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禁煙、減塩、野菜・果物の摂取で、胃がん予防

禁煙、減塩、野菜・果物の摂取で、胃がん予防

 胃がん予防には、まず禁煙と減塩は必須で、野菜・果物の摂取もすすめられます。また、ヘリコバクターピロリ菌(以下、ピロリ菌)感染がわかっている人は、定期的な胃の検診を受けて、胃がんの早期発見に努めましょう。

胃がんの原因は、ピロリ菌の持続感染による慢性炎症

 胃がん発生のリスク要因として、ピロリ菌の持続感染、塩分の取りすぎ、喫煙が示されています。
 ピロリ菌と胃がんとの関係では、ピロリ菌の持続感染による慢性炎症が、胃がんの原因であると、数多くの研究からのエビデンスに基づいて、国際がん研究機構が1994年に判定しています。ピロリ菌の感染経路としては、まだよくわかっていませんが、衛生状態が悪い環境のもとで、水や食べ物から経口感染するとみられており、幼児期にピロリ菌に感染した人が持続感染状態となり、中高年になって胃がんが発生すると考えられています。
 また、日本人を対象とした国立がん研究センターの多目的コホート研究では、胃がん患者の99%がピロリ菌に感染していたことがわかり、ピロリ菌に感染していなければ、胃がんになる確率は極めて低いことが示されました。一方、胃がんになっていない人でも90%がピロリ菌に感染していて、感染していても胃がんになる人は、その中のごく一部だということも示されました。

胃がん予防には、禁煙、減塩、野菜・果実の摂取を

 まず、胃がんに限らず、多くのがんやがん以外のさまざまな病気の発生リスクを高めることが明らかとされているのは喫煙です。禁煙はがん予防、その他の病気予防の大原則です。
 世界の先進諸国と比べて、日本はピロリ菌感染率が高く、その理由として、日本の伝統的な食事である、みそ汁や漬物など高塩分の食生活が挙げられます。高塩分の食事は胃粘膜を荒らしたり、粘液の性状を変えたりなどにより、ピロリ菌が棲みやすく持続感染しやすい環境を作り出しているからだと考えられます。
 胃がん予防には、減塩を心がけることが大切です。特に塩蔵品(漬物、塩辛、塩漬けの魚卵、魚の干物など)を控えましょう。
 また、野菜と果実のがん予防効果は、日本人を対象とした国立がん研究センターの多目的コホート研究でも、ある程度認められています。野菜や果物に多く含まれる成分が発がん物質の代謝にかかわる酵素(解毒酵素)を活性化させたり、抗酸化作用により遺伝子に傷ができるのを防いだりしているのではないかと考えられています。目安量としては、野菜と果物を合わせて1日に400g以上(いも類やとうもろこしなど炭水化物の多いものは、ここでいう野菜の重さには含みません)を、目指しましょう。

ピロリ菌に感染している場合は、定期的な胃の検診を

 慢性胃炎や萎縮性胃炎と診断された人は、ピロリ菌の感染の疑いが大きくなります。ピロリ菌感染の有無を調べる「ヘリコバクターピロリ抗体検査」により、ピロリ菌に感染していることがわかった場合は、定期的な胃の検診を受け、胃がんの早期発見に努めることが大切です。
 抗生物質などを用いたピロリ菌除去(除菌)が、胃がん予防に有効であるかの明確なエビデンスは、まだ得られていません。除菌療法を希望する場合は、かかりつけの医師に相談し、症状や胃の詳しい検査をもとに判断するとよいでしょう。
 内視鏡を用いた粘膜切除術を受けた早期胃がん患者さんを対象とした日本の無作為比較試験では、除菌によって胃がんの再発リスクを3分の1に低下させることができると発表しました。このことから、早期胃がんの患者さんに対しては、除菌が保険適用されました。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。