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運動で大腸がん予防

運動で大腸がん予防

死亡率は減少傾向になったとはいえ、いまだに患者数の多い大腸がん。定期的ながん検診で早期発見が重要です。直系の家族に大腸がんにかかった人がいる場合は、発生リスクが高いので特に要注意。生活習慣では、肥満を防ぎ、アルコールや赤肉・加工肉の摂取を控えめにして、禁煙するとともに、「運動」することが“確実”な予防法です。

死亡者数・罹患者数ともに、がんの中で上位にある大腸がん

大腸は肛門に近い約20cmの部分を「直腸」、それ以外の部分を「結腸」と呼び、大腸がんは、がんの発生した部分により「直腸がん」と「結腸がん」に分けられます。わが国における大腸がんは、死亡者数・罹患者数ともに戦後から一貫して増加傾向にありましたが、高齢化という人口構成の影響を除くと、1990年代半ばをピークに最近では減少傾向にあります。

それでも、大腸がんの死亡者数・罹患者数はがんの中でも上位にあり、結腸がんと直腸がんを合わせた大腸がんの死亡数(*1)は、男性3位、女性1位。大腸がんの罹患者数(*2)は、男女ともに2位です。
(*1および*2は、国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」発表。*1は2009年データ、*2は2005年データ)。

「運動不足」は、大腸がんの“確実”な危険因子の1つ

国内外の研究結果などから、大腸がんの“確実”な危険因子(リスクファクター)として、以下のようなことが挙げられています。

【大腸がんの確実な危険因子】

  • 親やきょうだいなど直系の家族に大腸がんの人がいる
    確立した要因としては、家族性大腸腺腫症(*3)、遺伝性非ポリポーシス性大腸がん(*4)と呼ばれる大腸がん。
  • 肥満(特に男性の結腸がんリスクが高まる)
  • 喫煙の習慣
  • 大量飲酒の習慣
  • 牛、豚、羊などの赤肉、ベーコン、ハム、ソーセージ、サラミなどの加工肉の過剰摂取
  • 運動不足(特に男性の結腸がんリスクが高まる)

(*3)大腸全域に100個以上のポリープ(腺腫)が発生する遺伝性の疾患。放置すれば、がん化すると考えられている
(*4)消化管ポリープを伴わない家族性が大腸がん。

身体活動量の多いほうが、がん発生リスクを低下させる

以前このコーナーの「運動とがん」 で紹介したように、国立がん研究センターの研究班による多目的コホート研究の「運動とがん」に関する調査と分析の結果、がん全体では身体活動量の最小グ ループの罹患リスクを1とすると、身体活動量が最大グループでは男性で0.87、女性で0.84。男女ともに身体活動量が多いほど、がんの発生リスクが低いことが示されました。

がんの種類別でみると、身体活動量の多いプループのほうが、男性では結腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが低く、女性では胃がんのリスクが低くなっています。 特に男性の結腸がんでは、身体活動量の最小グループの罹患リスクを1とすると、最大グループでは0.58(女性は0.82)で、がん発生リスクを40%以上も低下させることが示されました。

野菜や果物の摂取より、運動のほうが“確実”な予防法

国際的な評価判定を示すWCRF(世界がん研究基金)とAICR(米国がん研究財団)が発表した生活習慣とがんの発生の評価報告書『食物・栄養・身体活動とがん予防』2007年改定版でも、「運動は結腸がんのリスクを、“確実に”下げると評価しています。

これまで、大腸がんの予防法として“確実”とされていた野菜や、“可能性あり”とされていた果物の摂取については、最近発表された複数の大規模コホート研 究や国際的な評価レポートでは、予防的な関連が認められなかったり、可能性を示唆するという結果に変更され、“確実”な予防法とは言い難い状況です。

日常生活の中で体を動かす工夫を

そんな中、確実な予防法と言える「運動」を実践することは、大腸がん(結腸がん)予防の有効な手段と言えるでしょう。特に、デスクワークなどで運動不足になりがちな人は、努めて体を動かすことが大切です。

ハードな運動を目指しても長続きしません。日常生活の中で積極的に体を動かす習慣をつけ、週1回程度の定期的なスポーツを行うことが目標です。具体 的な例としては、毎日、1日の合計で60分以上(8000~10000歩)歩き、週に1回は60分程度の早歩き、または水中運動、または軽い体操などの運 動を加えることをおすすめします。

大腸がんは早期発見・早期治療できれば、治癒率が高いことが知られています。二次予防として40歳を過ぎたら、便潜血検査を中心とした大腸がん検診を定期的に(年1回)受けることもお忘れなく。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。