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コーヒーで肝臓がん、子宮体がん、大腸がんを防ぐ

コーヒーで肝臓がん、子宮体がん、大腸がんを防ぐ

コーヒーを「ほとんど飲まない」人に比べ、「毎日飲む」人では約2分の1、「1日に5杯以上飲む」人では約4分の1に、肝臓がんの発生リスクが低下することが示されました。女性では、コーヒーをよく飲む人ほど、子宮体がんや大腸(結腸)がんの発生リスクも低い傾向が見られます。コーヒーがなぜがん予防に有効か、まだはっきりとはわかっていません。

肝臓がん、子宮体がん、大腸がん予防に期待されるコーヒー

国立がん研究センターの多目的コホート研究では、1990年以降男女約10万人にコーヒーを飲む頻度を尋ねてグループ分けし、10年間にわたって大規模な追跡調査を行い、がんの発生率を比較しました。
これによると、

  • コーヒーをよく飲んでいる人ほど、肝臓がんの発生率が低い
  • コーヒーをよく飲んでいる人ほど、子宮体がんの発生率が低い
  • コーヒーをよく飲んでいる女性ほど、浸潤結腸がん(*)の発生率が低い
などの結果が示されました。

肝炎ウイルスに感染しても必ずしも肝がんになるとは限りません。C型やB型の肝炎ウイルスに何十年にもわたり持続感染し、その一部が慢性肝炎を起こし、さらに肝硬変へと進み、肝臓がんになると考えられています。

(*)浸潤結腸がんとは、大腸(結腸)の内壁粘膜にとどまらず、腸壁の深い組織にまでがんが達している状態。

コーヒーをよく飲む人は、肝臓がんになりにくい?

コーヒーと肝臓がんの関係では、男女ともに「ほとんど飲まない」人に比べ、「ほとんど毎日飲む」人では約2分の1に、「1日に5杯以上飲む」人では4分の1に、肝臓がんの発生リスクの低下が見られました。

もともと肝臓がんにつながるB型かC型のウイルス性慢性肝炎や肝硬変などの病気をもつ人は、肝機能が低下しているためにカフェイン代謝機能も悪く、コーヒーを飲めないか飲まない人がいて、このような結果になったことも否定はできません。そこで、C型肝炎ウイルス感染者に限っても検討してみましたが、同様の発生リスクの低下が認められました(参照:http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/355.html)。

コーヒーは、肝機能酵素活性を改善したり、肝臓がんの前病変である肝疾患や肝硬変のリスクを低下させたりすることが知られており、肝細胞炎症を軽減することによって肝病変の悪化を抑制し、肝臓がんの予防につながると考えられます。
ただし、B型やC型の肝炎ウイルスに感染していない人では、肝臓がんになることはほとんどないので、こういった人がコーヒーをたくさん飲んでも肝臓がん予防の効果は、ほとんどありません。

コーヒーをよく飲む人は、子宮体がんになりにくい?

コーヒーと子宮体がんの関係では、コーヒーをよく飲む人ほど子宮体がんの発生リスクは低下し、ほとんど飲まない人に比べ、「1日1~2杯飲む」人では約4割、「1日に3杯以上飲む」人では約6割、子宮体がんの発生リスクが低いことが示されました。

コーヒーをよく飲む人は、なぜ子宮体がんのリスクが低下するのか、現在のところではよくわかっていません。子宮体がんの発生には、女性ホルモンの一種であるエストロゲンと、糖代謝にかかわる成分であるインスリンが、大きく関与していると考えられています。
コーヒーはエストロゲンとインスリン、特にインスリンの分泌に影響を与えて、子宮体がんのリスクを低下させるのではないかという説が現在の有力な仮説です。コーヒーを飲むと、腸管からの糖の吸収が抑えられ、インスリンの過剰分泌を抑えると考えられています。インスリンは、腫瘍増殖作用を持つことでも知られています。

別の研究では、コーヒーをよく飲んでいる人は飲まない人に比べ、糖尿病の発生リスクが低いことが示されており、この結果でもコーヒーがインスリン分泌に影響を与えていることは一致しています。

コーヒーをよく飲む女性は、大腸がんになりにくい?

コーヒーと大腸がんの関係では、男性では関連が見られませんでした。男性の場合、大腸がんに影響が大きい飲酒や喫煙の習慣がある人が多いことから、コーヒーの効果が打ち消された可能性も考えられます。

一方女性では、「ほとんど飲まない」人に比べ、「1日に3杯以上飲む」人では、大腸がん全体の発生リスクが約3割、浸潤がん(腸壁の深くの組織までがんが広がった状態)では約4割低くなっていました。浸潤がんをさらに大腸の部位別に分けると、「1日に3杯以上飲む」人では、「ほとんど飲まない」人に比べ、浸潤結腸がんの発生リスクが約6割近くも低くなり、コーヒーを飲む量が多いほど発生リスクが低下することが示されました。直腸がん(肛門の近くの大腸に発生するがん)では、同様の傾向は見られませんでした。

なぜ、コーヒーをたくさん飲むと大腸がん特に結腸がんの発生リスクを下げるのかは、現在のところまだはっきりとはわかっていません。コーヒーによって、腸内の胆汁酸や中性脂肪などの濃度が抑えられたり、腸の運動を活発にしたりすると考えられています。

コーヒーのリスクとベネフィットのバランスを考えて

コーヒーがこれらのがん予防に、なぜ効果があるのかは、前述したようにはっきりとはわかっていませんが、コーヒーの成分には、抗酸化作用を持つカフェインやクロロゲン酸、発がん物質に対抗する作用を持つヘテロサイクリックアミンなどの成分を含んでおり、こういったコーヒー独自の成分の効果であろうと考えられています。

ただし、コーヒーの飲みすぎは胃を荒らすこと、高血圧や脂質異常症をもたらすこと、膀胱がんの発生リスクを高めることなども、調査結果で示されています。膀胱がんについては、特に喫煙習慣がある場合、たばこ自体が膀胱がんのリスク要因であり、コーヒーの飲みすぎによるリスクと重なって、さらに膀胱がんのリスクが高まります。コーヒーとたばこの組み合わせは避けるべきですから、百害あって一利もないたばこをやめることが第一です。

以上のようにコーヒーには、リスク(危険)とベネフィット(利益)の両面があります。バランスをとって、過不足なくおいしくいただくことが健康のカギだと思われます。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。