げる効果的であることがわかりました。しかし、果物やビタミンCの多い食物は、逆に肝臓がんの発生リスクを高めるという結果も出ています。ただし、肝臓がんになった人の8割以上がB型またはC型肝炎ウイルス陽性者でしたので、肝がん予防のためには、まず肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染していた場合には治療をするなどの措置をとることが必要です。

大腸がん

 野菜や果物の摂取と大腸がんの発生リスクの関連は、確認されませんでした。欧米の研究でも、「効果はあってもごくわずか」という結論です。ただ、2003年のWHOとFDO(国連食糧農業機関)の報告や、2007年のWCRFとAICRの報告では、野菜と果物のがん予防効果は、可能性が大きいと評価されています。
 最近の19のコホート研究のメタ解析では、摂取量の非常に少ないグループでリスクの増加が確認されたものの、それ以上は、多ければ多いほど予防的という直線的な関連はみられませんでした。
(参照:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21600207

野菜と果物を合わせて、1日にまずは400gを目標に!

 野菜や果物が発がんリスクを下げる、つまりがん予防効果があると期待されるのは、カロテノイド、葉酸、ビタミンC、フラボノイド、フィトエストロゲン、イソチオシアネート、食物繊維などの成分が含まれているからです。
 しかし、これらの成分がどのように作用し、どのくらい効果的に働くのか、成分の組み合わせによってリスクが上下するのかなど、まだはっきりわかっていません。
 しかし、がん以外では、循環器疾患や糖尿病の予防につながることはわかっており、毎日の食生活の中で野菜や果物を十分に、種類に偏りなく、積極的に摂取することが大切であることは言うまでもありません。
 日本人の食生活を総合的にかんがみて、野菜と果物を合わせて「1日に400g」とることを、まず目標にするとよいでしょう。

津金 昌一郎先生

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。