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β-カロテンで胃がん予防

β-カロテンで胃がん予防

 β-カロテン不足の人は、胃がんのリスクを高めることがわかり、β-カロテンの胃がん予防の効果が期待されています。β-カロテンは主に緑黄色野菜に多く含まれていますので、特徴を知り、上手に取り入れましょう。

野菜や果物に豊富な抗酸化物質は、胃がんリスクを下げるか

 国立がん研究センター研究班による多目的コホート研究では、保存血液を用いて、血中のカロテノイド(β-クリプトキサンチン、α-カロテン、β-カロテン、ルテイン/ゼアキサンチン、リコペン)、レチノール、α-トコフェロール、γ-トコフェロールの濃度を測定し、平均濃度の「最も低い、2番目に低い、3番目に低い、最も高い」の4グループに分けて、各グループが同じ人数になるようにして追跡調査し、胃がんと抗酸化物質の関係を分析しました。
 これらの成分は、野菜や果物に多く含まれる成分で、抗酸化物質といわれ、がん予防に期待される成分です。ただし、野菜や果物の摂取量を調べるだけでは、体内に取り込まれた抗酸化物質の正確な量はわかりません。より正確に抗酸化物質の量を把握するには、これらの成分の血中濃度を測定することが有効です。
 胃がんリスクについては、胃がんの家族歴、喫煙、肥満指数、ヘリコバクター・ピロリ抗体、食塩・高塩分食摂取などがわかっていますが、これらの影響は可能な限り取り除いて検討されました。

β-カロテン濃度が高い男性は、胃がん発生率が低い

 この研究の結果、男性では血中カロテノイドのうち、β-カロテン濃度が高いグループで、胃がんの発生率が低いことがわかりました。一方、女性では、男性と比べてもともと血中カロテノイド濃度が高く、胃がんリスクとの関連は見られませんでした。
 α-カロテンについても、同様の結果が見られました。やはり男性では女性に比べ、α-カロテンの血中濃度が低く、男性で濃度の高いグループで、胃がんリスクが低い傾向が見られました。
 ルテイン/ゼアキサンチン、リコペン、α-トコフェロール、γ-トコフェロールについては、胃がんリスクとの関係は見られませんでした。
 男性と女性の結果に違いが出たのは、血中カロテノイドの濃度が、男性では女性に比べて全体的に低く、不足していた人が多く見られたことが考えられます。
 総じて言えることは、β-カロテンが不足すると、胃がんリスクは高くなるが、今回の研究の女性の場合のように、十分な量を野菜や果物から摂取していれば、それ以上摂取しても、予防効果がさらに上がるわけではないということです。特に、不足してない人が、サプリメントなどにより多く摂り過ぎると、死亡リスクが上がることが確かめられていますので、注意が必要です。

β-カロテンを多く含む野菜とβ-カロテンの特徴

 β-カロテンは、緑黄色野菜に多く含まれています。たとえば、モロヘイヤ、にんじん、ほうれん草、つるむらさき、よもぎ、小松菜、春菊、おかひじき、しそ、パセリ、かぼちゃなど。
 体内に入ったβ-カロテンは、必要な量だけビタミンAに変わり、残りは排出または蓄積されます。脂溶性なので油といっしょに調理すると、体内での吸収率が高まります。熱には強いので、加熱調理での損失率は低いほうです。
・緑黄色野菜をたくさん食べる
・油で炒める
・揚げ物にする
・ドレッシングをかける
・種実類(ごまやナッツ類)で和える
などの工夫すると、効率よくとることができます。

津金 昌一郎先生

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。